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37:本当の終わりの始まり

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 タバッサの実家のシリー家は、再三に渡る公爵夫人への不敬な態度に対する慰謝料が払いきれず、爵位返上となった。
 国王夫妻が参加する結婚披露パーティーで、公爵夫人の不貞をでっち上げたのだから当然といえた。

 ニーズの実家のボトン家は、逆に爵位の返上が認められなかった。
 タイテーニアへの婚約破棄の慰謝料、シャイクス家への借金の返済、共同事業の正当な報酬の支払い、シャイクス家に対して行っていた詐欺行為の慰謝料、今回の公爵家への慰謝料など、爵位返上だけでは済まない程の金額に膨れ上がった。

 ボトン領の住民達は、他の土地への移住を禁止された。
 殆どの領民達は、ボトン家の悪事を知っていながら加担したからだ。
 そうでなければ、あれ程大掛かりな贋物にせもの作成は出来ない。
 名義だけを貸して、何も作っていない牧場まであった。
 チーズが美味しいと評判の牧場だった。

 正当な理由のある負債ではないので、通常の税金も国に納めなくてはならない。
 何代先まで掛かるのか。
 ボトン領の住民は目の前が真っ暗になった。



「絶対に嫌です!」
 教会で泣き喚いているのは、ニーズの恋人だったパティなど、歴代の恋人達だ。
 そして一人無表情でいるのは、平民になったタバッサ。

「嫌だと言われても王命ですからねぇ。正妻はそちらのタバッサです。貴女達は罪の度合いによって、第二夫人から第六夫人になります。あ、貴女は愛人で良いそうですよ」
 ニーズの歴代の恋人は六人いた。


 恋人時代に貢がれた物の金額や、タイテーニアに対する態度によって地位が変わる。

 愛人で良いと言われた男爵令嬢は、プレゼントの金額は多いものの、段々と酷くなるタイテーニアへのニーズの態度をいさめ、それが原因で別れた令嬢だった。
 タイテーニアに悪かったと謝り反省していたらここには居なかったのだが、そこまででは無かった。
 所詮、婚約者の居る男に手を出す令嬢なのである。

 一応愛人なので、すぐに別れられるし、離婚という瑕疵かしは付かない。
 ただし、真っ当な嫁ぎ先は見つからないだろう。


 第二夫人になる予定の子爵令嬢は、ニーズと一緒になり、タイテーニアをおとし嘲笑あざわらい、楽しんでいた。
 ニーズの方が飽きなければ、別れずにいたはずだ。
 贈り物の金額も、子爵家が納めている税金と変わらないほど高額だった。

 他の令嬢も程度の差こそあれ、どれも似たような性根をしていた。
 パティは期間も短いし、タイテーニアとは顔合わせしかしていないので第六夫人だ。
 それでも愛人になった令嬢と違うのは、ニーズと一緒になりタイテーニアをさげすんでいたところだろう。


「平民女など、伯爵家には入れないだろう!」
 ニーズはタバッサを指差し、王宮から婚姻の手続きに来た文官を怒鳴りつける。
「特例ですからねぇ。そもそも伯爵家が第六夫人まで持てるのも、普通じゃないですからね?いやぁ、羨ましい!」
 全然心のこもっていない台詞を文官は口にした。


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