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乙女ゲーム本編突入です。
第36話:青い指輪
しおりを挟む教室内から、物音が消えました。
皆鬼婆ぁから目が離せません。
もうこのクラスの生徒でもないのに、ズンズンと教室内に入って来て、バカ殿下の腕を掴みます。
そして瞳を潤ませながら、バカ殿下を上目遣いで見ます。
でも鬼の形相の後だから、全然可愛くないです。残念。
「マカ様。家族が入学祝にくれた指輪が盗まれました」
平民の台詞に、皆の心の中の声は同じだったと思う。
『平民が買うような指輪を盗むわけないじゃん』
申し訳ないけど、その無くなった指輪より、サラの髪飾りに付いている宝石一個の方が何倍も高いわよ。
「ど、どんな指輪なんだ?」
お、バカ殿下が一応話を聞くみたいですよ?
「青い大きな石がはまってる指輪です。
あ!あんな感じです!」
チョコアが指差したのは、私の指にはまっている氷の魔石付きの指輪でした。
……ちょっと待てや、クソ女。
バカ殿下がこちらに歩いて来ます。
まさか、チョコアの戯言を信じませんよね?
いくら馬鹿でも、まさかね?
「フィオ、その指輪はどうしたんだ?」
はぁ?何言ってんだ?マジで死んで良いわ、コイツ。相変わらず愛称で呼ぶし。
「答える義務はありませんわ、マカルディー殿下」
一目見て判るだろう?平民に買えるレベルの指輪じゃないって。
「いいから!誰に貰ったんだ!イライジャか!?」
はぁ?マジ馬鹿じゃないの?
何でライジ殿下にプレゼントされなきゃいけないのよ。
「ご自分で確認されたらいかがですか?そこにライジ殿下もいらっしゃいますし」
名指しされたライジ殿下は、意地悪くニヤリと笑う。
あれ?嫌な予感。
「フィオの指輪の事は今は関係ないだろう?」
うわぉ。ライジ殿下、否定も肯定もしませんでしたよ。
何、その思わせぶりな台詞。
いや、肯定されても困るんだけどさ。
「そうですよ~。マカ様~、あれ、私の指輪にすごく似てますよ~」
教室の前の席から一番後ろの席に座る私の手元の指輪が判別できるんだ。
ふ~ん。凄い視力良いんだね。
「チョコア様、貴女の属性は何だったかしら?」
自分で思ってたより、遥かに低い声が出た。
それはそうだろう。
これは兄夫婦がプレゼントしてくれた大切な指輪だ。
教室内の温度が下がろうが知ったこっちゃない。
今回は怒りを鎮める気はない。
「雷ですけど、何か?それより寒いんですけど!」
空気読め、チョコア。そもそもお前のせいだろ。まぁ、空気を読んでも許す気はないけどな。
「雷属性の貴女が氷属性の指輪を持っていたのですか?
言っておきますが、このレベルの魔石は普通の宝石より高いですわよ」
私の魔力が通り青く輝く氷の魔石がよく見えるように、腕を前に差し出した。
「おい、何があったんだ?窓が凍ってるぞ?寒いな」
あら、お休みかと思ってましたが、出勤なさったんですね、ビゼタール先生。
「君はこのクラスじゃないだろう。自分のクラスへ帰りたまえ」
チョコアに気付いたビゼタールは、汚いものでも見るようにチョコアを見る。
実際、制服は薄汚れて汚いけどね。
洗い替えを含め3枚支給されてるのに、何であんなに汚れてるのか不思議。
「そんな事どうでもいいんです!」
いや、良くないだろ。帰れ。
「私の指輪が盗まれて、あの人がそれを持ってるんです!」
え?まだ言い張るの?
てか、いつの間にアンタの指輪に確定したんだよ。
「私が氷属性を持ってなかったからわからなかっただけで、私の指輪の宝石が氷の魔石じゃなかったとは言い切れません!」
はぁ?人の話聞いてるの?
普通の宝石より高いって言っただろうが!!
「平民の方がこのレベルの魔石を買うなら、親戚の若い美人の女性を5人は娼館に売らないとですわね。入学祝いに親戚を売ってくださるなんて、なんて素敵なご両親」
サラが私の指輪を見ながら、大袈裟に驚いてみせる。
「あら、平民でしょう?10人は必要ですわ。貴族並みの教育を受けていたとして5人ですわよ。随分と親戚が多いようですわね」
ミリフィールもサラに同調する。
絶対に、パン屋を営んでいるチョコアの両親ではプレゼントできないレベルの指輪である事を強調しているのだ。
「ん?青いガラス玉の付いた指輪なら、落とし物で届いていたな。後で事務所に行ってみなさい。
いや、ゴミだと思って捨てられる可能性もあるから、すぐに行った方が良いかもな」
ビゼタールがチョコアを追い払うようにシッシッと手を振る。
あら、勘違い女さん。
宝石じゃなくてガラス玉だそうよ。
あらら、顔真っ赤にして出て行ったわ。
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