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リクエストb:フーリーのその後
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アルファ版で要望の多かった、フーリーのその後です。
淡々と進みますが、内容はダークです。
ご注意ください。(今更?/笑)
これで本当に終了です。
―――――――――――――――
フーリーがアンダーソン子爵の婚約者として屋敷で暮らし始めて、使用人が居たひと月目は、まだミアと交流があった。
食事は、ミアは食堂で、フーリーは自室でだった。
その食事の不満を、フーリーがミアに訴えていた。
それでも、まだ会話があったのだ。
使用人が居なくなり、食事はミアが何とか作っていた。
勿論給仕などない。
ミアは自分で作って、自分の分だけをよそい、さっさと食べてしまう。
フーリーは残った物を自分で器に盛り、食べなければいけない。
何日かに1回は、我慢してそれを食べていた。
温め方も解らないので、冷めたまま鍋から直接スプーンで食べた。
元王族、それどころか王位継承権第1位に居たフーリーには、とても耐えられる状況では無かった。
フーリーが夕食を食べないと、残った食事をミアは朝食にする為、何も作らずに出掛けてしまう事も多々あった。
ある時、空腹に耐えかねたフーリーは屋敷を出て、街に向かって歩いていた。
フラフラと道を右へ左へとなりながら、ギリギリな状態で歩いていた。
アンダーソン子爵邸は郊外に在ったので、空腹のフーリーは街に辿り着く前に倒れそうになっていたのだ。
その時、派手な馬車が停まった。
最初はフラフラ歩いていたフーリーに文句を言うためだったが、フーリーを見た馬車の中の夫人は、そのまま馬車の中へ招き入れた。
彼女は男爵家の後妻に入った夫人だった。
年齢は男爵と親子ほど離れていた。
その夫人自身も、フーリーと親子ほど年が離れている。
若い頃は美しかった夫人は、夫の金で贅沢の限りを尽くし、その贅沢を体に何十年も掛けて蓄えていた。
要は体の凹凸が無いほど、脂肪がついているのだ。
夫人に洋服を買ってもらい、更にレストランへと連れて行ってもらい、フーリーは久しぶりにまともな食事をした。
前のフーリーであれば見向きもしないランクのレストランだが、今のフーリーには天国のように感じた。
それから1年ほど、フーリーはその男爵夫人に飼われていた。
勿論無償で飼ってもらえるわけもなく、フーリーの初めての相手は、この男爵夫人となった。
せめてミアと初夜くらい迎えておくべきだったと思っても、後の祭りである。
それでもそんな状況は永遠には続かない。
夫人に飽きられ、屋敷を出されてしまったのだ。
しかし、男爵夫人もタダでは追い出さなかった。
次の引取先を紹介してくれたのだ。
似たような子爵夫人だった。
それでも、あの惨めな生活に戻る気の無いフーリーは、大人しく子爵夫人に付いて行った。
子爵夫人から男爵夫人へ金銭が渡されていた事を、勿論、フーリーは知らない。
30年が経ち、劣化したフーリーはとうとう引取先が無くなり、着の身着のまま追い出された。
久しぶりにアンダーソン子爵家に帰ったが、門扉は固く閉ざされ、長年開いた形跡が無かった。
荒れ果てた庭には、打ち捨てられた家具が見えた。
風雨に晒されボロボロだったが、フーリーの物だと辛うじて判断出来た。
今の自分の状況を表しているようで、フーリーは無意識に泣いていた。
何日も門の前に座って居た。
気付いたら教会のベッドの上に、フーリーは寝ていた。
遠くの貴族の屋敷で住み込みで働いていたミアに教会から市役所を通じて連絡がされたが、何週間も掛けて来たミアが到着した時には、フーリーは天に召された後だった。
いつまでも遺体を置いておくわけにもいかず、共同墓地に葬られたと聞いたミアは、手持ちのお金を全て教会に寄付して帰って行った。
フーリーが葬られた墓地の場所すら聞かなかったそうだ。
終
淡々と進みますが、内容はダークです。
ご注意ください。(今更?/笑)
これで本当に終了です。
―――――――――――――――
フーリーがアンダーソン子爵の婚約者として屋敷で暮らし始めて、使用人が居たひと月目は、まだミアと交流があった。
食事は、ミアは食堂で、フーリーは自室でだった。
その食事の不満を、フーリーがミアに訴えていた。
それでも、まだ会話があったのだ。
使用人が居なくなり、食事はミアが何とか作っていた。
勿論給仕などない。
ミアは自分で作って、自分の分だけをよそい、さっさと食べてしまう。
フーリーは残った物を自分で器に盛り、食べなければいけない。
何日かに1回は、我慢してそれを食べていた。
温め方も解らないので、冷めたまま鍋から直接スプーンで食べた。
元王族、それどころか王位継承権第1位に居たフーリーには、とても耐えられる状況では無かった。
フーリーが夕食を食べないと、残った食事をミアは朝食にする為、何も作らずに出掛けてしまう事も多々あった。
ある時、空腹に耐えかねたフーリーは屋敷を出て、街に向かって歩いていた。
フラフラと道を右へ左へとなりながら、ギリギリな状態で歩いていた。
アンダーソン子爵邸は郊外に在ったので、空腹のフーリーは街に辿り着く前に倒れそうになっていたのだ。
その時、派手な馬車が停まった。
最初はフラフラ歩いていたフーリーに文句を言うためだったが、フーリーを見た馬車の中の夫人は、そのまま馬車の中へ招き入れた。
彼女は男爵家の後妻に入った夫人だった。
年齢は男爵と親子ほど離れていた。
その夫人自身も、フーリーと親子ほど年が離れている。
若い頃は美しかった夫人は、夫の金で贅沢の限りを尽くし、その贅沢を体に何十年も掛けて蓄えていた。
要は体の凹凸が無いほど、脂肪がついているのだ。
夫人に洋服を買ってもらい、更にレストランへと連れて行ってもらい、フーリーは久しぶりにまともな食事をした。
前のフーリーであれば見向きもしないランクのレストランだが、今のフーリーには天国のように感じた。
それから1年ほど、フーリーはその男爵夫人に飼われていた。
勿論無償で飼ってもらえるわけもなく、フーリーの初めての相手は、この男爵夫人となった。
せめてミアと初夜くらい迎えておくべきだったと思っても、後の祭りである。
それでもそんな状況は永遠には続かない。
夫人に飽きられ、屋敷を出されてしまったのだ。
しかし、男爵夫人もタダでは追い出さなかった。
次の引取先を紹介してくれたのだ。
似たような子爵夫人だった。
それでも、あの惨めな生活に戻る気の無いフーリーは、大人しく子爵夫人に付いて行った。
子爵夫人から男爵夫人へ金銭が渡されていた事を、勿論、フーリーは知らない。
30年が経ち、劣化したフーリーはとうとう引取先が無くなり、着の身着のまま追い出された。
久しぶりにアンダーソン子爵家に帰ったが、門扉は固く閉ざされ、長年開いた形跡が無かった。
荒れ果てた庭には、打ち捨てられた家具が見えた。
風雨に晒されボロボロだったが、フーリーの物だと辛うじて判断出来た。
今の自分の状況を表しているようで、フーリーは無意識に泣いていた。
何日も門の前に座って居た。
気付いたら教会のベッドの上に、フーリーは寝ていた。
遠くの貴族の屋敷で住み込みで働いていたミアに教会から市役所を通じて連絡がされたが、何週間も掛けて来たミアが到着した時には、フーリーは天に召された後だった。
いつまでも遺体を置いておくわけにもいかず、共同墓地に葬られたと聞いたミアは、手持ちのお金を全て教会に寄付して帰って行った。
フーリーが葬られた墓地の場所すら聞かなかったそうだ。
終
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