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第六章 【二つの世界】
6-369 サヤとハルナと21
しおりを挟む「……あぁ。いいよ」
サヤは少しだけ返事が遅れてしまったような気もするが、そこは向こうも同じ心理状況だろうと考え改めて盾の創造者と向き合う。
それ以上に弱みを見せてしまうことや、悟られてしまうこと自体のほうが危険だと判断した。
サヤは下腹部に力を込めて、このまま状況を進めることにした。
「それじゃあ、どうする?アタシの掛け声でタイミング測る?」
『えぇ……お願いしてもいいかしら?この素晴らしい歴史的な瞬間の掛け声を……ね』
先ほどからサヤの頭の中には、剣の創造者の警告の言葉が鳴り止まないでいた。
その内容は、”盾の創造者の言葉に乗ってはいけない!”という内容の言葉がほとんどで、それ以外はそれに対する理由を説明していた。
しかし、サヤはその言葉を聞き流し、目の前の存在との駆け引きに集中していた。
「……ちょっとその前に、いいか?」
『……何かしら?』
サヤが流れを止めたことに対し、盾の創造者はやや不機嫌にサヤの言葉に応えた。
はっきりとこの先の展開が決まらない中、サヤはある疑問が浮かんできた。
既に流れ出した状況に”待った”をかけていまうのは、怖気づいたのではないかと受け取られかねない。
だが、ここは明確にしておかなければ、騙されてしまう可能性もあった。さらには、この事を確認することで、相手に釘を刺すことにもつながる。
その恥と利益を天秤にかけ、有利な確率が高いと判断しサヤは声をかけたのだった。
「アタシも含めてだけど、どうやって”解除”したかを証明する?」
『……』
その質問に対して、盾の創造者はまだ不機嫌を引きずっていたが、サヤに対して明確な返答ができないことに気付く。
ここで余計なことを言ってしまえば何か不利なことになってしまうと、そのまま黙ってサヤの様子を伺う。盾の創造者は、これまでのサヤとのやり取りの中で、身体を支配しているハルナとも違った思考を持つサヤに警戒をしていた。そのため、盾の創造者は、ここではこれ以上不利な状況にならないために相手に主導権を握らせる選択をした。
「……そう?もしいい案がないなら、こういうのはどうだ?それぞれが持っているモノをこの身から外して、地面に置くっていうのはどう?」
その案を聞き、盾の創造者は感付かれない範囲の時間で、サヤの申し出を精査する。
そして、その案を飲み込んでもこちらには問題が無いと判断した。
『……いいわよ?問題ないわ』
「そう……それじゃあ、いいか?」
最終確認とも取れるサヤの問い掛けに、盾の創造者も無言で頷いて承諾の意を示す。
そうしてお互いの準備が整ったことを確認した後、サヤはゆっくりと数字の五から秒読みを始めた。
「……四……三……二……一……」
”ゼロ”を告げると、サヤと盾の創造者の二人に一秒にも満たないが沈黙の時が流れていく。
そうして、サヤと盾の創造者は肩に下げていたお互いの剣と盾を外し手に取った。
二人は同じような動作、同じタイミングで、お互いが手にしていたモノをゆっくりと地面へと置いた。
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