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第六章 【二つの世界】
6-140 侵略7
しおりを挟む『ステイビルが言ったことは、この私、”風の大精霊ラファエル”の名において保証いたします』
「――!?」
いま、男の目の前で出来事が信じられないことばかり起こっている。
そのことを整理するために、必死に心を落ち着かせようとしていた。きっといま、自分の背後に部下の者がいなければ、その驚きに声を出してしまいそうなほどだった。
最終的には、この世界では伝説の存在である大精霊を間近で目にしていることだった。
気付けば後ろの部下たちも、目の前の状況に何とか声を出さずにいることで、敵に対して自分たちの威厳を保つために必死な抵抗を見せていた。
男は迷っている……大精霊という存在が、ステイビルのことを保証をするという。
その言葉を否定することは、この世界を否定することにも等しい。
それだけこの世界の人々にとって大精霊とは絶対的な存在であり、国王よりも高い場所に君臨する存在だった。
それがいま、目の前に現れて自分に対して保証をするという。
既に男が持つ権限以上の判断を委ねられ、どうしようもできないと思ったその時……
「……よい、下がれ」
後ろから、聞き慣れた声がした。
「ははっ!!」
男はその存在の確認するまでもなく、地面に片膝を付いて反対側の拳を地面に付けて頭を下げた。
「キャスメル……」
「馴れ馴れしいぞ……我は東の王国の王であるぞ。本来ならば平伏すのが王に対する礼儀ではないのか?」
キャスメルの言葉を聞いてもステイビルを初め、他の亜人たちはキャスメルの言葉に従う素振りは見せない。
「なんとも野蛮で礼儀知らずな者たちだな、ステイビル。まぁ、お前についている者たちとしてはそれくらいの方がちょうどよいのかもしれんがな……にしても、まさかラファエル様までも。これは一体どういうことなのですかな?」
『……』
「なるほど……どのような理由かはわかりませんが、ステイビルに脅され仕方なく従っている……ということなのですかな?」
『……』
二度の問い掛けに応じないラファエルの反応を見て、キャスメルはその対象が自分よりも上位の存在とは思わないようなため息をつき、諦めたように肩をすくめた。
「ふぅ……そうですか?せっかく他の神々たちが行っている我が国の防衛に対する妨害については目を瞑るつもりでいたのですが……どうやら本気で”我々”を裏切るおつもりなのですね?」
「きさm……!?」
イナについていたデイムは、我慢の限界であると、自分たちの新しい主とこの世界の秩序の一人であるラファエルを侮辱したキャスメルに対し反応を見せようとした。
その行動は、自分の直属の上司であるイナが制した。
「あなたの言葉には、嘘は観られません……ですが、これはあなた方よりも長く生きてきた勘から、あなたの言動は信頼することができません」
「ほう……では、どうする?」
イナがキャスメルからの質問に対して返答をしようとした……だが、今度はそれをステイビルが止める。
ステイビルは今までに見せたことのない、責任者としての態度ではなく誤った行動をとろうとする友人を叱るような口調でキャスメルに返した。
「どうもしないさ……キャスメル。だが、お前が俺たちの村を壊滅させるつもりならば、抵抗する……徹底的にな!」
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