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新種ウイルス、怖いです……
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「おはようございます! ご主人様!」
「おはよう、アミィ」
最近は心配していたアミィの発作もなく、穏やかな日々を過ごしていた。こんな変わらない朝がいつまでも続いてくれたらいいんだけどな。
俺は朝のニュースを見るべくテレビを付けた。すると大見出しで聞きなれないニュースが流れていた。
『新種のウイルス流行の兆し!』
『国内で既に30件発生……』
『人間への攻撃性が確認され……』
『アンドロイド全般に幅広く感染の恐れあり……』
『ウイルス対策には時間を要す模様……』
「マジか……そういえば、どっかで聞いたような話だな」
「私、怖いです……」
それはそうだろうな。なんたって、当の本人だから仕方ない。このウイルスはアンドロイド社会の現代では致命的だ。
アンドロイド全般ってことはメイドアンドロイドも含まれるんだろうからな、俺も他人事じゃない、一応頭に入れておこう。
「早く対策して欲しいもんだな……」
「ご主人様、通勤の際は、気を付けてくださいね?」
「あぁ、大丈夫だよ、心配しないでいいよ、アミィ」
昨日の今日で大事が起こるとは思えないけど、用心に越したことはない。俺はアミィに必要以上に外へ出ないよう言い付け、会社へと向かった。
…………
会社は相変わらず代わり映えしないな。朝礼を終えた直後、昌也が話しかけてきた。
「おい恭平、ニュース見たか!? どこのチャンネルも同じことばかり言ってたから、耳に残っちまったよ」
「俺も見たけど、あれが前にお前が言ってた奴?」
「そうそう、人間にアンドロイドが襲いかかって来るかもってことだよな? マジでヤバくねぇか?」
「確かに、俺らの周りはアンドロイドだらけだからな。しかも対策には時間がかかるって言うし、これはシャレにならんかもだな」
「まさか、今時こんな事が起こるとはな~ まさしく! 人間の圧制に耐えかねたアンドロイド達の反乱って奴? あ~怖い怖い」
「冗談じゃねぇよ、映画の見すぎだ、馬鹿」
本当に冗談じゃない。また昔のようなことになるのはゴメンだ。俺は、思い出したくないことを思い出してしまい、この日はなかなか仕事に身が入らなかった。
…………
時刻は17時、夏場はこの時間でもまだまだ日が高いな。仕事も一段落ついたから、今日は定時上がりといこうかな。
「さて、一段落ついたし、そろそろ帰るかな」
「おう、お疲れ。恭平」
「お前はどうする? 昌也」
俺の問いかけに、昌也はディスプレイを見つめたまま答える。
「俺はこいつ潰してから帰るわ。『今日出来ることは今日のうちに』ってな!」
「そうか、じゃあ俺は先に帰るわ。お疲れ、昌也。これでも飲んで頑張れや」
「おっと! サンキュー!」
俺は昌也にまだ開けてない缶コーヒーを放り、家路へとついた。
…………
俺の会社がある『西高天崎』の駅前は、相も変わらず人で賑わっている。通勤風景だけは、アミィが来てからも変わらない。
「さて、さすがに毎日弁当も飽きてきたな」
たまには暖かい手料理が食べたいもんだ。問題はアミィが何を錬成するかだけど、まぁ食えないもんは出てこないだろう。
俺は思い立って、アミィに電話した。
「もしもし、アミィ?」
『お疲れさまです! ご主人様! 何のご用でしょうか?』
「急で悪いんだけど、今日は夕飯の準備をお願い出来るかな?」
『大丈夫ですよ! 材料もありますし、腕によりをかけてお夕飯作りますから、早く帰ってきてくださいね、ご主人様!』
「あぁ、すぐ帰るよ、それじゃあね、アミィ」
俺は電話を切り、顔を前へと向ける。
「さて、それじゃあ、さっさと帰るとするかね」
俺は駅前へと急ぎ足で向かった。形がどうあれ手料理ってやつは楽しみなもんだ。
そんなことを考えながら歩いていると、何やら駅前に人だかりができているのが見えてきた。駅に入るにはここを抜けなくてはいけない、俺は人混みを揉まれながら前へと進んだ。
「ウォォォォ!」
俺は人混みを掻き分けて前に出る。すると、駅前で一体の大型のアンドロイドが唸り声を上げながら暴れまわっているのが見えた。その周りを野次馬が遠巻きに囲む。こんな光景、そうそうあるものじゃないからな。
アンドロイドの手には巨大なハンマーが握られていた。どうやら、暴れているのは土建工事用のアンドロイドみたいだ。唸りをあげて振り回されるハンマーのスピードはとても速い。
「どうするんだこれ……」
そんなことを考えていると、何やら周囲がざわつき始める。どうやらこの状況に動きがあったようだ。
一人の女性……じゃない、メイドアンドロイドが暴れるアンドロイドへと向かってスタスタと歩いていく。その姿はどこか気品があり、周囲の注目を一身に受けていた。
黒い長髪にルビー色の瞳。身長は170センチ程、女性らしい均整のとれた体つきだ。服装はロングのゆったりとしたメイド服。手には今時珍しい、先端に藁をまとめた長い箒が握られていた。
駅前の人混みは、そのメイドアンドロイドを注視する。そのメイドアンドロイドは、暴れるアンドロイドの5メートル程手前で立ち止まり、艶のある声を放った。
「五月蝿いですね、静かになさい」
俺はこのメイドアンドロイドに見覚えがある。あぁ、そうだ、あれは確か、昌也のメイドだ。
「おはよう、アミィ」
最近は心配していたアミィの発作もなく、穏やかな日々を過ごしていた。こんな変わらない朝がいつまでも続いてくれたらいいんだけどな。
俺は朝のニュースを見るべくテレビを付けた。すると大見出しで聞きなれないニュースが流れていた。
『新種のウイルス流行の兆し!』
『国内で既に30件発生……』
『人間への攻撃性が確認され……』
『アンドロイド全般に幅広く感染の恐れあり……』
『ウイルス対策には時間を要す模様……』
「マジか……そういえば、どっかで聞いたような話だな」
「私、怖いです……」
それはそうだろうな。なんたって、当の本人だから仕方ない。このウイルスはアンドロイド社会の現代では致命的だ。
アンドロイド全般ってことはメイドアンドロイドも含まれるんだろうからな、俺も他人事じゃない、一応頭に入れておこう。
「早く対策して欲しいもんだな……」
「ご主人様、通勤の際は、気を付けてくださいね?」
「あぁ、大丈夫だよ、心配しないでいいよ、アミィ」
昨日の今日で大事が起こるとは思えないけど、用心に越したことはない。俺はアミィに必要以上に外へ出ないよう言い付け、会社へと向かった。
…………
会社は相変わらず代わり映えしないな。朝礼を終えた直後、昌也が話しかけてきた。
「おい恭平、ニュース見たか!? どこのチャンネルも同じことばかり言ってたから、耳に残っちまったよ」
「俺も見たけど、あれが前にお前が言ってた奴?」
「そうそう、人間にアンドロイドが襲いかかって来るかもってことだよな? マジでヤバくねぇか?」
「確かに、俺らの周りはアンドロイドだらけだからな。しかも対策には時間がかかるって言うし、これはシャレにならんかもだな」
「まさか、今時こんな事が起こるとはな~ まさしく! 人間の圧制に耐えかねたアンドロイド達の反乱って奴? あ~怖い怖い」
「冗談じゃねぇよ、映画の見すぎだ、馬鹿」
本当に冗談じゃない。また昔のようなことになるのはゴメンだ。俺は、思い出したくないことを思い出してしまい、この日はなかなか仕事に身が入らなかった。
…………
時刻は17時、夏場はこの時間でもまだまだ日が高いな。仕事も一段落ついたから、今日は定時上がりといこうかな。
「さて、一段落ついたし、そろそろ帰るかな」
「おう、お疲れ。恭平」
「お前はどうする? 昌也」
俺の問いかけに、昌也はディスプレイを見つめたまま答える。
「俺はこいつ潰してから帰るわ。『今日出来ることは今日のうちに』ってな!」
「そうか、じゃあ俺は先に帰るわ。お疲れ、昌也。これでも飲んで頑張れや」
「おっと! サンキュー!」
俺は昌也にまだ開けてない缶コーヒーを放り、家路へとついた。
…………
俺の会社がある『西高天崎』の駅前は、相も変わらず人で賑わっている。通勤風景だけは、アミィが来てからも変わらない。
「さて、さすがに毎日弁当も飽きてきたな」
たまには暖かい手料理が食べたいもんだ。問題はアミィが何を錬成するかだけど、まぁ食えないもんは出てこないだろう。
俺は思い立って、アミィに電話した。
「もしもし、アミィ?」
『お疲れさまです! ご主人様! 何のご用でしょうか?』
「急で悪いんだけど、今日は夕飯の準備をお願い出来るかな?」
『大丈夫ですよ! 材料もありますし、腕によりをかけてお夕飯作りますから、早く帰ってきてくださいね、ご主人様!』
「あぁ、すぐ帰るよ、それじゃあね、アミィ」
俺は電話を切り、顔を前へと向ける。
「さて、それじゃあ、さっさと帰るとするかね」
俺は駅前へと急ぎ足で向かった。形がどうあれ手料理ってやつは楽しみなもんだ。
そんなことを考えながら歩いていると、何やら駅前に人だかりができているのが見えてきた。駅に入るにはここを抜けなくてはいけない、俺は人混みを揉まれながら前へと進んだ。
「ウォォォォ!」
俺は人混みを掻き分けて前に出る。すると、駅前で一体の大型のアンドロイドが唸り声を上げながら暴れまわっているのが見えた。その周りを野次馬が遠巻きに囲む。こんな光景、そうそうあるものじゃないからな。
アンドロイドの手には巨大なハンマーが握られていた。どうやら、暴れているのは土建工事用のアンドロイドみたいだ。唸りをあげて振り回されるハンマーのスピードはとても速い。
「どうするんだこれ……」
そんなことを考えていると、何やら周囲がざわつき始める。どうやらこの状況に動きがあったようだ。
一人の女性……じゃない、メイドアンドロイドが暴れるアンドロイドへと向かってスタスタと歩いていく。その姿はどこか気品があり、周囲の注目を一身に受けていた。
黒い長髪にルビー色の瞳。身長は170センチ程、女性らしい均整のとれた体つきだ。服装はロングのゆったりとしたメイド服。手には今時珍しい、先端に藁をまとめた長い箒が握られていた。
駅前の人混みは、そのメイドアンドロイドを注視する。そのメイドアンドロイドは、暴れるアンドロイドの5メートル程手前で立ち止まり、艶のある声を放った。
「五月蝿いですね、静かになさい」
俺はこのメイドアンドロイドに見覚えがある。あぁ、そうだ、あれは確か、昌也のメイドだ。
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