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さぁ、アレの本番です。
第86話:契約書
しおりを挟む「な、何だと!」
青くなったり赤くなったり忙しいですね、バカ様。
「アンタ、なに急に呼び方変えてんのよ。
王太子じゃなくても、王子なんだからね!」
チョコアが振り払われた腕をまた絡める。
バカが腕を抜こうとするが、チョコアが自慢の腕力でそれを許しません。
マジでスゲェな、チョコア。
「なぜ、貴方の母と祖父が私との結婚、後継ぎに拘ったか解ってますか?
公爵家は2年以上断り続けたのに」
私の問いに、バカはフンッとふんぞり返る。
まだ自分の立場をわかっていないらしい。
「それは、建前で断る期間が必要だっただけだろう。
実際には、王家と親戚になりたいお前ん家と、俺と結婚したいお前がゴリ押ししたと聞いたぞ」
誰にだ。ちょっとここに連れて来い。
「だからお前は、軽く押したくらいでわざと階段から落ちたんだろう?
子供ながらそこまでして俺の気を引くとはな」
バカの足元に、氷のナイフが無数に突き刺さった。犯人は私じゃなくて、兄だけどね。
「は、反逆者を捕らえろ!
王族に対して不敬どころじゃないぞ!」
バカが衛兵に命令するが、それを陛下が無言で手を伸ばして制する。
さすがのバカも、何かがおかしいと気付き始めたようだ。
「貴方に王家の血は、一滴も入っていないんですよ、マカルディー様」
私の台詞に、元側妃様が崩れ落ちた。
気丈に頑張っていれば、まだ言い訳できたでしょうに。
それでは認めたも同じですよ?
会場内が静まり返っている。
水を打った様な静けさとは、きっとこういう事を言うのだろう。
あまりの衝撃の事実に誰もが身動ぎ一つしない。できない。
そこへ、颯爽と現れる我が父。
ちょ、美味しいとこ取りしないでよね!
父は、手に特別契約書を持っていた。
丸められた契約書が王家の封蝋で留めてあるものだ。
私とバカの婚約の際に、婚姻契約書とは別に、王家とエルクエール家で交わされたもの。
陛下と父がそれぞれに封蝋に魔力を通す。
それで初めて開ける事のできる契約書。
それだけ重要な書類だという事だ。
「マカルディー・フォン・ティシエール
フォンティーヌ・エルクエール
両名の婚約について、以下の契約を取り交わす。
婚前交渉は行わない事。
他者と不貞を働いた場合、即婚約は解消される事。
両名の結婚について、以下の契約を取り交わす。
マカルディー・フォン・ティシエールが婚外子を儲けた場合、即結婚は破棄される。
ただし、フォンティーヌとの間に第一子が誕生した後であれば、この限りではない」
淡々と読み上げる父。
正直、不貞を働いても証拠がない。
だから胎に子供がいると宣言したのは、何よりの不貞の証拠なのだ。
父がもう一通の契約書を陛下に渡す。
それの封蝋にも陛下が魔力を通す。
そして、ゆっくりと舞台に上がった教会責任者である教皇がそれを受け取った。
あれ?何か私、蚊帳の外になってきた?
まぁ、良いか。
教皇が封蝋に魔力を通し、封を開けた。
「マカルディー・フォン・ティシエールには、現王家の血脈が一切無い事をここに証明する。
もし王座を継ぐのであれば、王家の血脈が濃い家系の令嬢との間に第一子を儲ける事を条件とする。
王家の血を引かない第一子を儲けた場合、相手が高位貴族であれ関係なく、王族から除名となる」
教皇の静かな声が響く。
紙をパラリとめくる音まで聞こえる。
てか、まだ続きがあったんだ。
「マカルディーが除名された場合、母である側妃アメリア・マードレーも即離縁となる。
除名は生まれた時まで遡り、マカルディーはマードレー家の子となり、除名の日までの養育費はマードレー家の負担となる」
あれ?私が思ってたよりも、なんか罰が重い?
だから、側妃は新しいドレスも作れなかったのか!
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