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16:エスコート

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 朝にアメリアの言っていた意味を公爵夫妻が理解したのは、屋敷にフーリーが来た時だった。
 慌てて執事が公爵夫妻を呼びに行った。
「フーリー殿下、なぜ公爵家に?」
「ミアを迎えに来たのだ。アメリアも連れて行ってやろう」
 偉そうに言うフーリーに、公爵夫妻の顔が曇る。

「アメリアはこちらには居りません。何も聞かされていないのですか?」
 フーリーの言葉に返事を返したのは、ロバーツだった。
「どうせロバーツ公爵子息がエスコートするのだろう?」
 馬鹿にしたように言うフーリーに、ロバーツが冷ややかな視線を向ける。
「私は、ロバーツ・パーソン伯爵ですが」

 高位貴族の嫡男は、成人してから本家を継ぐまでは、家が持っている他の爵位を名乗るのが通例だった。
 いつまでも親の庇護下の子息でいたら、他の貴族に相手にされないからだ。

「なんだ!公爵家から出されたのか!ハハッ!何をやらかしたんだ」
 高位貴族の儀礼すら知らないフーリーに、王宮での彼の立場を知った。


「フーリー!お待たせ!」
 ドレスをたくし上げ、ミアが階段を駆け下りて来た。
 もう誰も注意しない。
 彼女は成人しているからだ。

 フーリーにエスコートされ馬車に乗り込もうとしたミアに、アンダーソン公爵が声を掛ける。
「ミア嬢、弟夫婦と暮らしていたやしきは覚えているかね?」
「あ、はい。郊外の小さな家ですよね?」
「覚えているなら良かった。掃除はしてあり、住めるようにはしたから、後は自分でやりなさい」
「はい……?」
 ミアは返事はしたが、意味を理解していなかった。

 馬車の中で「売って金にしろって事じゃないのか?」とフーリーに言われ、「王家に嫁ぐのに色々用意しなきゃですもんね!」と納得した。


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