29 / 113
乙女ゲーム本編突入です。
第29話:羽虫
しおりを挟む伯爵家を出されて、子爵家に戻ったカーシューだが、王子のとりまきはクビにならなかったようだ。
まぁ、幼馴染みだから、その辺は立場関係ないのかな。
第二王子のライジ殿下ならバッサリいきそうだけどね。あの人はホント人の上に立つ性格だよ。
いや、そもそもあんな馬鹿を近くに置かないか。宰相の実子でもなく、すげ替えの効く馬鹿なんて、きっと利用価値無い。
ライジ殿下は、惚れ惚れするほど打算で動く人だからな。
伯爵家には、他の分家から新しいのが来たよ。
なんと、既に特級にいた人でした。しかもライジ殿下のとりまき。
えぇっと、これって偶然!?
違うよね……多分。
ミリフィールは、「イケメン度が上がった!」と喜んでいた。
うん。それは認める。
いつものように食堂の貴族スペース<伯爵家以上の人がいないと入れないスペース>で4人で昼食を摂っていると、手元が急に暗くなった。
何事かと自分の横を見ると、なぜかチョコアが一人で立っていた。
「何で婚約破棄したんですか!?」
えぇぇぇええぇええ!?
何でお前がそんな事言ってくるんだよ。
そもそもお前が原因だろうが。
「カシィ様の何が気に食わなかったの?
私に優しいところ?単なる嫉妬じゃない!」
お前、愛称呼びするなって言われてなかったか?
しかしヒロインってこんな好戦的な性格なんだっけ?
それに平民にしても馬鹿すぎない?嫉妬で婚約破棄なんて、貴族がするかよ。マジで馬鹿。
いろんな疑問符が頭に浮かぶが、敢えて口には出さない。
この場合の正しい対処は、彼女はいないものとする事。
すぐに警備員が来て、彼女を排斥するはずだから。
しかし来たのは、警備員ではなく、バカ殿下達だった。
ミリフィールの視線が怖い。
射殺しそうな目でカーシューを睨んでいる。
「チョコア嬢、ビシスコーディ嬢は何も間違っていない。
さぁ、行きますよ」
冷静な声でカーシューが誤爆娘を諭す。
これが本来の彼なのかもしれない。
バカ殿下に振り回されず、ヒロインに惑わされなければ、ミリフィールの伴侶になり、良い宰相になれたかもしれないのに。
馬鹿だなぁ。マジで。
私との初対面の時に、ちゃんと自己紹介しておくだけでも、何か違ったかもしれないのに。
バカ殿下に何か言われてたんだろうけどさ。
しつこいようだが、馬鹿だな。
「おい、お前」
バカ殿下が今までチョコアがいた所に立つ。そう、私の横だ。
お前なんて名前の者はいないので、誰も返事をしない。
更に大声を出そうと空気をヒュッと吸い込む音がしたが、その声を発する事はなかった。
第一王子の言葉を遮る事のできる数少ない立場の人間がいるのだよ、この学園には。
「フィオ、サラ、何かあったのかい?」
はい!ここで第二王子のライジ殿下の登場です。
「いえ、ライジ殿下。何やら勘違いした羽虫が紛れ込んだようですわ」
サラの席の隣に立つライジ殿下に微笑んで見せる。
「はむ……!?」
私としてはチョコアの事を言ったつもりだったんだけど、隣に立っている人は自分の事だと思ったようです。
敢えて否定はしないでおこう。
「羽虫がいるような所では食も進まないだろう?私の部屋に来るかい?」
暗に王族特別室に呼ばれましたよ。てか、私の部屋なんだね。
視界の隅でミリフィールとジェラールが小さく首を横に振るのが見える。
気を付けて!この王子様、目敏いわよ。
「お前だけの部屋じゃないだろう!」
お、バカ殿下も気付いたね。
でもそんなバカ殿下の台詞は、華麗に無視された。
無視じゃないか。ライジ殿下の綺麗な赤い瞳が蔑みの視線をチラリと向ける。
それだけで、バカ殿下は黙った。
「食事途中で立つのはマナーに反するか。
それなら、私達もここで一緒に食べても良いかな?」
それなりの大きさのテーブルに4人で座ってるから座れない事はないだろうけど……。
それだと最初の趣旨からはズレるんだけど、そこは気にしないのね、ライジ殿下。
35
お気に入りに追加
1,904
あなたにおすすめの小説
どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました
小倉みち
恋愛
7歳の誕生日、突然雷に打たれ、そのショックで前世を思い出した公爵令嬢のレティシア。
前世では夥しいほどの仕事に追われる社畜だった彼女。
唯一の楽しみだった乙女ゲームの新作を発売日当日に買いに行こうとしたその日、交通事故で命を落としたこと。
そして――。
この世界が、その乙女ゲームの設定とそっくりそのままであり、自分自身が悪役令嬢であるレティシアに転生してしまったことを。
この悪役令嬢、自分に関心のない家族を振り向かせるために、死に物狂いで努力し、第一王子の婚約者という地位を勝ち取った。
しかしその第一王子の心がぽっと出の主人公に奪われ、嫉妬に狂い主人公に毒を盛る。
それがバレてしまい、最終的に死刑に処される役となっている。
しかも、第一王子ではなくどの攻略対象ルートでも、必ず主人公を虐め、処刑されてしまう噛ませ犬的キャラクター。
レティシアは考えた。
どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、最終的に自分は死んでしまう。
――ということは。
これから先どんな努力もせず、ただの馬鹿な一般令嬢として生きれば、一切攻略対象と関わらなければ、そもそもその土俵に乗ることさえしなければ。
私はこの恐ろしい世界で、生き残ることが出来るのではないだろうか。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
チート過ぎるご令嬢、国外追放される
舘野寧依
恋愛
わたしはルーシエ・ローゼス公爵令嬢。
舞踏会の場で、男爵令嬢を虐めた罪とかで王太子様に婚約破棄、国外追放を命じられました。
国外追放されても別に困りませんし、この方と今後関わらなくてもいいのは嬉しい限りです! 喜んで国外追放されましょう。
……ですが、わたしの周りの方達はそうは取らなかったようで……。どうか皆様穏便にお願い致します。
悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
ヒロインに悪役令嬢呼ばわりされた聖女は、婚約破棄を喜ぶ ~婚約破棄後の人生、貴方に出会えて幸せです!~
飛鳥井 真理
恋愛
それは、第一王子ロバートとの正式な婚約式の前夜に行われた舞踏会でのこと。公爵令嬢アンドレアは、その華やかな祝いの場で王子から一方的に婚約を解消すると告げられてしまう……。しかし婚約破棄後の彼女には、思っても見なかった幸運が次々と訪れることになるのだった……。 『婚約破棄後の人生……貴方に出会て幸せです!』 ※溺愛要素は後半の、第62話目辺りからになります。
※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。
※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。よろしくお願い致します。
※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】悪女扱いした上に婚約破棄したいですって?
冬月光輝
恋愛
私ことアレクトロン皇国の公爵令嬢、グレイス=アルティメシアは婚約者であるグラインシュバイツ皇太子殿下に呼び出され、平民の中で【聖女】と呼ばれているクラリスという女性との「真実の愛」について長々と聞かされた挙句、婚約破棄を迫られました。
この国では有責側から婚約破棄することが出来ないと理性的に話をしましたが、頭がお花畑の皇太子は激高し、私を悪女扱いして制裁を加えると宣い、あげく暴力を奮ってきたのです。
この瞬間、私は決意しました。必ずや強い女になり、この男にどちらが制裁を受ける側なのか教えようということを――。
一人娘の私は今まで自由に生きたいという感情を殺して家のために、良い縁談を得る為にひたすら努力をして生きていました。
それが無駄に終わった今日からは自分の為に戦いましょう。どちらかが灰になるまで――。
しかし、頭の悪い皇太子はともかく誰からも愛され、都合の良い展開に持っていく、まるで【物語のヒロイン】のような体質をもったクラリスは思った以上の強敵だったのです。
「お前のような奴とは結婚できない」と婚約破棄されたので飛び降りましたが、国を救った英雄に求婚されました
平山和人
恋愛
王立学園の卒業パーティーで婚約者であるラインハルト侯爵に婚約破棄を告げられたフィーナ。
愛する人に裏切られた絶望から、塔から飛び降りる。しかし、フィーナが目を覚ますと、そこは知らない部屋。「ここは……」と呟くと、知らない男性から声をかけられる。彼はフィーナが飛び降りた塔の持ち主である伯爵で、フィーナは彼に助けられたのだった。
伯爵はフィーナに、自分と婚約してほしいと告げる。しかし、フィーナはラインハルトとの婚約が破棄されたことで絶望し、生きる気力を失っていた。「ならば俺がお前を癒そう。お前が幸せでいられるよう、俺がお前を守ってみせる」とフィーナを励ます伯爵。フィーナはそんな伯爵の優しさに触れ、やがて二人は惹かれあうようになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる