910 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-137 侵略4
しおりを挟む八つの方向から舞い上がる煙の中を、二つの竜は蓋に分かれ次々と森に広がろうとする炎を収めていく。
それはまるで”どちらが早く消せるか”を競争し合っているかのようだった。
共に上から大量の水をかけて回っている、と同時に別な力によって炎の力が奪われるように抑えられていった。
二つの影のひとつは、水の大竜神モイスと火の大精霊ミカエル。
もう一つの影は、火の大竜神シュナイドと水の大精霊ガブリエルだった。
それぞれの現場では、その炎が消えないようにと邪魔をする竜に向かって攻撃を仕掛けている。
だが、その攻撃は王都にモイスが出向いた時と同じく、王国の兵の攻撃は大きな存在にとってはまるで意味がなかった。
その様子を見て、作戦が失敗に終わりそうで激怒するものとホッとするものが兵士の中にはいた。
隊長の男は、表情には表さなかったがどちらかと言えば後者の方だった。
かといって、この作戦の指揮を任せられた隊長の役割として、このまま安心するわけには行かない。
「……炎を絶やすな!それと同時にあの竜を何としてでも撃ち落とすのだ!!全軍出撃!!」
『わはははは!!どうだ!!ガブリエル!!ワシの方が炎消す速度は速かろう!?』
『ちょっと、ちゃんと前をみて集中してくんないかな?アンタの背中に乗るのは初めてなんだし、座り心地も悪いんだよね?……ほら、モイスたちの方がボクたちよりも進んでるよ!』
『――むっ!?モイスの奴め!!こうしてはおれん!行くぞ、しっかりとつかまってワシの活躍を見るがいい!!』
『ちょっ!?アンタ、サヤ様の話聞いてた……火と水の力で二人でって……ぎゃあああああ!!』
背に乗せたガブリエルのことなど気にする様子もなく、シュナイドは高く舞い上がりそこから翼を畳み身身体の面積を小さくしてきりもみ回転をしながら急降下する。
「……ったくあのトカゲは何やってんだ!!」
「ガブリエルさん、かわいそう……あ、でもちょっとあれ乗ってみたいかも」
『申し訳ございません……サヤ様、ハルナ様』
「いや、アンタが謝る必要はないよ……ラファエル。それよりも、ちゃんと火は消えそうだから、これでアンタたちもいいだろう?」
「ありがとうございます……サヤ様」
ナルメルは、心からの感謝の気持ちをサヤに捧げた。
サヤは、爆発させて周囲からこの村を焼き尽くす作戦であると踏んでいた。
エルフたちはそのことに対し、今すぐにその危険を取り除くために行動するべきだと声を上げた。
だが、ステイビルがその行動を制してしまった。そこには、この村だけではなくエルフやドワーフたちの討伐のきっかけを作りかねないという考えからだった。
しかし、エルフたちからは黙って森が燃やされてしまうことには我慢ができないとの声が多かった。
そこでサヤは、ラファエルに頼んで全ての神々をこの場所に集めてもらうようにお願いをした。
それは火が付いた場合にすぐにでも、鎮火させることを神々にさせると言い聞かせたことによって、エルフたちの騒動は収まった。
0
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
もふもふ精霊騎士団のトリマーになりました
深凪雪花
ファンタジー
トリマーとして働く貧乏伯爵令嬢レジーナは、ある日仕事をクビになる。意気消沈して帰宅すると、しかし精霊騎士である兄のクリフから精霊騎士団の専属トリマーにならないかという誘いの手紙が届いていて、引き受けることに。
レジーナが配属されたのは、八つある隊のうちの八虹隊という五人が所属する隊。しかし、八虹隊というのは実はまだ精霊と契約を結べずにいる、いわゆる落ちこぼれ精霊騎士が集められた隊で……?
個性豊かな仲間に囲まれながら送る日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる