上 下
24 / 1,278
第一章  【モイスティア】

1-23 過ぎ行く騒然たる日々

しおりを挟む

ティアドは、ソフィーネが淹れてくれた目の前にある紅茶を一口含む。


「そうね……思うところがないわけでは……ないわね」



紅茶の皿を、膝の上に乗せたままティアドはうつむく。
ほんの十秒くらいの時が、とても長く感じる。


気持ちを整理し終えたのか、ティアドは語り始めた。



「カメリア姉さんは、自慢の姉だったのよ。若くして精霊使いになり、面倒見もよく頭の回転も速く、人を見抜く力もあったように思えた。そんな力がある人物だからこそ、モイスティアの訓練所を造れたのよ」

「王選に参加し、旅に出ることになったときも驚きはしなかったわ。姉さんなら当然だと思ってた。もしかしたら、お妃にもなれるんじゃないかって本気で思ってた……それが当たり前のようにね」


「姉さんは、旅の中で風の大精霊(ラファエル)様とお会いすることができ、認められてその証である指輪を受け取った……」

ティアドは、ハルナの手を見つめる。


「風の精霊の加護を受けた指輪を……ね」


ハルナはそっと指輪に触れる。
本当はこんなに気軽に付けていること自体がおかしく、苦労をして努力をして手に入れることが許されるものだったのだ。




「一度町に戻り、次の出発まで準備をしていたところ。王国からの依頼でインプ討伐の命令が下りたの。依頼対象は強敵、だから精霊の加護を受けている二人の精霊使いに白羽の矢が立ったの」


「それが……」


「そう……あなたのお母様と私の姉さんね。一番まとまっていることと実績と実力が評価され、王子を含むメンバーが基本となり護衛数名を追加して討伐することになったの」



「……それで、あの事件ですか?」



マイヤが言葉を挟む。




「そうね。この話はもう、アーテリア様からお聞きになられているかしら?」



エレーナは、その問いかけに黙って頷いた。



「……あの頃は信じられなかった。姉が……カメリアが、死んでしまったなんて。どんなに考えても、判らなかったし受け入れられなかった。誰かに聞こうにも、いつも頼りにしていたのが姉だったから。次第に、パーティーの中で裏切り者いたのかもとまで、疑いの目を持つようになったわ。……弱かったのよ、人としてね」



「ティアドさん……」


ハルナは慰めの声を掛けようとしたが、それから先の言葉が浮かばなかった。



ハルナも忘れかけていたあの事実を思い出していた。この世界とは別の世界に残してきた妹のことを。
同じように苦しんでいるのではないか……


そう考えると、ティアドの気持ちも理解できる。
残された方は、辛い思いを抱いたまま生きていかなければならないのだろう。
消えることのない記憶とともに。

幸か不幸か、今ハルナはこうして別の世界に生きている……
この世界が”本当”の世界かわからないが、こうしてみんなと過ごせていることは幸せなことかもしれない。


「ありがとう、ハルナさん……お心遣い感謝するわ。そしてごめんなさいね、エレーナさんの質問の答えになっていなかったわね」


その言葉にエレーナは真っ赤な目をして、首を振り否定する。
言葉を出すと、我慢している涙がこぼれそうだったから。


「それで先ほどの答えは……【いいえ】よ。今はもう、あの事件に関しては誰も恨んでいないわ……確かに、今でも思い出すとまだ胸が苦しくなる。でも、それは信頼していた仲間を守るためだったのよね。……やっぱり誇りの姉だわ」


そういうと、エレーナの顔を見つめ優しく微笑んだ。


エレーナの心の堤防は、もろくも崩れ落ちる。
今まで耐えてきたものが、許されたのだった。

泣き声を押し殺そうにも、自然とあふれる感情の前には止めることはできなかった。


ティアドはそんなエレーを抱き寄せてて、後ろ髪を優しくなでる。
自分の娘を慰めるように……


ティアドには、もう一つの問題もあった。
娘の消失について。

これに関しても、何も情報がないまま時間だけが経過をしている。


こればかりに時間をかけるわけにもいかず、やるべきことは他にも沢山ある。
せめてどこかで無事でいてくれるか、最悪でも苦しんでいなければ良いと願うばかりだ。





そろそろ、モイスティアでの滞在にも、お別れの時間が近づいてきた。


エントランスには、豪華な馬車が止まっている。
その紋章はフリーマス家の紋章だった。


馬車の運転席に乗っていたのは、御者とアルベルト。
車の中にはメイヤも乗っていた。

道中、何かあってはいけないと二名に命令をしたのはアーテリアだった。

アルベルトは黒い服に身を包み、他の町でも恥ずかしくない格好を整えている。
腰にはレイピアを携えて。


アルベルトは、昇降台を設置し準備を整える。
馬車のドアが開き、中からメイヤが姿を見せる。

馬車から降りて、ティアドの前に跪き挨拶を述べる。


「ご無沙汰しております、ティアド・スプレイズ様。この度の長期間の滞在についてお許しを頂きましたことにアーテリア様より感謝の言葉をお預かりしております」



「ご丁寧に有難うございます。こちらこそ、エレーナ様やハルナ様にはご協力いただき感謝しております。また改めて、お礼のご挨拶にお伺いさせて頂きますので、アーテリア様によろしくお伝えください」

その言葉に対し、メイヤはお辞儀をして返した。



そして、視点はその後ろのソフィーネに。


「……お元気そうね、ソフィーネ。今回はお手柄だったと聞いておりますよ」


「ありがとうございます、メイヤ様。少しは、スプレイズ家のお役に立てたようで安心しておりますわ」


「ふふふ……それはよかったわ。それではまた今度、どのくらい成長したのかお手合わせ願いたいわね」


「……その際は、ぜひよろしくお願いしますわ……メイヤ様」



「あーもう。二人とも敵意むき出しなのよ。マイヤも二人を止めてよ!」


「いーえ、エレーナ様。こんなのはまだまだです。二人にとっては再開した喜びの挨拶のようなものですわ」



一通り挨拶が終わり、時間を気にしてアルベルトが声を掛ける。



「エレーナ様、それではそろそろ出発しましょう。遅くなりますと、道も暗くなり危険になって参りますので……」



とはいえ、このメンバーなら何が起きても対処可能であるとエレーナは思っているが、このまま居てはティアドにも迷惑がかかるというもの。




「えぇ……それでは、ティアド様、ソフィーネさん。お世話になりました。また近いうちにお会いできる日を楽しみしております」




そう告げて、エレーナはお辞儀する。



「こちらこそ、有難うございました。……それにハルナ様も、お元気で。また、遊びにいらしてくださいね」


「有難うございます、ティアドさん。またぜひお会いしましょう!」



そういうとハルナは、ティアドに手を差し出す。

ティアドも気付き手を差し出してハルナの手を取り、握手をした。
ハルナはその手にピリピリとしたものを感覚を受け、力強さを感じる。




エレーナ、ハルナ、マイヤ、メイヤの順で馬車に乗り込む。

アルベルトが踏み台をしまい、御者の隣に座る。



「それでは、有難うございました!!」


ハルナは窓から顔を出し、見送ってくれる人たちに挨拶をした。


――パシィッ


鞭の音が響き、馬車はゆっくりと動き出す。



ティアドは、じっとハルナの顔を見つめていた。
馬車の姿が小さくなり、町の角で見えなくなるまで見送っていた。


いつまでも見送るティアドに、ソフィーネは心配して声を掛ける。



「……ティアド様?」


「……ごめんなさい。とても賑やかな日々だったので、少し寂しくなったのよ」


「わかります、ティアド様。私も同じ気持ちです……」


二人は笑い合い、静かになった家の中に戻っていった。








途中休憩を挟みながら、馬車は進んでいく。
そして、日が暮れて空が赤から黒の色に染まっていく。
明るい星だけが輝いて見え始めたその時、懐かしい関所が見えてきた。



『風の町ラヴィーネ』



馬車は何事もなく町に入り、懐かしい町の中を進んでいく。
大きな屋敷の姿が、徐々に大きくなり門が静かに開いていく。

門を通り過ぎると、開いた扉の中から眩しい明かりが見え出迎える人影が見える。



馬車は速度を落とし、エントランスの前に停まった。


アルベルトが踏み台を置き、馬車のドアを開く。


「ただいま!!」


エレーナが飛び出した。


「おかえりなさい、エレーナ。そしてハルナさんも」




出迎えてくれたのは、アーテリアだった。その横には、オリーブの姿もあった。



「疲れた……ただ、座ってるだけっていうのも疲れるのよね」

「私も、腰……が……伸ばせない……の」



背伸びをするハルナの腰から”バキッ”っと音が鳴る。



「とにかく、お湯にでも浸かってサッパリしてきたら?そこからお話を聞かせて頂戴?」


アーテリアの提案にエレーナとハルナは同意する。
マイヤ、メイヤは、着いたばかりだがメイドとしての仕事があるようだった。


ハルナは申し訳ないと思いつつも、エレーナの強引な誘いにより浴場に連れていかれた。

その後、軽く夕食を済ませ、アーテリアの部屋に集まる。
部屋には、疲れを癒やすための香りのよい植物のオイルが焚かれ、嗅覚から身体の疲れを取り除いてくれる。



そこでエレーナは、モイスティアで起きた出来事やティアドから聞いた話などをアーテリアに報告した。
出来事については、マイヤがこまめに書簡にて報告していてくれていたようでおおよその内容は伝わっていた。


ティアドの件については、初めて耳にする内容だった。


「そう……ティアド様はそう仰っていたのね」


マイヤは、帰り際にティアドから書簡をあずかっていたが、その内容では読み取れないものを話の中から感じ取れた。
アーテリアも少しだけ、背負っているものが軽くなった気持ちになる。


(この二人は、結構いいコンビね……)


初めてこの家に連れてきた時に相性が良いのは感じていたが、これほどまでとは思っていなかった。


それに、今回起きた不思議な現象。
娘の傷も、すっかり癒えているようだったが今夜はそのことについて触れないほうがいいと感じた。
また、落ち着いて何が起きたのか状況を整理し検証することにした。


「……わかりました。とにかく、お疲れさまでした。今夜はゆっくりと休んで。数日間は身体を癒すことに専念するのよ、二人とも」


「「はい!」」


二人は、それぞれの寝室に戻り、久々の自分のベットで休むことにした。







――真夜中

屋敷の中では、誰かが起きて作業している気配はある。
その音に目が覚めてしまったというわけでもない。


(疲れてるはずなのに……眠れない)

エレーナはベットの横においてある、オイルランプに火をつける。
火はゆらゆらと揺れ、心地良い揺らぎで癒してくれる。



急に元の生活に戻ってきたため、順応できていないのかと思っていた。

でも、そうではなさそうだった。

エレーナは眠気が訪れるまで、ベットに腰かけることにした。
その隣には、この度でずっと持ち歩いていた愛用の杖が立て掛けてある。


思い出すのは、ハルナの急成長した力。
今まで自分でも見たことがない、力を見せていた。



(あの指輪の力なの??)



思い返しても、今回特に何かをした記憶がない。
近頃、ハルナのことを思うと息苦しくなる気がする。


(嫉妬……かしら?)



その気持ちもぬぐい切れない。
だけど、ハルナ自身のことは嫌いではない。


――はず


エレーナは目をつむり、苦しくなるほどに肺を空気で満たす。
そして息を止める、苦しくなるまで止める。


…………

……………………

………………………………




――ぷっっはあぁぁぁ!!!



一気に息を吐き、気持ちを切り替える。
心臓の早い鼓動が、身体の中で鳴り響く。



(忙しかったから、急に休んでも気が落ち着かないのよね……)


自分の状態をそう納得させ、コップに水を入れ飲み干した。


今夜はオイルランプの灯は消さずに、オイルが切れるまで点けておくことにした。



(――クソッ)



エレーナはベットの中に潜り込んだ。










数日後、各主要な家に王国から書簡が届く。
その書簡の表には、次のような文字が書かれてあった。



【王選に関わる、精霊使いの人選のについて】










――――――――――――――――――――――――――――――

商人たちの一同が、森の中を移動している。
商人の中には、ある特定の町だけではなく各町を回り、他の町の特産品を仕入れ他の町にそれ流し、またその町の特産品を他の町へ流す者たちもいる。

時にその商人たちは一家族だけではなく、複数の家族で集団を形成し各町を旅していた。




そういった商人のとある集団の一つ。

先頭に番犬を連れて、魔物や時々出てくる野盗を察知するために同行させている。



――ワン!

数匹の一頭が、何かを見つけたらしくそちらに向かって吠える。
首輪を引いている、少女が愛犬をなだめるが鳴き止むことがなかった。


いつもと違う様子に、周囲は警戒する。
少女は愛犬と一緒に、その周囲を探索する。


草に埋もれた中に、一つ光るものが見えた。
犬はそれを口にくわえ、少女に手渡した。


少女はその瓶を眺めると、瓶自体は高価なものに見えたが中の黒い粉のようなものが気になった。


瓶を渡した犬はおとなしくなり、また群れの方へ戻っていった。



「ナーシャ、何かあったのかい?」


「いいえ、お父様。特に何もなかったわ」



そういうと、少女はまた旅の一同の中に戻り進んでいった。



(あの瓶はあたしが拾ったからあたしの物なのよ!)





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。  ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。  注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません! *不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。 *R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...