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第六章 【二つの世界】
6-379 アーテリアの屋敷
しおりを挟む町の中央の通りを走ると、馬車は突き当たった壁を右に曲がった。
するとそこには、ラヴィーネの町の紋章が入った大きな門が見えてきた。
馬車が速度を落とし近付いていくと、門はゆっくりと音もなく開き、サヤたちを乗せた馬車を迎え入れる。
敷地内へ入ると、丸く囲まれた草花の奥に大きなエントランスが見える。同じ敷地内での少し離れた場所に、本館ほどではないがある程度の大きさの建物も見えた。
敷地内を半周した馬車は、エントランスで停車する。
待っていたメイドが、馬車の昇降用の足場を設置すると、メイヤが中から鍵を開けた。
「サヤ様、お待ちしておりました。 ようこそラヴィーネへ」
そう声をかけたのは、メイヤに少し似ている姉のマイヤだった。
「あぁ、ありがとう……少しの間、お邪魔するよ」
「それではサヤ様、後ろのお二方も。どうぞこちらへ。この町の責任者であられるアーテリア・フリーマス様がお待ちです」
サヤたちはは屋敷の中を案内をするメイヤの案内に従って、屋敷の中を進んでいく。
エントランスから広間に出て突き当たった扉を開けると、左側に進んだ奥の部屋がアーテリアの職務を行う部屋だった。
――コン、コン
メイヤはゆっくりと二回、扉をノックする。程よく落ち着いたタイミングで中から入室の許可を出す声が聞こえてきた。
――カチャ
マイヤが両開きの扉を開け、左側の扉の前に立ちサヤに入室を促す。
そして全員が部屋の中に入った後、一番最後に入ってきたメイヤとマイヤが扉を閉めた。
この部屋の主が席から立ち上がり、机の前に出てサヤたちの近くへと歩んでいく。
「……ようこそ、ラヴィーネへお越しくださいました。サヤ様、わたくしがこの町を管理させていただいておりますアーテリア・フリーマスでございます」
アーテリアの挨拶が終ると、サヤの邪魔にならないように両側に二人が前に出る。
そして、同じタイミングでアーテリアにお辞儀をして、自分たちの主の紹介を始めた。
「失礼いたします、アーテリア様。このお方は、サヤ様と申します……どうぞお見知りおきくださいませ」
「よくできた、お二方ですね……どうぞ、こちらへ」
その姿を見たアーテリアは二人の対応に満足し、サヤを部屋の端にあるソファーへと案内した。
サヤは二人掛けのソファーに一人で腰を下ろし、その後ろにヴァスティーユとヴェスティーユが付いた。
ここからメイヤは、マイヤと共にアーテリア側に立ちお互いが向き合う形となった。
サヤは後ろに向けて手を出すと、ヴァスティーユがステイビルから出された許可証の巻物をサヤの掌の上に載せた。
サヤは、そのまま手をアーテリアの方へ差し出すと、アーテリアはその紙を受け取り開封してその中を確認した。
「急な話で申し訳なかったね、でも受け入れてくれて助かったよ」
「ステイビル王から連絡をいただいた際には何事かと思いましたが、こういう話であれば嬉しいですわ」
アーテリアは、サヤたちが付く前にエレーナからの手紙でサヤたちが来ることが判っていた。
その内容には、サヤ付きのメイドである”ヴァスティーユおよびヴェスティーユを精霊との契約に無条件で参加させること”とあった。
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