上 下
1,176 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-403 最後の通告

しおりを挟む







「やっぱり、アンタか……」

『そのことに気付くなんて、さすが……ですわね?』

「ってことは、やっぱりアンタが仕掛けてたんだな」

『そうですよ、楽しんで頂けたかしら?あなた達……ハルナとラファエルは、どうやら私の存在を感知できていたようだけど、私もあなた達の存在を探すことができるようになったのよ』

「その方法を使ってアタシたちの行動を監視して、この罠を仕掛けたってこと……か」

『そうなのよ、さすがサヤね。理解が早くて助かるわ。それにね、今回私があなた達を探す能力の他に、新しい能力も使ってみたのよ?……というよりも、あなた達はずっとここで過ごすことになるの……そう、永遠にね』



「――えぇっ!?」



ハルナの驚きの声が、盾の創造者にとっては心地よい驚きだったようだった。
その反応に機嫌を良くし、驚きから絶望へと落とすべくさらに話を続けていった。


『あなたやモイスが使っていた”能力”は、ある物質に対して新たな”世界”を創り、そこに指定した存在を移動させていたのよね?』

「……」



サヤは、盾の創造者にその能力をばらされたとしても何の問題もない。要はどこに何を隠したのかが問題であって、それがバレなければどうということもない。さらにいえば、壊されにくいものを使えばある程度はその世界は保証される……盾の創造者のような、超越した存在は別だが。

盾の創造者はサヤの無言に対して、それが正解であると判断しさらに自分が用意していた言葉を繋いでいった。


『でも私はね、その能力を更に進化させて物質を介さなくても、その中に新しい世界を創り出す方法をみつけたの……それがこの世界よ。本当は物質の中にいれることができれば、それ自体を壊せばあなた達は永遠に消え去ることができたのだけれど……ね』


ファエルはゾッとする、便利に思えたあの空間の機能にそういうリスクがあることに対して。そして相手の言葉の途中から、今回は自分たちが消去される可能性が低いと判断し、気持ちを落ち着かせこの場でいかなることが起きても対応できるように整えていく。


『本当に残念なのだけれど、物質を介さない場合はその世界をまだ閉じることができるところまで至っていないの。だけど、いずれかはこの空間をも消す方法を見つけてみせるわ?あなた達はそれまでの間、ここに閉じこもっていてもらうわね?もちろん、許しを請うことなんてしないとは思うけど、ここまで馬鹿にされて邪魔をされたのだから、私もあなた達を許すことはないわよ?』



だがそう告げた後、盾の創造者の思考の中に別な考えが浮かび、それを利用することにした。


『あ。そうね……もし許すのだとすれば、この空間を私より消す方法を教えてくれるのなら、その者だけは許してあげてもいいわね。ハルナやラファエルでは難しいけど……サヤ。あなたならできるのではなくって?』



盾の創造者は、そう告げてサヤに対して自分の仲間になれるように、逃げ道を用意してあげた。
不思議な力を持つサヤは、自分の役に立つであろうとそう考えていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

【完結】悪役令嬢に転生したのに、あれ? 話が違うよ?

ノデミチ
ファンタジー
広井アリス、18歳。 日曜日、剣道部部活の帰り、居眠り運転のトラックに轢かれて死亡。気が付いたら公爵令嬢。 って、これ、やってたRPGの世界の悪役令嬢?ヒロインを虐めるはずなのに、あれ? ヒロインどこですか? イベント、話が違うよ? ゲームの世界より複雑な世界? 裏設定ってこうだったのか? せっかくだから人生やり直し。ひたむきに頑張る公爵令嬢の物語。 アルファポリスonly

滅亡世界の魔装設計士 ~五体不満足で転生した設計士は、魔装を設計し最強へと成り上がる~

高美濃 四間
ファンタジー
凶霧と呼ばれる瘴気が蔓延し、人類滅亡に瀕した異世界。 現代で設計士をしていた『柊吾』は、目覚めると少年に生まれ変わっていた。 それも両腕両足を魔物に喰われた状態で。 彼は絶望の中でひたすら魔術や鍛冶を学び、前世の知識をもってある設計図を完成させる。 十年かけて素材を集め、それを完成させたシュウゴは圧倒的な力を発揮し、凶暴な魔物たちへ挑んでいく。 やがて、新たな仲間を増やしながら最強のハンターとして成り上がっていき、誰もが認める英雄へと至る。 討伐と設計を繰り返し成長する、ハイスピードハンティングアクション! ※小説家になろう様、エブリスタ様、ノベルアップ+様、カクヨム様、たいあっぷ様にも連載しております。

【柴犬?】の無双から始まる、冒険者科女子高生の日常はかなりおかしいらしい。

加藤伊織
ファンタジー
累計150万PV突破。へっぽこ+もふもふ+腹黒学園ファンタジー。 毎日7時更新。サンバ仮面、ダメステアイドル、【柴犬?】いいえ、一番おかしいのは主人公! これは、ダンジョンが当たり前にある世界の中で、冒険者科在籍なのにダンジョン一辺倒ではない女子高生の、かなーりおかしい日常を描いています。 県立高校冒険者科の女子高生・柳川柚香(やながわ ゆずか)は友人と訪れたダンジョンで首輪を付けていない柴犬に出会う。 誰かが連れてきたペットの首輪が抜けてしまったのだろうと思った柚香は、ダンジョン配信をしながら柴犬を保護しようとするが、「おいで」と声を掛けて舐められた瞬間にジョブ【テイマー】と従魔【個体α】を得たというアナウンスが流れた。 柴犬はめちゃくちゃ可愛い! でもこれ本当に柴犬なの? でも柴犬にしか見えないし! そして種族を見たらなんと【柴犬?】って! なんでそこにハテナが付いてるの!? ヤマトと名付けた【柴犬?】は超絶力持ちで柚香を引きずるし、魔物の魔石も食べちゃうなかなかの【?】っぷり。 見ている分には楽しいけれど、やってる本人は大変なダンジョン配信は盛り上がりを見せ、なんと一晩で50万再生というとんでもない事態を引き起こす。 アイドルを助けたり謎のサンバ仮面が現れたり、柚香の周囲はトラブルだらけ。(原因として本人含む) しかも柚香は、そもそも冒険者になりたくて冒険者科に入ったのではなかったのです! そこからもう周囲に突っ込まれていたり! 過激な多方面オタクで若俳沼のママ、驚きの過去を持ってたパパ、そしてダメステータスすぎてブートキャンプさせられる口の悪いリアル癒やし系アイドル(♂)に個性の強すぎるクラスメイトや先輩たち。 ひよっこテイマーの日常は、時々ダン配、日々特訓。友達の配信にも駆り出されるし、何故かアイドル活動までやっちゃったり!? 悩みがあれば雑談配信で相談もします。だって、「三人寄れば文殊の知恵」だからね! 夏休みには合宿もあるし、体育祭も文化祭も大騒ぎ。青春は、爆発だー! 我が道を行くつよつよ【柴犬?】、本当はアイドルしたくない俳優志望のアイドルたちと共に、「50万再生の豪運シンデレラガール・ゆ~か」は今日も全力で突っ走ります! この作品は、他サイトでも連載しております。 ※イメージ画像にAI生成画像を使用しております。

人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚

咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。 帝国歴515年。サナリア歴3年。 新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。 アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。 だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。 当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。 命令の中身。 それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。 出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。 それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。 フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。 彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。 そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。 しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。 西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。 アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。 偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。 他サイトにも書いています。 こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。 小説だけを読める形にしています。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……

百谷シカ
恋愛
カメロン侯爵家で開かれた舞踏会。 楽しい夜が明けて、うららかな朝、幼馴染モイラの部屋を訪ねたら…… 「えっ!?」 「え?」 「あ」 モイラのベッドに、私の婚約者レニー・ストックウィンが寝ていた。 ふたりとも裸で、衣服が散乱している酷い状態。 「どういう事なの!?」 楽しかった舞踏会も台無し。 しかも、モイラの部屋で泣き喚く私を、モイラとレニーが宥める始末。 「触らないで! 気持ち悪い!!」 その瞬間、私は幼馴染と婚約者を失ったのだと気づいた。 愛していたはずのふたりは、裏切り者だ。 私は部屋を飛び出した。 そして、少し頭を冷やそうと散歩に出て、美しい橋でたそがれていた時。 「待て待て待てぇッ!!」 人生を悲観し絶望のあまり人生の幕を引こうとしている……と勘違いされたらしい。 髪を振り乱し突進してくるのは、恋多き貴公子と噂の麗しいアスター伯爵だった。 「早まるな! オリヴィア・レンフィールド!!」 「!?」 私は、とりあえず猛ダッシュで逃げた。 だって、失恋したばかりの私には、刺激が強すぎる人だったから…… ♡内気な傷心令嬢とフェロモン伯爵の優しいラブストーリー♡

処理中です...