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第六章 【二つの世界】
6-177 見覚えのある者23
しおりを挟むミカベリーは、受付をした際に二人の名を聞いていただけだったが、あの時の印象がよほど強かったのか、助けてくれた二人の名ははっきりと覚えていた。
「あ、アンタはあの時のヤツか?」
「はい!そうです!!あの時助けていただいた受付です!!」
ミカベリーはサヤが自分のことを覚えてもらっていたことが嬉しくなり、思わず感情が抑えきれずに目に涙が溜まっていった。
その背後には、自分たち……エレーナとアルベルトのピンチに竜に乗ってやってきた救世主が”あの”時の二人であったことが、ミカベリーの中で英雄のような存在まで持ち上げられていた。
「あの時はルーシーさんに紹介して頂き、ありがとうございました!」
次はハルナが、ミカベリーに話しかける。だが、話しかけられたミカベリーの表情は一転し、不安のような不機嫌な顔つきに変わった。
(え!?な、なんで?……私何かマズいこと言った!?)
ハルナはそのミカベリーの反応に焦ってしまう。
その気配を感じ取ったサヤが、ハルナのフォローをした。
それと同時に、サヤが気になっていることも併せて含めた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「あ、はい?何でしょうか?」
サヤに声を掛けられ、ミカベリーは一瞬にして表情を取り繕う……自分の眉間に皺を寄せていたことに気付いたようだった。
城内の顔である受付業務をやっていただけあって、その辺りの表情の切り替えは見事なものだった。
「で、アンタは何でここに居んの?」
「……え!?そ……それは」
アルベルトに惹かれていることに関しては口にせず、赤子を奪う命令に背き、それに逆らったことにより攻撃されたところをアルベルトが助けてくれたことに恩を感じてエレーナたちの味方になったと告げた。
「ふーん……そうなんだ」
「え?な……なにか、気になるところでもございましたか?私の話は何の嘘偽りなく……っ!?」
ミカベリーは自分の話し方が、早くなっていることに気付く。
これでは、何かを隠しているようにも聞こえてしまい、自分の中で閉じ込めている気付かれてはいけない感情を悟られないようにした。
「申し訳ございません……すこし、取り乱してたみたいで」
「いや……いいんだよ。それより、あんたのおかげであの時は助かったんだ。ルーシーともつながったしね」
「そ、そのことなのですが……」
「ん?」
「ルーシー様のこと……何かご存じないでしょうか?」
「え?ルーシー……あ、そうか」
サヤはルーシーが王国の兵に追い詰められ、塔の窓から飛び降りたこと際に助け出した経緯を説明する。
その話を聞き、ミカベリーは目に涙を浮かべて泣き始めた。
「よ……良かった……ルーシー様が……ご無事で」
ミカベリーは先ほどの隊長から、ルーシーが裏切ったという内容の話を聞かされ、いまひとつ信頼ができなかった。
先ほどまでの対応を見ても、自分たちが所属している存在にどのような正義があるのかと疑問に感じていた。
だが信頼のおけるこの二人、さらにはエレーナとアルベルトの……現国王より信頼するするステイビルが付いている時点で、ミカベリーはこちら側に来たことが正解だったとホッと安心した気持ちになった。
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