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第六章 【二つの世界】

6-147 剣と盾2

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「――えい!」

ハルナの気軽に向けた炎は、決してサヤをこの世界から滅しようとしているものではないとわかる。
だが、その火力は何も知らないドワーフやエルフから見れば、一つの生物という存在を炭も残らないように消してしまうような炎をハルナは友人に浴びせさせていた。
そのことを酷いと思ったのか、何も思わなかったのかは何とも言えなかった。
それでもこの場にいる亜人たちでひとつわかったことは、ハルナもサヤの影でその存在感は薄かったが、相当の力を持っているのだということを。
その炎はジリジリと音を立ててはいるが、これだけの炎を前に周囲には熱を感じさせていない。
どのような方法かわからないが、ハルナはサヤ以外に



そして、驚異の量の炎はサヤの周囲を包み込んでいく。
炎の量の多さから、外から中の様子は確認はできないが、誰もが黒焦げとなっているサヤを想像していた。


「――ちょっと!!もういいよ!!!」


「――あ、ごめんっ!?」



その声と同時に、ハルナの人差し指の先から出ていた炎は一瞬にしてこの場から消えた。
そして、その中で焼かれていたサヤには、何の問題も起きてはいなかった。



「……ということなんだよね」



その言葉に対しステイビルを初め、何も返すことができないでいる。
驚いた様子にサヤは、自信満々から少しだけ今まで黙っていたことに対するお詫びから謙虚さを差し引いてお詫びの言葉を並べていく。


「うん……今まで黙ってて悪かっただけどさ、今見た通り、アタシたちもそういう力があって……さ?それで……」


そこからサヤは、色々と自慢のような説明を重ねていく。
それが一通り終わった後、誰も状況について質問しないことをおかしく思いステイビルに問いかけた。


「で……どうだった?今のを見てさ?」


「あ……あのぉ」


ステイビルはおどおどした様子で、サヤの問いに応えようとする。




「何だい?いつものステイビルらしくないじゃない?……なんだ?言ってみてよ」


ステイビルはナルメルと向かい合い、お互い頷き合った。
そして一つ唾を飲み込んで、サヤに向かった。



「あの……大変申し訳ございませんが、”何が起きたのかわからなかった”もの……で」


「え?なに?アタシがあれだけ……やったのに……見てなかったってこと……アンタたち一体何をして……」


サヤの声は次第に震えていき、それと同時に怒りの感情が乗せられていくのが判る。
それに怯えたナルメルが、急いでステイビルの後を継いで途切れ途切れのサヤの言葉に割り込んだ。


「お、お待ちください!?私たちは、見ておりました!サヤ様が……その、ハルナ様の炎に包まれていくその様子を!!」



ナルメルの最適なタイミングで声を挟んだことにより、サヤの感情を高めていくつぶやきを止めることができた。



「じゃあ……さ。アタシが体張ってみせたのにさぁ……いったい何がわかんなかったの?……ほら、言ってごらんよ、あ!?」


ナルメルが与えてくれたこの流れに感謝し、ステイビルがその流れを引き継いだ。


「は……ハルナ様の炎が大きすぎて……その、中の様子が見えなかったのです!!」



「え?」


「あ。」



ハルナは、サヤの怒りの方向が自分の方向へ向いていくことを感じ、ゆっくりと後ろに下がりラファエルの背後に回っていった。



「……ハルナぁ」



「わ……私が悪いんじゃないと思……!?」


サヤはハルナの言葉を最後まで聞かずに、ハルナに手を伸ばした。
それを振り切るようにハルナは、村の中へと走っていき二人の追いかけっこが始まった。












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