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第六章 【二つの世界】
6-74 誘導
しおりを挟むハルナは関所で渡された王宮内に入るための手形を門番に見せる。
手形を受け取った門番は、その手形の真贋を確かめて問題がないと判断した。
そして視線を手形から、ハルナの後ろにある姿に移していく。
手にしていた槍の先をその対象へと近づけて、深く下げているフードを上にあげた。
そこには女性のドワーフの顔があり、下にうつむくうつろな目には力がなく、こんなに失礼なことをされても抵抗することも怒りの感情を見せる様子もないことを確認した。
「……よし。城の中に入ることを許可をする」
「……ありがとうございます」
ハルナは口や表情には出さなかったが、問題なく城の中に入れることにホッとした。
頭を下げ、感謝の意を表しながら、左右に並んだ門番二人のの間を通り抜けようとした。
「おい……ちょっと待て」
「は……はい!?何でございますか?」
「お前たち、ブロードの者だったな……ブロードは元気か?」
「え?えぇ……お元気だと思います。最近は忙しすぎてお会いできていないですけど」
「そうなのか?……あいつもなかなか忙しいやつだしな。ちょっとしたことで世話になったことがあるんだ、会ったときによろしく伝えておいてくれ。王都に来た時には顔を出すようにとな!」
「はい、お伝えしておきますね……それでは」
ハルナは後ろに会釈をして、再び城内へと歩き始めた。
「うわぁ……びっくりした……もぅ」
「いいじゃない、無事通り抜けられたんだからさ?」
「イナさん?大丈夫でした?」
ハルナは門番の失礼な態度に、イナが気分を悪くしていないか気を使った。
「はい……大丈夫です。だから、デイムもその殺気を早く消しなさい」
「で、ですが……!?」
「いいのです、デイム。今回は我々は目的があってやってきたのですから、ここで騒ぎを起こしてはなりません」
「……かしこまりました、イナ様」
「ごめんなさいね……サヤちゃんがこんな方法思いつかなきゃ……」
「いえ、よいのです。サヤ様のお考えになられた方法が、我々も最善と判断したのですから」
ステイビルがソイに対し依頼したのは、王都への手配と城内へ入る方法だった。
王都hへは問題はないが、城内へ入るには少し厳しくなっているという。
それは、モイスが王国に対して敵対宣言をしたためだった。
そのため今、城内はあわただしく動いているとのことだった。
そんな時に城内へ潜入するのは、無理であるとソイは告げる。
そこでサヤは、ドワーフを土産にして入る方法を思いついた。
特にこのドワーフは、モイスを信仰しているためモイスに対して何らかの手段になりえるかもと考えてのことだった。
デイムはどのことに対して強く反発をしたが、それに賛成したのがイナだった。
サヤは王都へ連れていくのはイナと指定すると、デイムも護衛で付いていきたいと食い下がってきたため、仕方なくデイムも連れていくことを許可した。
「……ほんと、城内がバタバタ騒がしいわね。えっと……あ、あそこだ」
ハルナは地下牢への入口を見つけ、そこに向かって後ろに付いてくる者たちを誘導した。
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