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第六章 【二つの世界】

6-104 逃走

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緊急事態でほとんどの警備兵や騎士団兵が城外に出ているため、城内にいる者たちはほとんど非戦闘員の者たちばかりだった。
そのためハルナたちは、容易に逃げることが可能だった。
急いでいる姿も、他の者たちに紛れているため怪しまれることなく移動ができた。
城内に勤務するメイドたちと同じ制服姿によって、ハルナたちの存在を怪しまれることなく行動できることに一役買っていた。


ハルナは、ルーシーの協力に感謝した。
その裏で、自分たちに手を貸したことによりその後のことがどうなっているのかが気になっていた。
だが、今はそれどころではなく、無事に城の外へ出てその身の安全な場所に移動させることが重要だった。

今回あの空間から逃げ出せたのは、ラファエルから受け取った円錐上の鍵によるものだった。
ハルナはその仕組みが良くわからなかったが、サヤがそれ空間の中に突き刺したことにより、空間は解除されハルナたちは王の部屋の中に戻っていた。

キャスメル……もしくはそれに似た存在は、ハルナたちがあの空間を抜け出したことに気付いているだろうとサヤは言った。更には”あの力で再び捕らえられたら次は逃げ出すこともできない可能性がある”とのことで、できる限りキャスメルとは交戦したくはないと言っていた。
だからこそこの場を切り抜けて、無事にモイスたちの元へ行くことが最優先と判断した。




「これだけ騒ぎになってるってことは……もしかして」


「あぁ……きっと、あのドワーフたちに何かが起きたんだろうね」


サヤは、イナが身につけているイヤリングの石の中に隠れてもらっていた。
モイスの役割は、城内からの脱出手段とイナとデイムを守ることをサヤから命令されていた。
何事もなければ盾の存在の確認、もしくは入手後にイナたちを回収してグラキース山へ戻る手筈だった。
だが、もしもその計画の途中でイナたちの身に危険が生じた場合は、サヤとハルナよりもイナたちの身を優先して守るように伝えてあったため、今回ハルナたちがイナたちを助けに行く前に騒動が起きているということは、イナたちの身に何かが起きたということだろうと判断した。





城内で戦闘要員以外の人員が逃げ惑う逃走経路は、その中を良く知るハルナが案内をする。
その途中、ハルナは他の者たちとは違う方向へ移動し始めた。
他の者たちはエントランスや地上に近い場所へと退避してたが、ハルナたちはその者たちとは反対の上を目指していった。


「よい……しょっと」


ハルナは鍵のかかった屋上へと続く岩扉を、精霊の力によって元素へと還した。
屋上に出ると、音を遮る物がないため外での怒号がより一層大きく聞こえてきた。



「あ、モイスだ。おーい!ここだよ!!ここにいるよ!!」




サヤは、空中で――地上からの攻撃をものともせず――ある一定の高度で待機をしているモイスの姿を見付け、両手を振って自分たちの位置を知らせた。




――キン!



ハルナたちの背後から、何か固いものが弾かれるような高い音が鳴り響いた。






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