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第三章 【王国史】
3-179 下位の悪魔
しおりを挟む浮足立っていた村の運営が、ようやくゾンデルとナンブルによってまともに回復し始める。
そんな時、再びあの日以上の悪夢が襲い掛かってきた。
――ある日の朝、空は少し曇っている。
今日も村の整備と防衛の強化を行うため、村のエルフたちは活動を始める。
整備に関しては、ようやく目途が立ってきた。
これも、村人たちの協力し合った成果だと信じていた。
村人もほとんど止まりかけていた、村の運営からの指示が再び活発化することで平常を感じるものが増えてきている。
村にいる十数人の子供は手伝いをすることも出来ないため、村長の屋敷の裏にある広場に預けられた。
託児所のような役割を、そこで担うことにした。
屋敷の中で世話をしているエルフやナルメル、ブンデルとサナもそこにいた。
戦闘力に長けたナンブルが防衛に加わってくれてたため、ブンデルはミュイに好かれているサナと共にその場を任されるようになった。
勿論、子供たちを守る戦力としても期待はされていた。
相変わらずミュイは、ブンデルサナの傍から離れない。
しかし、その様子を見た他の子供たちが、サナやブンデルの傍に寄ってき始めた。
そこで起きたのは、二人の争奪戦。
ミュイは泣きそうな顔をするが、自分も負けてはいられないと二人の傍に寄ってアピールをする。
そんな子供たちの考えとは別に、ブンデルは困惑していた。
自分の身体を取り合う子供たち、その行動力の強さに驚きを見せる。
それに合わせて、各子供の性格も見えてくる。
我先にと挑む子、順番待ちする子、少し離れたところで羨ましそうに見ている子。
(子を持つ親ってこんな気持ちなのかな……)
子供たちにぶつかられたり、引っ張られたりしながら、そんなことを頭に浮かべていた。
――ボン!ボン!!
当然二つの爆発音が、村の中に鳴り響く。
ここからは何が起きたかはわからないが、非常事態であると感じ取れる爆発音だった。
「なんだ!?」
「みんな、急いでこっちにきて!」
サナは最初に決められていたように、山を削った横穴の洞窟の中に子供たちを誘導した。
そして二名の世話人に子供たちをお願いした。
後からきたナルメルが、その入り口をログホルムで塞ぎカムフラージュする。
「ナルメルさん、ステイビルさんたちは?」
「ステイビルさんたちナンブルと一緒に、早急に現場に向かわれました。父からの指示で、ブンデルさんにはここで残っていて欲しいとのことです」
「わかりました。ここで待機しています」
その言葉をきき、ナルメルはまた屋敷の中に戻り他の業務に戻っていく。
何度か最初の爆発音が鳴り響いていたが、いまはその音は止んでいる。
戦いの範囲が、中・遠距離から接近戦へと変わったためだと推測した。
「おい!何だあれは!?」
「急げ急げ!早く安全な場所へ!!」
村の中では攻撃や防御をする術を持たないもの優先的に避難させるようにしていた。
再度起こりうる災難に備えて、村人に訓練をさせていたことが生かされている。
村人は落ち着いて行動をしていた、既に道端に動かないエルフがいても……
だが、今回は想定していないレベルの敵の襲撃だった。
その敵の名は――
”レッサーデーモン”
エルフやハルナたちにとっても初めて見る存在だった。
今回放たれたレッサーデーモンは二体、ハルナたちともう一組別れたエレーナの方にもその姿が確認された。
下半身は毛の生えた山羊のもので、その後ろには尾も有していた。
上半身は人の身体だが、肩からは二本の腕が伸びている。
背中には大きな蝙蝠の羽を背負っており、顔は獣の顔で額には前に突き出して曲がった角が生えている。
その生物に知能はなく、ただ命令されたものを実行するだけの生き物だった。
今回指示された命令は、”エルフの村の全滅”。
恐らくだが、指示を出したのはあのダークエルフがいる組織ののものとステイビルは踏んだ。
そのためその組織は、いわゆる悪魔と手を結んだ者たちであると考えられる。
ステイビルは警戒レベルを最大限にして、ハルナたちに対応するように指示をした。
接近した場合はソフィーネが攻撃を弾き、各距離の攻撃はハルナがフーカと協力し攻撃を仕掛けていく。
しかし、三対一が有利かといえばそうでもなく、物理攻撃と魔法攻撃を合わせてくるため対応が難しかった。
その中で魔法に関しては、巨大な魔法に関しては魔力を込める時間が必要だと判断し、フーカが使える光の攻撃で大砲は防ぐことができた。
だが、結局は決定的なダメージを与えるには至ってはいない。
そこから、状況は悪い方へ流れていくことになった。
ハルナたちと対峙していたレッサーデーモンはこの均衡を嫌い、大声をあげながら上空に羽ばたいていく。
その姿は、村の奥の屋敷へと消えていく。
ハルナたちもその後を急いで追っていった。
広場で待機していたブンデルたちも、その姿を発見する。
すでに六名の警備兵が配置されており、迎え撃つ体制も整っている。
未知の生物の襲撃に対して、ピリピリとした緊張感が肌に突き刺さっていく。
「……サナ、来たぞ!気を付けろよ!!」
「はい!」
サナが返事をしたと同時に、広場を見つけたレッサーデーモンは高度を下げていった。
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