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乙女ゲーム本編突入です。

第69話:ちょっとよろしいでしょうか

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 中庭に着き、水属性の授業へと参加する。
 担当教師に先程の経緯を伝え、連れて来た女生徒達の授業見学権利をもぎ取った。
 今日の水属性授業は、水で形作った物を使い、攻撃するというもの。
 何で今日は攻撃ばかり?

 竜や蛇、魚やなぜか綺麗なお姉さんが空中に浮かんでいる。
 勿論、水で作られた物だ。
 その中で一際目立つのが、リュオの作った龍だ。
 某国民的アニメのオープニングで坊やを乗せていた
 その横では、サラの従兄が小型のリヴァイアサンを作ってる。
 怖いわ、あんた達。

 しかし、和気藹々とした雰囲気の2人。
 昨日今日仲良くなりましたって感じには見えない。
 実は知り合い?
 私の視線に気付いた2人が、バツが悪そうな表情をしたのが見えた。
 いや、別に2人が知り合いなのを隠していても、気にしないけどね。


 ドガアァン!と、何かが爆発するような音が聞こえた。
 皆で何事かと見ると、1人の女生徒がやっちまった…って顔で頭を掻いていた。
「どうした!大丈夫か?」
 教師が慌てて駆け寄る。
「すみません。私は全然大丈夫です」
 ペコリと頭を下げる。
「卵から不死鳥フェニックスが生まれるのを再現しようとして失敗しました」

 はい?
 ちょっと職員室か、もしくは校舎裏に来なさい。
 ……馬鹿者がぁ~!!

「水で作った卵の中に、炎の鳥を作ろうとして、爆発したと?」
 うん。教師もちょっと呆れてる。
「……はい」
 さすがにしょんぼりとした女生徒が頷く。
「卵なら、水じゃなくて、土の方が良かったんじゃない?」
 女生徒の友人がアドバイス。
 そういう問題?
「だって、私、土属性ないもの」
 だから、そういう問題?


 詳しく聞くと、前回の火属性の授業で不死鳥を作ったそうで、予想以上に上手く出来たらしい。
 それで、弟の誕生日に卵から生まれる不死鳥ってのを見せたかったらしい。
 うぅ~ん。思った以上に良い話になり、何となく皆、怒るに怒れなくなってしまった。

「誰かに卵だけ先に作ってもらったらどうだ?」
 他の生徒が提案する。
 ちょ、既に水属性1個も関係なくなってますけど?
 教師を見ると、溜息をいていたが、止める気はないようだ。


 先程の爆発で空いた大穴の底に、土属性持ちの男子生徒が卵を作る。
 先程の女生徒が卵の中に不死鳥を作った。
 しかし、それで終了。
 卵は、男子生徒が手を加えなければ割れなかった。
 割れて、不死鳥が生まれた瞬間は皆から歓声が上がったが、男子生徒有りき、では意味がない。

 他の生徒がまた卵を作る。
 今度は、中に不死鳥を作った瞬間に卵が爆発した。
 周りに土が飛び散る。卵の殻を模してるからか、弾け飛んだカケラは意外と鋭利で壁にトストスと刺さっている。
 穴の中でやってて良かったね。

「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
 右手をそっと上げて、発言権を求める。
 なんか、超大富豪の孫娘が刑事になったドラマみたいだ、と、ちょっと心の中で自分にツッコミを入れる。
「どうしましたか?エルクエール嬢」
 一応授業中だからか、教師が聞いてくる。

「何でそんなに大きな卵なのでしょう?
 弟さんの誕生日は、闘技場か何かでやるのですか?」
 卵の大きさは、私よりも大きい。
 その中に入る不死鳥なんて、羽を広げたら馬よりも大きい。
 公爵家うちの庭でも、そんなサイズの火魔法を使ったら、確実に怒られる。

 皆、担当教師までも目から鱗みたいな表情をしている。
 攻撃魔法の授業中だからか、魔法を制御して小さくするという考えに至らなかったらしい。

 大きな卵だから、当然厚さもある。
 だから、火魔法の熱にも耐えてしまった。
 両手で持てるくらいのサイズの卵に変えたら、中で不死鳥を作った瞬間にヒビが入り始めて、中で羽を広げさせたら、見事に
 どこからともなく、拍手と歓声が広がる。
 なぜか1番感動していたのは、私と一緒にいた初級の3人だった。


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