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04:身勝手な……
しおりを挟む第二王子にお茶会をすっぽかされてから、一つだけ良い事があった。
第二王子との定例お茶会が王宮ではなく、侯爵家で行われる事になったのだ。
おそらく第二王子は、自分にすっぽかされたフローレスが黙って待っている姿を皆に見せ、惨めな気持ちにさせたかったのだろう。
しかし1番最初に発見したのが王妃だった為、フローレスを貶める計画は失敗した上に、次からは侯爵家に自分の方から出向かなくてはならなくなった。
「あの女!母上に何を言いやがったんだ!」
第二王子は癇癪を起こし、部屋の中で暴れまわっていた。
この考えの足りない男は、ペアラズール国第二王子で、名前をベリル・ザ・ドム・ペドロ・オベリスクという。
もし第二王子の計画が成功しフローレスが待ちぼうけなのを他の貴族が目撃していたら、下がるのはフローレスの株では無く、間違いなく第二王子の株である。
王宮は許可の無い者は入れないのだから、フローレスが勝手に来て待っているのでは無いとすぐにバレてしまう。
第二王子の婚約者であるフローレスが誰を待っているのかも。
その為に、今後も遅刻や態と行かない事が予想出来た為、人目の無い場所へとお茶会会場が変更されたのだ。
今日も朝から磨き上げられ、綺麗なドレスを着せられたフローレスは、自室で読書に励んでいた。
最近の読書傾向は、王子が婚約者を蔑ろにして浮気をし、婚約者を「悪役令嬢」と呼び婚約破棄をする頭の悪い作品だ。
どんな理由があれ婚約者以外と親しくすればそれは不貞行為だし、相手の有責で婚約破棄は出来ない。
特に「悪役令嬢」の地位が高ければ、ヒロインを虐めようが暗殺しようが、それはヒロインの自業自得である。
特に先日まで読んでいたヒロインが平民の話など、現実なら「私の愛する人を傷付けたお前など、国外追放だ」と言った王子自身が他国に婿に出されるか、蟄居させられるだろう。
国が決めた婚約を、勝手に公の場で破棄宣言する王子など百害あって一利なし、である。
今回読んでいるのは、王子の婚約者である「悪役令嬢」の異母妹がヒロインの話だ。
元平民で天真爛漫なヒロインに、王子が惹かれる話である。
異母姉と婚約者である王子の交流のお茶会に乱入するのを「天真爛漫」で済ませて良いのだろうか?
そんな疑問を持ったところで、使用人が第二王子の来訪を告げに来た。
フローレスは本に栞を挟んで閉じ、溜め息を吐き出してから立ち上がった。
玄関ホールで第二王子を迎えると、不機嫌丸出しで挨拶もしない。
どこの3歳児だよ!と思いつつ、笑顔で応接室へと歩みを進めた。
フローレスと第二王子、侯爵家の使用人と王子の護衛数人で廊下を歩いていると、前の方が騒がしくなってくる。
「王子様が来たんでしょ!?」
淑女らしからぬ大きな声が聞こえてきた。
あぁ、侯爵家にも居たな、3歳児。
フローレスはそう思いながらも、足は止めずに応接室へと向かった。
「フローレスお姉様、私もご一緒して良いでしょう?」
どう見ても普段着ではなく、王子に会う事が前提の服装をしたルロローズが、応接室の前で声を掛けてきた。
断られるなどとは微塵も思っていない。
許可を求めているわけではないから。
第二王子とのお茶会に参加する事は、ルロローズの中では決定事項なのだから。
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