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乙女ゲーム本編突入です。

第30話:色々食べたいの

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 私達が了承の意を示す前に、ライジ殿下の従者数人が3人分の椅子を持って来て私達の間に配置していく。
 私とサラの間にライジ殿下。
 ミリフィールとジェラールの間にミリフィールの新しい婚約者。
 サラとジェラールの間に、初めて会うこれまたイケメンな人が座った。

 この時間、私とサラの間に立っていたバカ殿下は、慇懃無礼という言葉がピッタリの対応をされていた。
 退けられ、居た場所には椅子が置かれ、そこに第二王子が座る。第一王子としての威厳なんてあったもんじゃない。
 見えないけど、私の後ろに立っている気配を感じる。

「殿下、俺達も飯食わないと時間なくなる」
 アーモディがバカ殿下を呼びに来る。
「俺もここで……」
「マカ様ぁ、向こうに席取りましたから、早く行きましょお」
 バカ殿下の言葉を遮り、その腕を掴んだチョコアがグイグイと引っ張る。
 不敬なんてもんじゃない平民チョコアの行動に、ライジ殿下が振り払うように手を払う。
 それこそ、羽虫を払うかのように。

 羽虫チョコアは、従者達により食堂から排出された。
「何で私が」とか「学園内は平等でしょ」とか聞こえたが、第二王子に逆らえる強者はここにはいないだろう。
 そう。たとえ第一王子でもね。

 従者達は、バカ殿下とアーモディはさすがに追い出さず、カーシューのいるテーブルへと誘導した。
 チョコアを追いかけるも、ここにとどまり食事するも、自由だという事だろう。
 単独にされたチョコアは、もうこの貴族スペースには入って来られない。

 カーシューは追いかけないと決めているようで、席に座りメニューを眺めている。
 この食堂は、学食だが食券制度などではもちろん無く、レストランと言われた方が前世日本人にはしっくりくる。
 しかも、貴族スペースは『高級』が付く。
 今日のランチは、鴨肉がおすすめらしいよ!
 私はガッツリ豚肉料理にしたけどね。


 いつもの調子で、4人全員違う料理を選択していた。
 なぜかというと実は、食堂の端に陣取り、こっそり「一口ちょうだ~い」をやっていた。マナー違反だけど、学食だし!
 普通のご令嬢なら絶対にならないが、転生者2人がやっていたら、いつの間にか4人でやるようになっていた。
 でも今日はライジ殿下達が一緒なので、さすがに無理だろう。
 サラの魚のフライも美味しそうだなぁ……クスン。

 私がチラチラ皆の料理を見ているからか、ライジ殿下が首を傾げる。
「全員違うのを頼むとは、珍しいな。
 そんなに好みが分かれているのかい?」
 笑って誤魔化そうとした私の気持ちは通じず、サラが馬鹿正直に「皆で一口ずつ交換するんですのよ」なんて答えてしまっていた。
 サラの馬鹿ぁ!

「面白い事を考えるな」
 ライジ殿下は、驚いた顔をしながらも、呆れるとかさげすむなどの様子がないのが救い?
「最初はフィオとミリッフェだけで、交換してましたの。
 でも、色々食べたいのは私達も同じでございましょう?
 学園内の食堂という特殊な環境ですし、ここだけ限定で皆で交換する事に決めましたのよ」
 と言う笑い声が付きそうなくらい丁寧な言葉で説明してるけど、内容はクダラナイ事よ、サラ。

「そうなのですか?ミリフィール嬢」
 新婚約者に質問されたミリフィールは、頬を痙攣ひきつらせながらも笑顔で頷く。
 あそこまで事細かに説明されたら誤魔化しようがないよね、うん。

「それなら、これも食べるかい?」
 ライジ殿下のお言葉。
 そして、私の目の前には一口大の、多分牛肉のステーキ。
 確かにコレは誰も頼んでない。
 けど、そういう問題じゃなくて……。

 何でフォークに刺さった肉が目の前にあるのかな?
 これはもしかして、あ~んってヤツかな?

 さすがの私達でも、皿の上のやり取りでしたけど!?


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