50 / 113
乙女ゲーム本編突入です。
第50話:コート
しおりを挟むほんのりと青味がかった白のコート。
チョコアには、サイズの合ってないコート。
ん~。言われれば私の髪色に近い色かなぁ。
でも私、今年は義姉からプレゼントされた濃紺のコートを着ております。
え?なぜ濃紺か?
それは、義姉の髪色がそうだからですよ。
昨年は、兄の瞳の色のハスカップゼリーみたいな派手な赤紫でした。
似合ってたから、別に良いけどね。
余談ですが、サラのコートは私と色違いで、同じデザインです。
スタイルが全然違うので、誰も気付いてくれないけどね!
色は去年の私よりも派手な赤。
ラズベリーレッド。
無茶苦茶似合ってるけどね。
「マカ様ぁ、素敵なコートありがとうございますぅ」
鼻にかかった耳障りな声が食堂に響く。
必要以上に声が大きいのは、第一王子からコートをプレゼントされたと皆に自慢してるのだろう。
似合ってないけどね!
そこかしこから、くすくすと笑い声が起こっているけど、チョコアには聞こえていないらしい。
嬉しそうなチョコアと対象的に、バカ殿下は浮かない顔をしている。
サイズの合わないコートをプレゼントしたなんて、恋人として恥ずかしいですよね。
サラは私へのプレゼントだったのでは?と言ってましたが、やはり考えられません。
今まで、それこそクッキー1枚だってくれた事ないんだよ?
ないわ~
「浅黒い肌に白いコートか」
何の感情も含まない声が食堂に響きます。
嘲りも、侮蔑も含まない、ただ事実だけを告げる声。
それなのに、空気が冷えた気がするのはなぜだろう。
「私には無い選択肢だな」
今度は、明らかに馬鹿にしたような響きを含んでいる。
見なくても判る。
しかし、何でここに居るのか不思議だ。
腹黒……もとい、ライジ殿下。
「お、お前か!余計な事をしたのは!」
バカ殿下がライジ殿下を睨んでいます。
こんな所で兄弟喧嘩かよ。
「余計?王宮に『恋人への贈り物だと言うから急いで作った』と届けられたから、お前の侍従にそのように伝えて渡しただけだが?」
あら、ライジ殿下は悪く無いじゃない。
むしろ親切?
そんな事を考えながら2人を見ていたら、バカ殿下と目が合った。
ヤベェ、嫌な予感しかしない。
「フィオ!お前からも何かないのか!」
はぁ!?
形だけのとは言え、婚約者が別の女にプレゼントを贈ってるのに何を言えと?
「そうですわね。とりあえず、愛称呼びはいい加減やめてくださいませ。前もお伝えしましたが、許可しておりません。
それとも、公爵家から正式に抗議しなければいけませんか?」
普通ならしないだろうが、うちなら間違いなくするよ!エルクエール家全員がバカ殿下の事認めてないからね!
「ち、違う!コートの事だ!」
はぁ……どうでも良いわ、そんなコート。
「浅慮でしたわね、マカルディー殿下」
まず頑丈女のサイズをちゃんと把握してようよ。
女の子に夢見過ぎなんだよ。
多分、このくらい華奢なはず~とかで注文したんだろ?馬鹿だから。
「せんりょだと?」
あ、意味解ってないな、発音ひらがなだし。
「女性の服のサイズを間違うなど、贈り物の意味がありませんわ。あのような肩も合わない服など、王室御用達仕立て屋の名が泣きます」
「そ、それは……」
「ドレスじゃないから身体にフィットしないし、と適当に注文したのでしょうけど、チョコア様の体型が華奢に見えますか?
華奢なのは胸くらいで、腕など私の倍はありますわよ」
あ、しまった。つい本音が。
バカ殿下と一緒にチョコアをディスっちゃったよ。
余談だが、あのコートが高級品だと見抜いたサラは、さすがですな。私なんて、吊るしかと思ったわ。
「自分が貰えなかったからって、馬鹿にしないで!」
チョコアが小さいファイティングポーズで文句を言います。
可愛いと思ってやってるんだろうけど、貴女の体型でそのパツパツコート着てやると、普通にファイティングポーズよ?
なんて思って見てたら、ビリリと大きな音が……コートの腕の付け根の背中側が見事に破けました。
あんな所が切れるって初めて見たわ。
31
お気に入りに追加
1,904
あなたにおすすめの小説
どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました
小倉みち
恋愛
7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。
前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。
唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。
そして――。
この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。
この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。
しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。
それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。
しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。
レティシアは考えた。
どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。
――ということは。
これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。
私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
チート過ぎるご令嬢、国外追放される
舘野寧依
恋愛
わたしはルーシエ・ローゼス公爵令嬢。
舞踏会の場で、男爵令嬢を虐めた罪とかで王太子様に婚約破棄、国外追放を命じられました。
国外追放されても別に困りませんし、この方と今後関わらなくてもいいのは嬉しい限りです! 喜んで国外追放されましょう。
……ですが、わたしの周りの方達はそうは取らなかったようで……。どうか皆様穏便にお願い致します。
悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~
飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』 ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。
※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。
※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。
※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】悪女扱いした上に婚約破棄したいですって?
冬月光輝
恋愛
私ことアレクトロン皇国の公爵令嬢、グレイス=アルティメシアは婚約者であるグラインシュバイツ皇太子殿下に呼び出され、平民の中で【聖女】と呼ばれているクラリスという女性との「真実の愛」について長々と聞かされた挙句、婚約破棄を迫られました。
この国では有責側から婚約破棄することが出来ないと理性的に話をしましたが、頭がお花畑の皇太子は激高し、私を悪女扱いして制裁を加えると宣い、あげく暴力を奮ってきたのです。
この瞬間、私は決意しました。必ずや強い女になり、この男にどちらが制裁を受ける側なのか教えようということを――。
一人娘の私は今まで自由に生きたいという感情を殺して家のために、良い縁談を得る為にひたすら努力をして生きていました。
それが無駄に終わった今日からは自分の為に戦いましょう。どちらかが灰になるまで――。
しかし、頭の悪い皇太子はともかく誰からも愛され、都合の良い展開に持っていく、まるで【物語のヒロイン】のような体質をもったクラリスは思った以上の強敵だったのです。
「お前のような奴とは結婚できない」と婚約破棄されたので飛び降りましたが、国を救った英雄に求婚されました
平山和人
恋愛
王立学園の卒業パーティーで婚約者であるラインハルト侯爵に婚約破棄を告げられたフィーナ。
愛する人に裏切られた絶望から、塔から飛び降りる。しかし、フィーナが目を覚ますと、そこは知らない部屋。「ここは……」と呟くと、知らない男性から声をかけられる。彼はフィーナが飛び降りた塔の持ち主である伯爵で、フィーナは彼に助けられたのだった。
伯爵はフィーナに、自分と婚約してほしいと告げる。しかし、フィーナはラインハルトとの婚約が破棄されたことで絶望し、生きる気力を失っていた。「ならば俺がお前を癒そう。お前が幸せでいられるよう、俺がお前を守ってみせる」とフィーナを励ます伯爵。フィーナはそんな伯爵の優しさに触れ、やがて二人は惹かれあうようになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる