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私はヒロインじゃない

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――ここはどこだろう?





目を開けてみれば見知らぬ天井。

確か私はアルフが誘拐されたから助けに行ったはず……。









「あれ? 何でまたここに居るの?」





不意に聞こえてきた声に振り返ればそこに居たのはあの時の神様。

……って、何で神様が居るわけ?









「んー、ちゃんとあっちに送ったのに」





悩んでる神様を見ていれば私はやっとこの部屋の事を思い出した。

私があの世界に行く事を告げられた時の部屋だ。



そこでハッとすれば私はそっと部屋にあるドアの方を見る。







「……あの女、またレイア様を独り占めしてっ!」



「憎たらしい……」







そこには般若みたいな顔をした美人なお姉様方が私を睨んでいた。

……神様もイケメンだもんね。



私は般若なお姉様方から視線をそらしまだ悩んでる神様に視線を向ける。







「ねぇ、向こうで何かあった?」







まだ不思議そうな表情の神様の問いに先ほどの事を思い出す。







アルフが誘拐された事



クロスと一緒に誘拐された子達を助けた事



誘拐犯とクロスが戦ってた事



アルフが人質に取られた事





そして……。











「そっか、私……人を殺したんだ」









私が銃で人を殺した事。



向こうに行く前に戦わないって決めたはずなのに。

私はこの手で人を殺してしまった。



ぼんやりと自身の両手を見ていればそんな私とは対称的な明るい声が聞こえてきた。







「もしかしたら、心が死んじゃったかもしれないね。 この部屋は生と死の狭間の部屋だから死んだ人しか来れないし」



「でも、私は……」



「ここには命を落とした人だけじゃなくて心が死んだ人も来るんだよ。 でも、君の心はまだ生きてるみたいだけどね」







私はもう生きる気力なんてないのにまだ生きてるの?

……例え世界が違って法律がないからって私が人を殺した事に変わりはない。

あの世界で人を殺す事が当たり前だったとしても。









「死にたいの?」





死……。







「生きる気力がないって事は死にたいのと同じでしょ? 君は死にたいの?」



「……私は人を殺したんですよ」



「だから?」







だから、って……。

人を殺した私に生きてる価値なんてないじゃない。

人殺しはいけない事。







「それは君の価値観だよ。 あの世界は君が過ごしてきた世界とは全く別の世界。 魔獣も居れば人攫いもたくさん居る。 盗賊だって、人を殺す奴だって」







わかってた。

……わかってたのに私はわかってなかった。

偽善で人を助けて、死なんて私には無縁だと思ってたのかもしれない。





 
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