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第六章 【二つの世界】
6-464 To Zero
しおりを挟む気付けば、暗い闇の中にいた。
いつからこの空間にいるのかすら、既にわからない程時間が過ぎている気がする。
だが、盾の創造者にはそんなことはどうでも良かった。
寝ているか寝ていないかわからない状態の中では、時間という単位はこの空間の中では何の役にも立っていない。
(……ん)
この暗闇の中に、自分で感じ取ることができる意識がもてるようになった。
それと同時に、頭の中に再び時間という規則がよみがえってくる。
(わたし……確か……)
頭の中に入ってきた情報は、誰かと争っていた記憶が湧き出てくる。
しかし、その争いの結果と、誰と争っていたのかなどの情報はさっぱりと消えており、思い出す気配もない。それ以上そのことを追求することを止め、再び今の状況に意識を変え始める。
(う……ん、ここは……どこ……なんだか懐かしい……気も)
水の中に泡が浮かぶように、頭の中には再び何かが浮かび上がる。
それは、自分が”何かをしようとしていた”もしくは、”何かをしなければならない”という強い思いだったはず。
(でも……こんな状況だと……無理ね)
思い出そうとしても、思考に力が入らずに簡単に思い出すことを放棄した。
(……あぁ、なんだか……また眠くなって……きた……)
そうして、意識は再び深く暗い闇の中へ沈んでいこうとする。
(……)
(…………)
(……誰?)
(”私”だ……覚えているか?)
”私”といわれても、一体誰のことなのか全く理解できない。
しかし、そう言われても今の状態ではどのように返すべきかの材料も思考力もない。
引き続き黙っていると、向こうからその続きを語り始めた。
(……随分と経ったからな。そう……だな、直前の世界では”剣の創造者”と最後には呼ばれていたはず。そして、あなたは”盾の創造者”と……そう呼ばれていた)
(盾の……創造者?)
聞き慣れたような言葉だったが、いまひとつ過去の記憶と繋がらない。
姿は見えないが、この状況を感じたのか今この場にいる相手は、さらに言葉を続けて思い出せるための補助しようとする。
(そうだ……今までに何度かこのようなことも経験をしている。そういえば、前回の時は、そちらの方から声をかけてもらっていたな……随分と前のことだが)
(前回……)
盾の創造者の意識の中に、徐々に思考をする力が芽生え始めた。先程までの状態では、一人だったためか、考えるよりも眠ってしまった方が楽だと感じていた。今では、話をする相手がいるせいか、眠りへの欲求よりも思考する方へと興味が湧き始めた。
それに、この相手はどうやら自分のことを知っているようだ。
(そう。私たちは、いつも一緒にいた。例え何か問題が起きて、仲違いしたとしても……だ)
この者が語る言葉は心地よく、信頼できる感じがする。まだ、思い出すことができないが、この者が話している今までも一緒にいたという説明も、何の理由もないが納得できてしまう。
剣の創造者と名乗る存在は、私が目覚めるまで待っていたのだろう。
そして、目が覚めた時のために用意していた言葉を告げる。
(また昔のように……二人で共に新しい世界を創ろう)
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