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13:増長が齎したもの
しおりを挟む「明日、フーリーの婚約者が発表されるのよね!」
晩餐の席で、ミアが嬉しそうに声を上げる。
「ミア嬢、第一王子殿下と呼びなさい」
ロバーツがミアを注意する。
「えぇ!?私はフーリーって呼ぶ事を許されてるわ!」
反論するミアに、ロバーツは冷たい視線を向ける。
「せめて殿下を付けなさい」
ロバーツに言われ、ミアは「はぁい」と気の抜けた返事をした。
「明日ではなく、明後日の謝恩パーティーで、王太子の婚約者が発表されます。全然意味が違いますので、間違った情報は流さないようにしなさいね」
アメリアが珍しく口を開いたと思ったら、ミアを責める言葉だった為、ミアの機嫌が一気に悪くなる。
カチャカチャと音を鳴らしながら食事をするミアを、公爵夫妻もロバーツも異物を見る目で見ていた。
この頃には、公爵夫妻もミアの態度に嫌気がさしてきており、成人したら早々に家から出そうと思っていた。
成人すれば、晴れて子爵家を継げるのだ。
誰かの庇護下に居る必要は無い。
公爵夫妻がミアに構わなくなっても、その分フーリーがミアに色々していたので、ミア自身はその事に気付いていなかった。
ミアは知らなかったが、両親の残してくれた財産は、殆どがミアの服や装飾品に消えていた。
ミアが公爵夫妻からのプレゼントだと思っていた物は、全て自分の財産で買っていたのである。
ドレスにしても装飾品にしても、公爵夫妻が勝手に買い与えたわけでは無い。
ミアが欲しいと言い、ミアが選び、ミアの意志で買う事を決めたものである。
日用品や食費、光熱費は一切取られていないので、むしろ良心的であった。
ミアが公爵に来てから、高位貴族としての礼儀を覚え、我儘も言わない淑女へと変わっていれば、また違う未来があっただろう。
だが公女を敬わず、公女の婚約者だったフーリーと恋人のように振る舞った時点で、公爵家はミアを切り捨てた。
__________________
題名の「齎す」は「もたらす」と読みます。
1 持ってくる。持っていく。
2 好ましくない状態を生じさせる。引き起こす。
今回は、2の意味で使ってます。
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