57 / 57
第二章 調停者。
一方その頃─⑤ 魔女子さんとしろうさぎさん。
しおりを挟む
一方その頃。
この世界で最弱と呼ばれる森では今日もいつもと変わらぬ日常が流れています。今日は朝一番からしろうさぎさんの元を訪れていた魔女子さん。彼女はしろうさぎさんに連れられ森のある場所へと向かっているところでした。
「ふん、ふん、ふ~ん」
鼻歌交じりに腕を大きく振って歩く魔女子さん。そんな彼女の楽しそうな姿を見てしろうさぎさんの顔にも自然と笑顔が溢れます。
「楽しそうですね、魔女子さん」
「うん!! 今日はお散歩で~、探検だっから~」
「ピクシーさんも一緒じゃなくて良かったんですか?」
「うん!! ピクシーちゃんには~、私が教えてあげるから~、今日はおっ留守番~」
「ふふ。そうですね。そうすれば魔女子さんも、もう一度楽しめますもんね」
「うん!! たっのしめる~!!」
そんな魔女子さんの粋な計らいでお留守番を頼まれていたピクシーさんは一匹秋晴れの空を見上げています。
「──っくしゅん。って、あーー、絶対これ魔女子だわぁ……」
そうぼやくピクシーさんの元に木枯らしが吹くと、舞い散るいろは紅葉。目の前を包み込むその光景にピクシーさんはその目を細めます。
「……舞い散る紅い葉、か……アンタ、散り際に一番輝やいて見えるなんてね。なんとも言えない感覚だわ。でも、そうね。うん、嫌いじゃないわ。だから、また来年会いましょう。その時はあいつらと一緒に見てあげるからさ。それまで私がアンタを覚えててあげるから──」
その呟きに応えるようにもう一度木枯らしは通り過ぎると舞い上がるいろは紅葉。ピクシーさんはその行方を目で追いかけるとそのまま空を見つめて言いました。
「……あいつらも、そろそろあそこに到着した頃かしらね」
──そして、丁度その頃。
しろうさぎさんと魔女子さんは目的地へと到着すると、目の前に広がる神秘的な光景に少女はその目を輝かせていました。
「うわぁ……」
そこに広がる二つの彩。
魔女子さんを挟むように右側に四季桜が白い花びらを咲かせ。
左側ではいろは紅葉が紅くその色を染め上げ揺れています。
言葉に出来ない言葉。
それが彼女にとっての最高の賛辞の言葉です。
魔女子さんはただ立ち尽くすとその感動を全身で表現します。
「どうですか? 魔女子さん」
「……す、すごい……綺麗……な、なに、これ……主の、魔法?」
「魔法? そうですねぇ……ええ、はい。魔法です」
「ええ!? やっぱり!!」
「はい。でもそれは私じゃなくて、この森の……いえ、この世界のかけてくれた季節の循環、奇跡の魔法です」
「季節の循環、奇跡の魔法……そうなんだぁ……この世界も、魔法使いさん、だったんだぁ……」
「はい、そうですね。きっとこの世界は素敵な魔法使いさんだと私も思います」
すると先程ピクシーさんの元に吹いた風と同じような木枯らしがその場を吹き抜けます。
「う、うわっ……」
そして、そこに舞い乱れる二つの彩。
「うわぁ……」
目の前で舞い踊る白い桜の花びらと紅いいろは紅葉。
魔女子さんを包み込むようにしながら舞った二つの彩は。
彼女の前で混ざり合うと、その先で一つに溶け合ってみせたのでした。
紅白の混じり合った世界の景色に一人と一匹は静かに言葉を寄せます。
「主、二つは一つになれるんだね」
「そうですね。二つを運ぶ風がそれをそうさせてくれたのかもしれませんね」
「風かぁ……うん。それも素敵な魔法だね」
「はい」
調停者アナスタシアとくろうさぎさんのクロエがこの世界の『小さな種』に気づいた頃。
この森では世界のかけた季節の循環による奇跡の魔法に目を輝かせる魔女子さんの姿があって。
その隣にはそんな魔女子さんを優しく見つめるしろうさぎさんの姿があったのでした──
この世界で最弱と呼ばれる森では今日もいつもと変わらぬ日常が流れています。今日は朝一番からしろうさぎさんの元を訪れていた魔女子さん。彼女はしろうさぎさんに連れられ森のある場所へと向かっているところでした。
「ふん、ふん、ふ~ん」
鼻歌交じりに腕を大きく振って歩く魔女子さん。そんな彼女の楽しそうな姿を見てしろうさぎさんの顔にも自然と笑顔が溢れます。
「楽しそうですね、魔女子さん」
「うん!! 今日はお散歩で~、探検だっから~」
「ピクシーさんも一緒じゃなくて良かったんですか?」
「うん!! ピクシーちゃんには~、私が教えてあげるから~、今日はおっ留守番~」
「ふふ。そうですね。そうすれば魔女子さんも、もう一度楽しめますもんね」
「うん!! たっのしめる~!!」
そんな魔女子さんの粋な計らいでお留守番を頼まれていたピクシーさんは一匹秋晴れの空を見上げています。
「──っくしゅん。って、あーー、絶対これ魔女子だわぁ……」
そうぼやくピクシーさんの元に木枯らしが吹くと、舞い散るいろは紅葉。目の前を包み込むその光景にピクシーさんはその目を細めます。
「……舞い散る紅い葉、か……アンタ、散り際に一番輝やいて見えるなんてね。なんとも言えない感覚だわ。でも、そうね。うん、嫌いじゃないわ。だから、また来年会いましょう。その時はあいつらと一緒に見てあげるからさ。それまで私がアンタを覚えててあげるから──」
その呟きに応えるようにもう一度木枯らしは通り過ぎると舞い上がるいろは紅葉。ピクシーさんはその行方を目で追いかけるとそのまま空を見つめて言いました。
「……あいつらも、そろそろあそこに到着した頃かしらね」
──そして、丁度その頃。
しろうさぎさんと魔女子さんは目的地へと到着すると、目の前に広がる神秘的な光景に少女はその目を輝かせていました。
「うわぁ……」
そこに広がる二つの彩。
魔女子さんを挟むように右側に四季桜が白い花びらを咲かせ。
左側ではいろは紅葉が紅くその色を染め上げ揺れています。
言葉に出来ない言葉。
それが彼女にとっての最高の賛辞の言葉です。
魔女子さんはただ立ち尽くすとその感動を全身で表現します。
「どうですか? 魔女子さん」
「……す、すごい……綺麗……な、なに、これ……主の、魔法?」
「魔法? そうですねぇ……ええ、はい。魔法です」
「ええ!? やっぱり!!」
「はい。でもそれは私じゃなくて、この森の……いえ、この世界のかけてくれた季節の循環、奇跡の魔法です」
「季節の循環、奇跡の魔法……そうなんだぁ……この世界も、魔法使いさん、だったんだぁ……」
「はい、そうですね。きっとこの世界は素敵な魔法使いさんだと私も思います」
すると先程ピクシーさんの元に吹いた風と同じような木枯らしがその場を吹き抜けます。
「う、うわっ……」
そして、そこに舞い乱れる二つの彩。
「うわぁ……」
目の前で舞い踊る白い桜の花びらと紅いいろは紅葉。
魔女子さんを包み込むようにしながら舞った二つの彩は。
彼女の前で混ざり合うと、その先で一つに溶け合ってみせたのでした。
紅白の混じり合った世界の景色に一人と一匹は静かに言葉を寄せます。
「主、二つは一つになれるんだね」
「そうですね。二つを運ぶ風がそれをそうさせてくれたのかもしれませんね」
「風かぁ……うん。それも素敵な魔法だね」
「はい」
調停者アナスタシアとくろうさぎさんのクロエがこの世界の『小さな種』に気づいた頃。
この森では世界のかけた季節の循環による奇跡の魔法に目を輝かせる魔女子さんの姿があって。
その隣にはそんな魔女子さんを優しく見つめるしろうさぎさんの姿があったのでした──
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)
翡翠由
ファンタジー
ある公爵令嬢は処刑台にかけられていた。
悪役令嬢と、周囲から呼ばれていた彼女の死を悲しむものは誰もいなく、ついには愛していた殿下にも裏切られる。
そして目が覚めると、なぜか前世の私(赤ん坊)に戻ってしまっていた……。
「また、処刑台送りは嫌だ!」
自由な生活を手に入れたい私は、処刑されかけても逃げ延びれるように三歳から自主トレを始めるのだが……。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
優しいお話ですね。
3話まで読んで面白かったので、
お気に入りに入れさせてもらいました。
少しずつ読ませてもらいます。
ありがとうございます!
はい!!
お時間のある時にでも読んでいただけたら嬉しいです。
この世界観好きです。モンスター側からの視点は斬新ですね!
ありがとうございます♪
そう言っていただけて嬉しいです。
頑張りますね!
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございますー♪
とてもとても嬉しいです。
頑張って書いて行きたいと思います!