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第六章 【二つの世界】
6-237 グラキアラムへ再び
しおりを挟む「その言葉が聞きたかったのですよ。ステイビル様」
エレーナもマーホンの意見を聞いて、”やっぱり”といった顔をする。
ハルナは、少し何か思うところがあるのか、もしくはまるでステイビルの気持ちに気付いていないか。
結果は、ステイビルの精一杯の言葉にも、何の反応も示していない様子だった。
「「はぁ……」」
エレーナとマーホンは二人同時にため息をつく。
そして顔を見合わせて、”仕方がない……”といった表情でこの場は諦めることにした。
「……わかりました。それではハルナ様以外の件について、早速行動しましょう」
「なに?マーホンもいくのか?」
「いえ。私はここに残り、私のできることをやってみようと思います」
そうしてマーホンは、これまでのステイビルの案を聞いたうえで、”自分ができること”の内容をステイビルに伝えた。
「うむ……それはいい手かもしれん。ぜひ、手配をよろしく頼む」
「畏まりました……」
そうして、この日から二日後……ステイビルたちは、再びグラキアラムを目指して出発した。
王都へ戻る時よりも、ハルナとソフィーネの二人が増えたが、馬車の中の座席には余裕がある。
様々な問題に対して話し合えたこと、それにハルナが傍にいてくれることでこの馬車の中の雰囲気が王都へ戻る時のものとは違い、明るい方へと変わっていた。
そして、二日後――グラキアラムの入口より少し離れ場所での陣を張っているのが見えてきた。
ステイビルたちの馬車を見た警備兵が、駆け寄って無事を確認する。
そのまま馬を引っ張り、陣地の中を誘導する。
中心の広場のような場所の手前で止め、馬車の扉を開けた。
「おかえりなさいませ、ステイビル様」
「アルベルトか、変わったことはなかったか?」
「はい、特には……」
アルベルトはステイビルの背後にいる影を見て、少し驚いた表情をみせる。
「ハルナ……さま?」
「お久しぶりです、アルベルトさん!」
アルベルトは何かを言おうとしたが、ハルナに続いて出てくるエレーナに止められた。
「はいはい、挨拶は後でゆっくりとね。早く降りてくれない?腰が痛いのよ……」
その言葉を受けて、アルベルトは腰をさすりながら降りてくるエレーナに手を伸ばし、捕まるようにと差し出す。
エレーナもそれに応じ、安心して体重の一部を預けて馬車をゆっくりと降りていった。
ハルナは、そんな二人の行動を見て嬉しく思った。
自分の知る二人は、まだまだお互いが距離を開けて遠慮していたのだが、今は普通の家族のように自然に寄り添うことができる仲にまで進展していた。
ふと、別な世界での二人のことを思い出す。
エレーナとアルベルトは、結婚して子供までいた二人のことを知っているため、”こちら”の二人ももうそろそろ近いのではないかとハルナは思った。
ハルナたちは、この陣の本部ともいえる土の精霊使いが創りだした建物の中に集まった。
王都で決めたことをアルベルトにも共有し、これからの出来事に備えて準備を開始することにした。
そして……
再びグラキアラムから使者として、イナとデイムがやってきた。
「ステイビル様……そろそろ、いまの状況をお伺いできませんでしょうか?」
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