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第六章 【二つの世界】
6-418 飲み込んだ誇り
しおりを挟む「は……ハルナ?」
「あ、エレーナ!大丈夫!?他の人たちは……っていうか、なんで三人だけなの?……イタっ!」
ハルナは後頭部に軽い衝撃を受け、痛みを逃がすために衝撃を受けた場所を擦る。
そして唇を尖らせながら、ハルナはサヤを恨めしい目つきで見る。
「もう、いきなり何するのよ……痛いじゃないのよ!?」
「再会の挨拶とかは後回しだろうが!アンタは、今の状況見えてんのか!?」
「だ……だって……」
サヤの視線は、相手を良く見ろと告げている。だが、別の存在だと認識はしているが、自分の形をした者の半分が吹き飛んだ姿は見ていられなかった。
『サヤ様、ハルナ様……』
二人のやり取りに、お申し訳なさそうにラファエルが割って入る。
そこには、半分になった盾の創造者の身体が徐々に戻りつつあった。
「な……なに?あれ!?」
「ステイビルさん!今すぐここから離れてください!ここは危険ですから!!」
「し、しかし……ハルナは?」
ステイビルからの言葉に、ハルナでは言い辛いだろうと判断したサヤは、その答えをハルナから奪った。
「アタシたちは大丈夫だよ、逆にアンタたちがここにいても”何の役にも立たない”し。反対に人質に取られたりしたら、やりにくいだろ?」
ステイビルは国に関わることのため、国王である自分自身がその先頭に立ち何もできなくても見届ける必要があると思っていた。
しかし、ここまでの状況を思い返してみても、実際にステイビル自身が必要だった場面はそう多くはない。むしろ、何の役にも立っていなかった。そのことが、これまでもステイビルの国王としてのプライドを酷く傷付けていた。
とはいえ、いま自分がその”小さなプライド”をかざしてもこの場面では何の意味もなく、サヤの言う通りただただ邪魔になってしまうだけというのは理解できていたため、その言葉に従うことにした。
「そうだ……な。いくぞ」
「はい」
少し気の抜けた様な声で告げられたエレーナとアルベルトは、ステイビルの心中を察しながらステイビルの背中を追って歩きだす。
「……ハルナ」
「はい?」
数歩歩いたところで、ステイビルは振り返ってハルナの名を呼ぶ。
ハルナも三人を見送っていたため、その動きが目に入ってきた。
ステイビルは、迷うことなく一言だけ告げた。
「必ず戻ってくるのだぞ」
「え……と、できる限りがんばります!」
気の抜けた返事がハルナらしいと、エレーナは優しくハルナを見守った。
「あーステイビル。最後にちょっといい?」
「……なんでしょう?」
「だいぶ壊すことになるかもしれないんだけど……いいよね?」
「もちろんです」
ステイビルは、サヤの質問に似た確認にも問題ないことを告げた。
サヤは、その言葉にウンウンと頷いた。
「それではお二人の無事を、大精霊にお祈りしております」
「ふっ……”お祈り”っていっても、一人はここにいるけどね?まぁ、任せときなって」
「エレーナも、アルベルトさんもまた後で!」
エレーナはハルナの言葉に、背中から手を挙げて振って応えた。
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