【完結】愛してなどおりませんが

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19b：王太子の条件

　暫く放心していたフーリーだが、すぐに良い事を思い付いたとニヤリと笑う。
「ミアが子爵でも、公爵家の養子にすれば良いだけじゃないか！何だ、焦らせるな。それで、王太子の俺がミアを正妃にすれば良い！」
　ハッハッハと、態わざとらしくフーリーは笑う。
「良かった！何も変わらないのね！」
　嬉しそうに舞台上で抱き合う二人。

「アメリア、婚約者でなくなっていても、お前も側妃にしてやろう！王太子に婚約破棄された女など、誰も引き取らないからな！」
「フーリーってば優しい！」
　自分を見下してくる二人を、アメリアは優しい笑みを浮かべたまま見つめた。


「私の婚約者を、勝手に側妃にしようと
　しないでください」
　アルフィーがアメリアの横へと立った。
「これからそこは、王家が使います。衛兵、二人を」
　下ろせ、までは口にせずに視線で命令した。

　会場の警備をする衛兵に引きずり下ろされた二人の横を、王と王妃、側妃、と通って舞台へ上がって行く。
　誰も二人を、いや、フーリーを見なかった。
　実母である正妃も、チラリとも視線を移さなかった。

　アルフィーとアメリアが二人の横を通る。
「待て！王家なら俺も関係者あるだろうが！」
　アルフィーに向かってフーリーが叫ぶと、鼻で笑われた。

「貴方は成人と同時に王籍から抜けてます。子爵家に婿入りが決まってますからね」
「は？何を言ってる」
「だって、貴方はアメリア様より、そちらの子爵を選ばれたでしょう？」
「だが、俺は王太子だ！」
　フーリーの言葉に、アルフィーが笑い出す。

「何を言ってるんですか？アメリアと結婚する者が王太子ですよ。アメリアが王妃教育をずっと受けていたのは、何の為だと思っていたのですか？」
「だから、側妃にしてやると」
「馬鹿ですか？王妃とは正妃の事です。アメリア有りきの王太子なのですよ」

　アルフィーの説明にフーリーはアメリアを見る。
　いつもの、優しい笑みを浮かべた、愛しい者を見る笑顔だと思った。