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第二章  【西の王国】

2-59 コボルド討伐7

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『人間ヨ 少シノ間 ココデ待ッテテホシイ』


コボルドが、告げる。


まず一匹が先に戻り、長が会うかどうかを聞いてくるとのことだった。
その間にお互い襲わないことは、約束した。







『セイレイサマ……オ聞キキシテモ ヨイデショウカ?』


あるコボルドが、フウカに対し話しかける。
フウカは、ハルナと目を合わせる。
それに対して、ハルナは”コクッ”と頷いた。





「うん、いいよ」



『イツモ 不思議ニ思ッテイタノデス。 ナゼセイレイサマハ 人間ニ 協力サレテイルノデショウカ?』





フウカは、きょとんとした顔をする。
今まで、そんなことを考えたことがなかった。



ハルナも、この質問には興味があった。
精霊の秘密のようなものが、何か知ることができるのではないかと期待した。




「うーん……そんなこと聞かれても……」


『ワタシタチノ部族ノ中ニモ セイレイサマノチカラヲ 扱エル者ガイマス。 ソノ者カラハ セイレイサマハ ワレラノ勝利ノタメニ チカラヲ オカシシテクレルノダト イッテマシタ』


フウカは少し、コボルドの勢いに押され気味になっていた。


『ナラバナゼ モットワレラニチカラヲ オ貸シイタダケナイノデスカ!? コノママデハ 人間ダケガ 強クナッテイクバカリデス! ソレガ ダイセイレイサマノ 望ミナノデショウカ!?』




「そんなこと……言われても……」




フウカは、ハルナの後ろに隠れてしまった。




『モ、モウシワケゴザイマセン。 セイレイサマニ 失礼ナコトヲ……オ許シクダサイ』



コボルドは、片膝をついて頭を下げて詫びる。



「大丈夫ですよ。フーちゃんは、怒ってませんから。どうか頭を上げてください」




ハルナが、フウカの代わりに問題ないことを伝える。
そして、ハルナの後ろからフウカの声がする。




「私はハル姉ちゃんのことが好きだから……一緒に居たいと思ったから一緒にいるだけ。その子(精霊)もあなた達の仲間が気に入って一緒に居るんじゃないかなぁ。よくわからないけど」



「私とフーちゃんはたまたま出会ったんですけど、何かが繋がっている気がするんです。以前もそういう出来事がありましたし……」




ハルナはフウカが消えてしまった時の胸の痛みを思い出して、胸に手を当てた。



「うまく言えないんですが、認められたんでしょうね、精霊に」





そういって、コボルドに笑顔を向けた。





『オ前ミタイナ ニンゲンモ イルノダナ……』




「え?」


コボルドの声が小さすぎて、ハルナはうまく聞き取れなかった。



『イヤ……ナンデモナイ アリガトウ ニンゲンヨ』





そういってコボルドは、残った群れの中に戻っていった。





「ハルナさんとフウカさまは、素敵ですね……羨ましいですぅ」



後ろで聞いていたクリエが、ハルナに話しかけた。



「クリエさん!?聞いてたんですか?」



「すみません……面白い話が耳に入ってきて。でも、とっても素敵でしたよ!」




ハルナは何が素敵だったのか良く分からないが、褒めてくれているのは感じ取れた。




「私も”エルデア”と、ハルナさんたちのような関係が築けるように頑張ります!」



ハルナは、良く分からなかったので何も言わず、笑顔だけ返した。










そこからしばらくして、確認をしに行っていたコボルドが戻ってきた。



『長ガ オ前タチト会ッテモイイトイッテイル。 シカシ 会ウノハ 四人マデダ』



向こうもやはり、警戒をしているようだ。
そのための人数制限なのだろう。


危険な気もするが、残された時間は少ない。
せっかくの機会のため、その条件を受け入れることで一致した。






「分かった……人選を考えたいので、少しだけ時間をもらいたい」




警備兵がコボルトに対して告げ、コボルドもそれを了承した。











「それで、誰がいきますか?」




警備兵が切り出した。




「念のため、剣の使い手と精霊使いの二名ずつが良いと思うのですが……」



もう一人の警備兵が提案する。





「それだと、警戒されて話し合いに影響が出てしまうのでは?」



ソルベティが慎重な意見を告げる。




「後ろから付いて行くのは?」




と、警備兵。



「それは、危険でしょう。こちらに残っているコボルドもいますし、見つかった場合は約束を破ったことになります」



アルベルトが、その意見を否定した。







「……私たち四人はどうでしょう?」



クリエが、提案をした。
そして、ルーシー、エレーナ、ハルナの顔を順に見ていく。



目をつぶっていた、ルーシーがつぶやく。



「そうですね。四人と聞いて、私も同じことを思っていましたよ」



ルーシーは問題がないようだ。

ハルナはエレーナの顔を見るが、その顔つきはもう決まっているといった表情だった。




「では、私たちも問題ありません」




ハルナは応えた。





付き添いで来ていた者たちも、異存はなかった。



「本当に大丈夫ですか?」




警備兵が心配そうな顔で見る。




「はい、大丈夫です。実力としては、先ほどの戦闘を見ていただいてわかっていらっしゃると思いますが?もしも、何かあった場合は合図を送りますので援護をお願いします」


武器を持たず話し合いに行くというスタンスと、先ほどのコボルドの話から精霊使いは信頼されているのではないかという判断だった。





そして、四人の精霊使いが長と会うことを案内役のコボルドに告げる。






『ワカッタ デハ ソノ者タチハ コレカラワタシノ後ヲ ツイテクルガイイ』



コボルドはそう告げると、茂みの中に姿を消した。


ハルナたちはその姿を見失わない様にと、残った者たちに行ってくることを告げて、コボルドの後を追いかけた。






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