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誘拐事件発生
①
しおりを挟む会議も終わり、夜になってアルフを送ってくれたクロスに聞いたらパナンって麻薬らしい。
麻薬を料理に使ってるなんて噂が流れたらお客さん来なくなるじゃん。
もっと言ってやればよかった。
「アヤ姉、どうしたの?」
「何でもないよ」
余程変な顔をしていたのかアルフが心配そうに見上げてくる。
せっかくのアルフとのお風呂タイムなのにつまらない事考えちゃ駄目だね。
「今日は何したの?」
「クロスお兄ちゃんとサンダードラゴンを倒して来たよ! ケガしそうになったけどお兄ちゃんが守ってくれたのっ」
うん、聞いてもわかんないね。
サンダードラゴンって名前だから何となく想像は出来るけど、何ランクの魔物かわからないし。
危なくてもアルフが嬉しそうだから止めないけど(最強主人公のクロスも一緒だし)
「よかったね」
「うんっ、アヤ姉は一緒に行かないの?」
「私はお店があるからね」
お店がなかったとしても私はそんな危ない事はしない。
私には殺す事なんて出来ないんだから。
魔物すら殺せないのに人を殺せるわけないしね。
だから、私は戦闘ギルドには登録しない。
「そっかぁ……」
残念そうなアルフには悪いけどこれだけは無理。
元々クロスに出会わなかったらアルフだって戦闘ギルドに登録させる気はなかったのに。
アルフを守る為に戦おうか考えたけどやっぱり殺すんだって思ったら手が震えてしまう。
平和な日本で生まれ育ったんだから当たり前かもしれないけど……。
「そろそろ上がろっか?」
「うんっ」
湯船に浸かりながら考え事したらのぼせてしまうから駄目だね。
アルフと一緒に上がれば脱衣場でアルフの身体を拭いてやる。
髪もしっかり乾かさなきゃ風邪引いてしまうしね。
「うにー……」
拭いてもらうのが気持ちいいのかアルフも気持ちよさそうだし。
甘やかしちゃ駄目だろうけど仕方ない。
風の魔法でアルフの髪と私の髪をドライヤーのように乾かせばお揃いのパジャマを着て部屋に向かう。
魔法もちょいちょい出来るようになってきたから日常で使う分には大丈夫。
「おやすみ、アルフ」
一緒のベッドに入りちゅっと優しく額にキスをすればアルフは嬉しそうに抱き付いて来た。
甘えてくるアルフ可愛い。
ぽんぽんと優しく背中を撫でてやれば腕の中に居るアルフから小さな寝息が聞こえてくる。
1人で寝るのが怖いらしくいつもこうして寝てる。
何だか本当の親子みたいで嬉しいな。
私もいつも通り早く起きなきゃいけないからもう寝ないと。
アルフをぎゅっと抱き締めたまま私も眠りについた。
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