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第六章 【二つの世界】

6-99 変化

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「ねぇ、私たち……ここから出られるの?」


「……」



それは、ハルナが真っ先に思い浮かべた疑問だった。
この能力を使えないハルナだが、今まではその能力を使っていた者がすべてモイスやサヤだったため、あまり気にしていなかった。

だが、今回は完全にハルナと”敵対”している存在と考える。
そうなった場合に、ハルナたちをこの世界から消し去るもしくは関与させないためには、この空間から出さなければよいのではとハルナは思い至った。


その問いに対してサヤは、無言を貫いている。きっと、その答えは自分たちにとって都合の悪いことだと気付いた。
対峙する存在は、ハルナの疑問を笑いながら自分の優位性を誇示しながら余裕の態度を見せている。



『お前たちがここから出ることができるかどうかは、我の意思にかかっている……さて、何か言いたいことはあるか?』



その問い掛けに対し、ハルナもサヤも何も言葉が思い浮かばない。
相手が何を望み、何を目的としているかがわからない。
そんな状況の中で、交渉ができるのかどうかもわからない……だが、すぐに自分たちの身をどうにかするつもりも無いように取れる。
次の投げかける言葉の一手が、今後の状況を左右することとわかっている二人は、気軽にその問いに応じることができないでいた。



『どうした……先ほどまでの威勢はどうしたのだ?』


「……っ!?」



隣のサヤから、声にならない感情の声が聞こえる。
それほど、自分より頭の回転が速いサヤでさえこの場を切り抜けるための手に困っていた。


ここで、状況に変化が生じる。



『?……ふむ、お前たちはここで少し待っておれ』



その言葉を残し対峙していた存在はこの空間から姿を消した、きっとこの空間から出ていったのだろう。
消える直前、キャスメルの姿をした者に何かが起きたことは推測できる。
この場に何の策も施さなかったことは、ハルナたちが何もできないという絶対的な自信か、もしくはそれほど急を要する出来事が空間の外で起きているのだと考えた。







「……ちっ!?あいつはなんなんだ、一体!!」





荒れて大声をあげるサヤの感情を、慰めることは出来ない。
この場の誰もが、サヤの感情が荒れている原因となっていることに対し、その解決策も検討する案も持ち合わせてはいない。
その問題を解決できない不安からくる感情は、二人と精霊の気持ちを乱していった。


どのくらいの時間が流れたのか……ハルナもサヤも、押し寄せてきた不安の波を乗り越え、徐々に落ち着きを取り戻し始めた。しかし、根本的な問題は何も変わることはない。
ただ、そこに探していた一枚の盾が壁に掛けられているだけだった。


「……?」


ハルナは、ふと気になった。

この空間に入ってきた時、自分が取ろうとした行動を思い出す。
あの時、盾に触れようとした瞬間にキャスメルがこの場に現れた。
そして、ハルナのその行動を制止させるような言葉を発していた。

だが、いまキャスメルは何かあったのかこの空間から出ていっている。
この盾を残したまま……










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