16 / 18
キッカさん、ちょっと怖いです……
しおりを挟む
その週の休日、何とか高月博士とのアポイントを取り付けた俺達は、電車に揺られながら高月博士の研究所へと向かっていた。車窓の外は、前にアミィの電車に乗った時と同じように雲一つ無い快晴の元、海が太陽に照らされてキラキラ光っていた。
ボックス席には俺とアミィ、昌也とキッカさんが隣り合って座っている。車内は空調が効いているとはいえ、夏の陽射しで窓際は結構暑い。そんな中、アミィが正面のキッカさんに話しかけた。これをきっかけにキッカさんと仲良くなれるかな?
「えっと、はじめまして、キッカさん。私、アミィと申します」
「……」
キッカさんの反応は無い。ただ無表情で、窓の外を眺めながら佇んでいた。
「その……宜しくお願い致しますね」
「……」
やはりキッカさんの反応は無い。すると、アミィは小声で俺に話しかけてきた。
「何だか、ちょっと怖い方ですね……」
アミィの言葉に、キッカさんが反応した。キッカさんは窓の外に目を向けたままアミィに話しかける。
「聞こえてますよ、おちびちゃん」
「おち……!」
アミィがキッカさんからの言葉にショックを受けている。アミィはうなだれて、何やらブツブツとつぶやいていた。確かにおちびちゃんであることは間違いないんだけど、何だかキッカさんの言葉には棘があるな。
すると、昌也がアミィのほうに身を乗り出しながら口を開いた。その顔は、なんだか少し申し訳なさそうにしている。
「ゴメンな、アミィちゃん。キッカさんこんな性格だから、許してくれよな」
「はぁ……」
アミィはうなだれたまま、しょんぼりしている。しかし、どうフォローしたらいいもんだから解らないから困ったもんだ。しばらくしてアミィが立ち直り、また俺に小声で話しかける。
「でも、キッカさんって、おきれいな方ですよね」
確かに、キッカさんはとても整った容姿をしている。切れ目のルビー色の瞳は、誰もを釘付けにする魅力がある。サラサラとした黒髪は、まるで漆黒の暗幕のようだ。
これが昌也が理想とする女性像と言うことなんだろうか。言葉の端々に棘を感じるのは、恐らく昌也の好みなんだろうが。わざわざこんな辛辣な態度を好むとは、ドMの思考は俺には理解しがたい。
「確かに、綺麗だよな」
俺はボソッとアミィに答えた。キッカさんの反応は、相変わらず無い。しばらくすると、目的地到着のアナウンスが流れた。俺達は電車から降り、高月博士の研究所へと向かった。
………
俺達は高月博士の研究所の応接室に通され、昌也とキッカさんが挨拶を済ませ、そのままキッカさんは前にアミィが連れていかれたのと同じように応接室を出ていった。
俺達三人は並んでソファーに座って、出されたコーヒーを飲みながら二人が戻ってくるのを待った。やっぱり昌也は気が気じゃないみたいで、しきりに時計を気にしていた。
「お待たせ、キッカさんの検査、終わったよ」
しばらくすると、高月博士とキッカさんが応接室に戻ってきた。高月博士はあくまで冷静、態度からは結果はまだ解らない。
「結論から言おう」
俺達は、固唾を飲んで高月博士の言葉を待った。時間にしてみればほんの数秒でも、俺にはもっと長く感じられた。
「確かに、キッカさんはウイルスに感染している」
高月博士の言葉を聞き、昌也がうなだれた。ある程度は覚悟していたんだろうけど、実際に聞くとやっぱりショックだよな。
「そうか……やっぱりそうなのか……」
そんな昌也を見て、高月博士は穏やかな口調で続けた。
「まぁそんなにガッカリしないでくれたまえ。ウイルスに感染しているといっても現状は特に問題ないのだから」
「問題ないっていうのはどういう事ですか?」
俺は高月博士に尋ねる。すると、高月博士は俺達にも解るように、簡潔に説明してくれた。
「現在、キッカさんはウイルスに感染しているが、キッカさんには抗体があるんだよ。だからウイルスによる攻撃性が抑制されているということなのさ。最も、症状が出ていないだけだからウイルスを不活性化させる必要はあるのだがね。そこはもう済ませたから安心していいよ」
「え~っと、つまり……」
昌也が首を捻りながら混乱している。昌也はあまり頭がよくないから仕方ないか。
「今まで通り生活しても、全く問題無いという事だよ」
「そうですか……よかったぁ~!」
昌也はソファーにへたり込んだ。昌也の体がズブズブとソファーに沈んでいく。
「すみません、ちょっと気になったのですが」
俺は、続けて高月博士に尋ねた。
「抗体ってどういうことですか? キッカさんは何か特殊な状況ということなんですかね?」
高月博士は、少し難しそうな顔で俺の質問に答えた。
「それを説明するのには、ちょっと時間をもらうが問題無いかな?」
俺達はそれぞれ答えた。
「問題ありません、お願いします」
「俺も気になるな、頼むよ、高月博士」
「私も聞きたいです! お願いします!」
「ご主人がそうおっしゃるのであれば……」
高月博士は俺達の反応を確認し、改めて口を開いた。
ボックス席には俺とアミィ、昌也とキッカさんが隣り合って座っている。車内は空調が効いているとはいえ、夏の陽射しで窓際は結構暑い。そんな中、アミィが正面のキッカさんに話しかけた。これをきっかけにキッカさんと仲良くなれるかな?
「えっと、はじめまして、キッカさん。私、アミィと申します」
「……」
キッカさんの反応は無い。ただ無表情で、窓の外を眺めながら佇んでいた。
「その……宜しくお願い致しますね」
「……」
やはりキッカさんの反応は無い。すると、アミィは小声で俺に話しかけてきた。
「何だか、ちょっと怖い方ですね……」
アミィの言葉に、キッカさんが反応した。キッカさんは窓の外に目を向けたままアミィに話しかける。
「聞こえてますよ、おちびちゃん」
「おち……!」
アミィがキッカさんからの言葉にショックを受けている。アミィはうなだれて、何やらブツブツとつぶやいていた。確かにおちびちゃんであることは間違いないんだけど、何だかキッカさんの言葉には棘があるな。
すると、昌也がアミィのほうに身を乗り出しながら口を開いた。その顔は、なんだか少し申し訳なさそうにしている。
「ゴメンな、アミィちゃん。キッカさんこんな性格だから、許してくれよな」
「はぁ……」
アミィはうなだれたまま、しょんぼりしている。しかし、どうフォローしたらいいもんだから解らないから困ったもんだ。しばらくしてアミィが立ち直り、また俺に小声で話しかける。
「でも、キッカさんって、おきれいな方ですよね」
確かに、キッカさんはとても整った容姿をしている。切れ目のルビー色の瞳は、誰もを釘付けにする魅力がある。サラサラとした黒髪は、まるで漆黒の暗幕のようだ。
これが昌也が理想とする女性像と言うことなんだろうか。言葉の端々に棘を感じるのは、恐らく昌也の好みなんだろうが。わざわざこんな辛辣な態度を好むとは、ドMの思考は俺には理解しがたい。
「確かに、綺麗だよな」
俺はボソッとアミィに答えた。キッカさんの反応は、相変わらず無い。しばらくすると、目的地到着のアナウンスが流れた。俺達は電車から降り、高月博士の研究所へと向かった。
………
俺達は高月博士の研究所の応接室に通され、昌也とキッカさんが挨拶を済ませ、そのままキッカさんは前にアミィが連れていかれたのと同じように応接室を出ていった。
俺達三人は並んでソファーに座って、出されたコーヒーを飲みながら二人が戻ってくるのを待った。やっぱり昌也は気が気じゃないみたいで、しきりに時計を気にしていた。
「お待たせ、キッカさんの検査、終わったよ」
しばらくすると、高月博士とキッカさんが応接室に戻ってきた。高月博士はあくまで冷静、態度からは結果はまだ解らない。
「結論から言おう」
俺達は、固唾を飲んで高月博士の言葉を待った。時間にしてみればほんの数秒でも、俺にはもっと長く感じられた。
「確かに、キッカさんはウイルスに感染している」
高月博士の言葉を聞き、昌也がうなだれた。ある程度は覚悟していたんだろうけど、実際に聞くとやっぱりショックだよな。
「そうか……やっぱりそうなのか……」
そんな昌也を見て、高月博士は穏やかな口調で続けた。
「まぁそんなにガッカリしないでくれたまえ。ウイルスに感染しているといっても現状は特に問題ないのだから」
「問題ないっていうのはどういう事ですか?」
俺は高月博士に尋ねる。すると、高月博士は俺達にも解るように、簡潔に説明してくれた。
「現在、キッカさんはウイルスに感染しているが、キッカさんには抗体があるんだよ。だからウイルスによる攻撃性が抑制されているということなのさ。最も、症状が出ていないだけだからウイルスを不活性化させる必要はあるのだがね。そこはもう済ませたから安心していいよ」
「え~っと、つまり……」
昌也が首を捻りながら混乱している。昌也はあまり頭がよくないから仕方ないか。
「今まで通り生活しても、全く問題無いという事だよ」
「そうですか……よかったぁ~!」
昌也はソファーにへたり込んだ。昌也の体がズブズブとソファーに沈んでいく。
「すみません、ちょっと気になったのですが」
俺は、続けて高月博士に尋ねた。
「抗体ってどういうことですか? キッカさんは何か特殊な状況ということなんですかね?」
高月博士は、少し難しそうな顔で俺の質問に答えた。
「それを説明するのには、ちょっと時間をもらうが問題無いかな?」
俺達はそれぞれ答えた。
「問題ありません、お願いします」
「俺も気になるな、頼むよ、高月博士」
「私も聞きたいです! お願いします!」
「ご主人がそうおっしゃるのであれば……」
高月博士は俺達の反応を確認し、改めて口を開いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる