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12:変わっていく関係

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 まだ正式に立太子も、婚約者の発表もされていない。
 それでも第一王子であるフーリーが王太子であり、アンダーソン公爵家の令嬢がその婚約者だと、生徒達は暗黙の了解で知っていた。

 学校では、フーリーは常にミアと共に居た。
 朝もアメリアではなく、ミアと共に登校する。
 皆、ミアがフーリーの婚約者であるアンダーソン公爵令嬢だと誤解した。
 そしてミアも「アンダーソン公爵令嬢」と呼ばれても、否定しなかった。

 ミアの中では、それは間違いでは無かったので、否定する必要が無かった。


「おねえ様は、いつも私を無視するのです」
 ミアがフーリーに訴える。

 嘘では無い。但し、本当でも無い。
 ミアが「おねえ様」と呼ぶので、アメリアは返事をしないのだ。
「アメリア様」もしくは「アンダーソン公爵令嬢」と呼べばちゃんと反応するのに、ミアはかたくなに「おねえ様」と呼び続けた。

「食事の時も、全然話さないし」
 ミアと話さないのでは無く、誰とも話さない。
「出掛ける時、絶対に私を連れて行かないのです」
 アメリアが出掛けるのは、王宮に用事がある時である。
 部外者を連れて行くわけが無い。

「同じ公爵家の娘なのに。私が元子爵家だからと馬鹿にしているのですわ」
 ミアはポロポロと涙を零した。


 ミアの涙の訴えを聞いてから、フーリーは益々ミアと一緒に行動するようになった。
 公爵家でのアメリアとの交流も、いつの間にか無くなり、ミアに会いに行くようになっていた。

 そして2年の時が過ぎ、明日には卒業という時になった。

 アメリアとフーリーはすっかり疎遠になっていたが、誰も何も言わなかった。
 アメリアは公爵家を空ける事が増え、王宮に居る事が増えていた。
 それは王妃教育が佳境に入っていた為である。

 しかし、その事実をフーリーは知らなかった。
 それが何を意味するかを、すぐに知る事になる。


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