30 / 113
乙女ゲーム本編突入です。
第30話:色々食べたいの
しおりを挟む私達が了承の意を示す前に、ライジ殿下の従者数人が3人分の椅子を持って来て私達の間に配置していく。
私とサラの間にライジ殿下。
ミリフィールとジェラールの間にミリフィールの新しい婚約者。
サラとジェラールの間に、初めて会うこれまたイケメンな人が座った。
この時間、私とサラの間に立っていたバカ殿下は、慇懃無礼という言葉がピッタリの対応をされていた。
退けられ、居た場所には椅子が置かれ、そこに第二王子が座る。第一王子としての威厳なんてあったもんじゃない。
見えないけど、私の後ろに立っている気配を感じる。
「殿下、俺達も飯食わないと時間なくなる」
アーモディがバカ殿下を呼びに来る。
「俺もここで……」
「マカ様ぁ、向こうに席取りましたから、早く行きましょお」
バカ殿下の言葉を遮り、その腕を掴んだチョコアがグイグイと引っ張る。
不敬なんてもんじゃない平民の行動に、ライジ殿下が振り払うように手を払う。
それこそ、羽虫を払うかのように。
羽虫は、従者達により食堂から排出された。
「何で私が」とか「学園内は平等でしょ」とか聞こえたが、第二王子に逆らえる強者はここにはいないだろう。
そう。たとえ第一王子様でもね。
従者達は、バカ殿下とアーモディはさすがに追い出さず、カーシューのいるテーブルへと誘導した。
チョコアを追いかけるも、ここに留まり食事するも、自由だという事だろう。
単独にされたチョコアは、もうこの貴族スペースには入って来られない。
カーシューは追いかけないと決めているようで、席に座りメニューを眺めている。
この食堂は、学食だが食券制度などではもちろん無く、レストランと言われた方が前世日本人にはしっくりくる。
しかも、貴族スペースは『高級』が付く。
今日のランチは、鴨肉がおすすめらしいよ!
私はガッツリ豚肉料理にしたけどね。
いつもの調子で、4人全員違う料理を選択していた。
なぜかというと実は、食堂の端に陣取り、こっそり「一口ちょうだ~い」をやっていた。マナー違反だけど、学食だし!
普通のご令嬢なら絶対にならないが、転生者2人がやっていたら、いつの間にか4人でやるようになっていた。
でも今日はライジ殿下達が一緒なので、さすがに無理だろう。
サラの魚のフライも美味しそうだなぁ……クスン。
私がチラチラ皆の料理を見ているからか、ライジ殿下が首を傾げる。
「全員違うのを頼むとは、珍しいな。
そんなに好みが分かれているのかい?」
笑って誤魔化そうとした私の気持ちは通じず、サラが馬鹿正直に「皆で一口ずつ交換するんですのよ」なんて答えてしまっていた。
サラの馬鹿ぁ!
「面白い事を考えるな」
ライジ殿下は、驚いた顔をしながらも、呆れるとか蔑むなどの様子がないのが救い?
「最初はフィオとミリッフェだけで、交換してましたの。
でも、色々食べたいのは私達も同じでございましょう?
学園内の食堂という特殊な環境ですし、ここだけ限定で皆で交換する事に決めましたのよ」
おほほと言う笑い声が付きそうなくらい丁寧な言葉で説明してるけど、内容はクダラナイ事よ、サラ。
「そうなのですか?ミリフィール嬢」
新婚約者に質問されたミリフィールは、頬を痙攣らせながらも笑顔で頷く。
あそこまで事細かに説明されたら誤魔化しようがないよね、うん。
「それなら、これも食べるかい?」
ライジ殿下のお言葉。
そして、私の目の前には一口大の、多分牛肉のステーキ。
確かにコレは誰も頼んでない。
けど、そういう問題じゃなくて……。
何でフォークに刺さった肉が目の前にあるのかな?
これはもしかして、あ~んってヤツかな?
さすがの私達でも、皿の上のやり取りでしたけど!?
33
お気に入りに追加
1,905
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた
咲桜りおな
恋愛
サズレア王国第二王子のクリス殿下から婚約解消をされたアリエッタ・ネリネは、前世の記憶持ちの侯爵令嬢。王子の婚約者で侯爵令嬢……という自身の状況からここが乙女ゲームか小説の中で、悪役令嬢に転生したのかと思ったけど、どうやらヒロインも見当たらないし違ったみたい。
好きでも嫌いでも無かった第二王子との婚約も破棄されて、面倒な王子妃にならなくて済んだと喜ぶアリエッタ。我が侯爵家もお姉様が婿養子を貰って継ぐ事は決まっている。本来なら新たに婚約者を用意されてしまうところだが、傷心の振り(?)をしたら暫くは自由にして良いと許可を貰っちゃった。
それならと侯爵家の事業の手伝いと称して前世で好きだった料理をしたくて、王都で小さな定食屋をオープンしてみたら何故か初日から第一王子が来客? お店も大繁盛で、いつの間にか元婚約者だった第二王子まで来る様になっちゃった。まさかの王家御用達のお店になりそうで、ちょっと困ってます。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
※料理に関しては家庭料理を作るのが好きな素人ですので、厳しい突っ込みはご遠慮いただけると助かります。
そしてイチャラブが甘いです。砂糖吐くというより、砂糖垂れ流しです(笑)
本編は完結しています。時々、番外編を追加更新あり。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢の正体と真相
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
公爵令嬢アデライードは王宮の舞踏会で、男爵令嬢アネットを虐めた罪を断罪され、婚約者である王太子に婚約を破棄されてしまう。ところがアデライードに悲しんだ様子はなく……?
※「婚約破棄の結末と真相」からタイトル変更しました
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~
Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。
その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。
そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた──
──はずだった。
目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた!
しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。
そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。
もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは?
その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー……
4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。
そして時戻りに隠された秘密とは……
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
【完結】一夜を共にしたからって結婚なんかしませんから!
灰銀猫
恋愛
多額の持参金が必要な結婚を早々に諦め、王宮文官になる道を選んだ貧乏伯爵家のエリアーヌ。男尊女卑著しいブラック職場で必死に頑張るも、四年目に第一騎士団に異動になってしまう。しかも配属先は学園時代に天敵認定した男の専属文官だった。
ある晩、残業のお礼にと高級酒を振舞われ、気が付くと見知らぬベッドの上に裸の天敵と自分がいた。天敵男は何故か求婚してくるが、相手は王女と婚約するとの噂もあり、エリアーヌは求婚を固辞するのだが…
実家を助けるために必死で働く貧乏文官令嬢と、イケメンで有能で王太子の影も務める騎士副団長との、甘くない攻防(になる予定)
R15は保険です。タイトルはアレですが、直接的な表現はありません。
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる