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第六章 【二つの世界】
6-98 空間
しおりを挟むフランムは、今まで見たことのない状況に何も言葉が出ない。
突然現れたキャスメルの姿をした”何か”と、サヤが話している内容については何を言っているのかさっぱりわからなかった。
きっと王国……いや、この世界についての重要なことを話している気がしており、言葉を挟むことよりもここで語られていることを聞き逃さないようにと集中した。
「なに?何がどうなってんの?一体何の話をしてるのよ!?」
そのフランムの気持ちなど関係なく、ハルナは自分が二人の考えに追いつかないこの状況を素直に質問した。
フランムは、そのハルナの行動と判断を愚かだとは思わない。
それはこの世界の中で、この二人と同じく相当の実力を持つ者か、自分以上の愚か者だけがこの会話に割り込める者だとフランムは判断した。
『ハルナとそこの精霊に今の状況を説明してやったらどうだ……サヤよ』
「……ちっ!?」
対立する相手から、説明を促されたサヤはそのこと面白く感じない。
だが、味方の中で理解していない者がいることの方がこれからの対応に問題が生じるため、サヤはハルナに自分が理解している状況を説明をする。
「あのねぇ……こいつは、アタシが創った……いや、この空間は元からあったんだけど。アタシはこの空間を支配したんだ……」
続けてサヤは、自分が考えられる状況をサヤとフランムに続けてこう伝える。
サヤはこの空間は、サヤやモイスと同じ能力で作られた空間だと説明する。
この能力は特殊な能力で、魔素や元素といったエネルギーは必要とせず、能力を発動するだけでその機能は使えてしまう。
しかし、誰もがすでにある空間に入り込めたり乗っ取れるわけではない。
もちろんこの”能力を持つ者”でなければならず、ある程度の権限を持つ者でなければ入ったり乗っ取ったりすることはできない。
サヤはモイスからこの能力を奪った際、この能力にこれだけの仕様があることを調べていた。
権限による効力は、既にある空間や能力を乗っ取ったりするだけではなかった。
これまでにサヤやモイスが見せたように、この空間に存在するものたちの形、五感、魔素、元素、光などその他の物質などの形や量も空間の中に創造できる。
もちろん、それらは簡単なことではない。
空間を維持することや、細かな元素や五感情報などの制御は、全て空間の権限者の技量にかかっている。
もしも他にこの能力を持つ者がいたとしても、これまでにサヤが創った、もしくは奪った空間に介入してこれるものがいなかったことを考えれば、能力を持たない者または、サヤよりも権限の低い者たちだったのだという判断ができる。
どちらにしても、上位の権限を持つ者からすれば、警戒するに値しない状況だった。
「だけどね……こいつは違うんだ。アタシの持つ権限を上回ってるんだよ。この空間を取り戻されたのがその大きな証拠だよ」
「ねぇ、それっ……て……私たち……ここから出られるの?」
『フハハハハ!いいところに気付いたな、ハルナよ。そのことにおいても、この空間の中では全て我の”判断次第”ということになるが……な』
その存在はく大きな声で笑い、ようやくハルナたちが窮地に追い込まれていることを認識したことに機嫌を良くした。
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