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乙女ゲーム本編突入です。

第80話:嫉妬

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「何で無視するのですか!」
 完全に蚊帳かやの外だったチョコアが叫ぶ。
 この人は大声でなければ話せないのだろうか?
 しかし、どんな心境の変化だ?
 言葉が少し丁寧になったぞ。
 サラがチラリと見て、無視する。
 そりゃそうだ。
 地位的にも、関係的にも、サラから見れば路傍ろぼうの石だ。

「マカルディー殿下。これからもご一緒に過ごされるつもりなら、貴族のルールを教えて差し上げてください」
『甘王公式本』は鳴らないけど、間違いなく手はつけたでしょう?
 側妃は無理でも妾にはできる……かなぁ?
 どうだろう。
 何、眉間に皺寄せてんのよ、バカ殿下。
 平民チョコアのこんな態度が許されるのは、学園の中だけだからね。

「目上の者に対しての挨拶くらいは覚えてくださいね」
 今度は平民チョコアに対して話し掛ける。
 ニッコリと笑顔で。
「え?マカ様の恋人なんだから、私の方が上でしょ?」
 はぁ?馬鹿なの?馬鹿でしょ。馬鹿だったね。
「何を根拠に言っているのか不思議ですが、公爵家である私の方が立場は上ですわね」
 敢えて言わないが、私は婚約者だからどう頑張ってもチョコアが私より上に行く事はない。

「それでは、私達はこれで」
 王族に対する挨拶にしてはおざなりな気もするが、まぁ良いや。
 私の肩を抱きながら、チョコアの横を通り過ぎる時にフンッと胸を張るサラ。
 バカ殿下の視線もサラの爆乳を見てるよ。
 羨ましいだろう。へへ~ん。
 いろんな意味で負けたチョコアは、凄い目で私達を睨んでいた。


「あんな愚民をぶら下げて、嫉妬してもらえるとでも思ってるのかしら?」
 サラが心底呆れた声を出す。
「嫉妬?誰が?」
 いや、マジで。
 バカと馬鹿がくっついたからって、誰が嫉妬するの?
 私は、サラの爆乳になら嫉妬するけどね。
 義姉のがデカイけど、やはり同い年のサラに嫉妬してしまう。

「フィオの会話の相手は胸なの?」
 あまりにもサラの胸を見ていたからか、向かいから歩いて来たシュヴァルツェに笑われた。
 シュヴァルツェの横にいるリュオも顔を背けて肩を震わせている。
 そんなこんなで、嫉妬の話は有耶無耶になってしまった。
 あ、やはり歩いた先にライジ殿下はいなかったよ。



 幸せなはずの昼食の時間が、イラッとする時間に変化した。
 なぜなら、チョコアが食堂の貴族スペースへの入室を再開したからだ。
 勿論平民チョコアだけでは入れないので、バカ殿下が一緒である。
 はい、あ~ん……なんてやってるよ。
 馬鹿か!?
 あ、ミリフィールとルーベンの事ではありません。
 この2人は正式な婚約者だし、見ていて微笑ましいから良いのだ。
 ミリフィール達は2人で幸せそうにしているが、バカ殿下とチョコアは、一口食べる度にこちらをチラチラ確認するんだ。
 根本こんぽんが違う。
 他人に見せる為にイチャイチャするって、楽しいのか?
 ホント馬鹿だな。

 そして罰ゲーム再開。
 いや、実際には罰ゲームではないんだが、私の心情的に罰ゲーム。
「今日のフィオのメニューはチキンソテーなんだね」
 ニッコリ。腹黒殿下の爽やかな笑顔。
 私が一口大に切ると、当たり前のように口を開ける。
 もう抵抗する気もなくなった。
「はい、どうぞ」
 ライジ殿下の口元へ持っていくと、それをパクンと食べる。雛鳥か。
「うん。美味しいな」
 いつも、ライジ殿下が嚥下すると、反対側から呼ばれる。
 そしてやはり当たり前のように目の前にある食物。
「フィオ」
 名前を呼ばれたので、溜息をグッと飲み込んで振り返り、口を開けた。
 酢豚のようなそれは、とても美味しかった。

 さすがにこんな私に同情したのか、サラもライジ殿下に『あ~ん』をするようになった。
 ライジ殿下からの『あ~ん』がないのがせめてもの救いなのか?
 それにしても、食事中ずっとバカ殿下に見られているのが心底鬱陶しい。
 目の前の恋人チョコアに集中しなさいよ。


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