1,084 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-311 ハルナがいなくなった日4
しおりを挟むいまサヤが告げたことの内容が、この場にいる者たちはすぐには理解できていなかった。
エレーナはハルナを送り出す前に、隠し部屋の中で盾の創造者がハルナの手に持たせた小鳥の話を思い出す。
あの事実を考えると、盾の創造者がこの世界の生き物を自由自在にできるということは、疑うことのできない事実だった。しかし、その盾の創造者が一体どのような理由でハルナのことをさらっていったのかも理解ができていない。
それに、神である存在が人の身体を乗っ取ることができてしまうことが、この場にいる者たち全員が理解できない現象だった。
「……ま、まさか。そんなこと」
「わかるよ、エレーナ。アンタの言いたいこともさ……だけど、本当のことなんだよね。いろんな意味で信じられないだろうけどさ」
サヤの情報が嘘である可能性もある。だが、ハルナがいなくなったタイミングで、こんな大袈裟な嘘を言うことになんの意味があるだろうかともエレーナは考える。
こちらを混乱させる意味も考えたが、サヤの態度は真剣なものではなく、ひょうひょうとした態度をとり続けていることがそう思わせている。
そこから更に”ハルナがいなくなったのはサヤのせいだ”という疑いもあるが、もしもあのハルナがなんらかの方法で消されてしまったのであれば、ここにいるメンバーではどうあがいてもサヤを相手に勝ち残れるはずもない。
(……くっ、どうすれば!?)
エレーナは、杖を握る手に力が入り、その内側にはありえない程の汗が滲む。
エレーナは一か八か、目の前のサヤに奇襲を仕掛けようと考える。
もしも失敗すれば、この部屋にいる者たちの命はないだろうが、少しでも傷つけることができれば、自分を追ってアルベルトも攻撃に加わってくれるだろうと信じている。
(みんな……ごめん!)
エレーナはサヤに気付かれないように、静かに身体の中にある元素をある一点に集めて高濃度へと変えていく。
本当ならば、この周囲にある元素も取り込みたいところだが、サヤにも不思議な力があり元素の流れを読まれてしまっては奇襲の意味がなくなってしまう。
そのため、エレーナは自分自身の体内に持つ元素だけを使って行うことを決めた。
背中に流れ落ちる汗を感じながら、エレーナは濃縮する作業とこの気配が感じ取られていないことを探る。
幸いにして、目の前のサヤは先ほどと同じ表情のままで、後ろにいるステイビルやアルベルトも特に自分の異変を感じてはいない様子だった。
エレーナはタイミングを計り、サヤの呼吸と同調する。
準備はできており、これ以上時間は掛けられない。サヤの数回目の呼吸のタイミングで合わせ、次の呼気を待った。
(――やれる!!)
エレーナは尖った槍の氷の塊をイメージし、それを具現化しようとしたその時……
『……この者たちも、随分と落ち着いている様子だな』
「「――っ!?」」
その言葉遣いと雰囲気は、目の前にいた今までの女性とは全く異なる口調で言葉を発した。
『――我は、剣の創造者と呼ばれている。この世界を創りだした存在だ。今はこのサヤという者の身体を借りてお前たちに話しかけている』
0
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる