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旅の道中

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「……お姉ちゃん、行っちゃうの?」




ルルーゼちゃんはマグライナ君に下ろしてもらったのかぎゅっと小さな手で私の服を握っている。
うるうると潤んでる大きな瞳が可愛い。




「あの、よかったらお礼にお茶でも飲んで行きませんか?」




そんな妹を見かけてかマグライナ君が問い掛けてきた。

うーん、ルルーゼちゃんも可愛いけど……急いでる身だからね。
そんなに慌てて行く必要ないのかもしれないし、でも何があるかわからないから早めに行きたい気もするし。




「アヤミが決めろ」




チラッとクロスを見るが、クロス的にはどっちでもいいみたい。
アルフもどちらでもいいのか辺りを警戒するようにキョロキョロしてるだけだ。




「お姉ちゃん……」



マグライナ君の提案に笑顔だったルルーゼちゃんだけど私が答えないのでどんどんと表情を曇らせていく。
……結局私は素直で可愛らしい子供には負けるんだ。





「じゃあ、少しだけお邪魔させてもらいますね」


「はい、妹の為にありがとうございます。 村はこちらです」




マグライナ君も少しぶっきらぼうなとこもあるけどルルーゼちゃん想いの良い子みたいだし。
ちょっとだけなら問題はないよね。





マグライナ君に案内された村は十数軒ぐらいの家と畑があるくらいで他はちょっと広い広場があるくらいだ。
門番をしていた村人の人に挨拶をしてからちゃんと柵で囲われた村に入る。

入口から少し歩いた所にある家の中に入って行く。
ここがマグライナ君とルルーゼちゃんの家なのかな。




「母さん、ただいま。 ルルーゼを助けてくれた知り合いが居たから連れてきたぜ」


「初めまして、お邪魔させてもらってます」


「初めまして!」


「初めまして」



ルルーゼちゃん曰くお母さんは病気だって言ってたからね。
あんまり長いことお邪魔にならないようにしなきゃ。



「あらあら、初めまして。 ルルーゼがご迷惑をお掛けしたみたいでごめんなさいね」




布団の中で休んでいたお母さんは体を起こした。
少し頬が痩けており、顔色も悪いみたい。




「いえ、気にせずゆっくり休んで下さい。 お体の具合は大丈夫ですか?」


「ありがとう、優しい子ね」




ケホケホと少し咳き込んだりしているのだからゆっくり休んでほしい。
他人の私達がいるとあまり休めないかもしれないから長いこと居ないように気をつけよう。





「あ、これお店で出してるお菓子です。 よろしければ食べて下さい」




最近、ケーキだけじゃなくて持ち帰り用のクッキーやマフィンも作ってるので待ってきた包みをマグライナ君に渡す。





「急にお誘いしたのに気を遣わせて申し訳ありません」


「甘いお菓子なのでルルーゼちゃんが喜んでくれるといいですね」


「ルルーゼ、お礼言っとけよ」




小さい子ならお菓子は好きだろうし、……甘いのが嫌いな子もいるかもしれないけど。




「お姉ちゃん、ありがとう!」





ルルーゼちゃんはマグライナ君が持ってるお菓子を見て目をキラキラさせていたが、ハッとしたように私にお礼を言う。
ああ、やっぱり小さい子は可愛いから好きだわ。




 
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