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プロローグ

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 その日、リセット王国に激震が走った。

 幼い頃に王太子が一目惚れをして婚約を申し込んだ、海外にまでその仲睦まじさが届いている王太子夫妻の正妃が自室の窓から飛び降りたからだ。

 正妃というからには、勿論、側妃も居る。しかし側妃は、結婚してから3年経っても跡取りが生まれなかった為に、やむなく召し上げられた伯爵家の令嬢だった。

 王太子は常に正妃を気遣い、公の場には必ず正妃だけを連れて行った。
 側妃を公務や執務に関わらせる事は無く、あくまでも日陰の存在であり、国民や下位貴族からは同情される存在だった。


 正妃が飛び降りるまでは。


 最初、冷たい石畳の上で正妃の遺体が発見された時、単なる事故だと思われていた。
 王太子と仲が良く、常に表舞台で活躍していた正妃には、死を選ぶ理由が無いからだ。
 しかしその後、驚くほど分厚い遺書が正妃の実家に届き、それが発表された。
 その内容の余りの酷さに、国民は王家への不信感を募らせる結果となった。


 その酷い内容とは……


 王太子との関係は、完全に見せ掛けだけであり、初夜の閨の儀以外では床を一緒にしていない事。その理由は勿論、正妃の不妊を理由に側妃を召し上げる為。

 周りに人が居なければ、王太子は一言も会話をせず、「お前は仕事をする道具だ」「逆らったらお前の瑕疵かしで離縁し、実家も潰してやる」と一方的に脅されていた事。

 公務や面会時に着る豪華なドレス以外はとても質素な服しかなく、服を買う予算は全て側妃が使っていた事。
 宝飾品は、公務の時にだけ事。その為には、地に頭を擦り付けるようにして側妃に頼まなければいけなかったし、借りなければ王太子に「無能」だと責められた事。

 そしてその事実を、他の王族も、王宮内の人間も知っていた事。


 今までの偽りが全て暴露された上に、有能な王太子妃が居なくなった事で、王家や当時の王宮を仕切っていた高位貴族達は窮地に立たされた。
 そしてそれらは代替わりしても改善される事はなく、むしろ悪化した。当然だろう。諸悪の根源の王太子と元側妃の現正妃が、国王と王妃になったのだから。
 問題の国王が即位して程なく王政廃止を掲げた反乱が起き、王家と暴利を貪っていた高位貴族が滅ぼされた。

 正妃を虐げていた王太子が王位を継承し、それが尚更国民の反感を買ったのだ。
 リセット王国が滅亡し、社会主義国へと変化した。

 ……はずだった。



『リセットします』


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