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乙女ゲーム本編突入です。

第21話:とりまき、その1

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 思わず鳩が豆鉄砲な顔で見上げてしまっても、これはしょうがない案件だよね?
 固まっていると、侯爵家令嬢が優雅に礼をする。
 それに気付いたサラが声を掛けた。
「あら、貴女は?」
 ハッと我にかえる。私から声を掛けないと、相手は何も出来ないんだった。
 こちらの方が立場が上だから。

「初めてお目にかかります。ビシスコーディ侯爵家三女ミリフィールと申します」
 彼女の視線がチラリと『甘王公式本』を見る。
「カーシュー・ブラウウェル様の婚約者でございます」
 バカ殿下のとりまきその1の豆の婚約者!シフォンティーヌのとりまきその1ね。
 豆の名前を意外なところから知りました。

 サラの視線が彼女に向いてるうちに、急いでページをめくる。
 本が見えているミリフィールには、奇行には見えないだろう。
 あった。


名前:ミルフィー・ビスコーティー
爵位:侯爵家の三女
髪色:カラメルブラウン
瞳 :ピスタチオのような緑
属性:火
※カシュールの婚約者。
シフォンティーヌのとりまきで、いつも一緒にいる。


 そのイラストがドリルのような巻き髪に厚化粧で、吹き出しそうになった。勿論、口は生肉を食ったかのように真っ赤だ。
 しかし、目の前の彼女はゆるふわオサレ女子。
 同一人物には見えないわ。
 二次元と三次元の差があるにしてもね。

 私とサラも略式の挨拶を返して、とりあえずその場は終わった。
 これで「知り合い」になったので、彼女の方からも私達に声を掛ける事ができるようになった。
 そして、今の私がやる事はひとつ。
 次の休みに、ミリフィール嬢をお家に招待よ!


 心の中で小さなガッツポーズを取っていると、サロンの扉が乱暴に開かれた。
 開けたのは、アーモンド。
 って、え?馬鹿なの?
 正式名アーモディ・クラフィスは、しつこいようだが騎士爵だ。父は騎士団長だから、次代まで位なら継承できるかもしれないが、基本一代限りの言うなれば準貴族。

 続いて入って来たのは、話題(?)のカーシュー・ブラウウェル。
 実は彼の家は伯爵家。
 宰相の息子だろうが、この部屋に入る権利はない。

 そして第一王子であるバカ殿下が入って来る。
 立場的には入っても良いけど、王族用特別室に行けよ。そこなら、三馬鹿揃って入れるから……
 なんて思っていたら、更なる馬鹿が増えた。

 学園の説明聞いてないの?
 PPhサプリ娘チョコアが3人に続いて入って来た。
 サロンは、侯爵以上って説明受けるはずよね?ここは、友人だろうが入れてはいけないのよ。

 友人で集まりたければ、食堂の貴族スペースに行くのが常識だ。伯爵以上の地位の生徒がいれば、それこそ平民だろうが貴族スペースに入れる。
 王子の外聞が悪いと言うなら、それこそ王族特別室に行けよ。
 なんでここに来た。


「カーシュー様。ワタクシへの嫌がらせなら、充分でございます。
 友人の前でこれ以上なく恥ずかしい思いをいたしました」
 おぉう。先程のミリフィール嬢が自分の婚約者に言外に出て行けと言っております。
 これは、私も行かなければいけないですね~。

「マカ殿下。ここは侯爵家からの出入りになりますわ。
 お友達とご一緒したければ、王族特別室に行かれたらいかがですか?」
「お前は!わざわざ来てやったのに、出て行けと言うのか!」
 はい。そう言っております。と、笑顔で応えてやる。口には出せないからな!
 その前に、来てやったって何だ?呼んでねーよ。

「あの、マカ様。私、どこでも良いです。
 その王族特別室に行きましょう?」
 チョコア、驚くほどの爆弾発言。
 第一王子の腕につかまり、小首を傾げながら可愛く言ってるけど、ありえないからね!?
 貴女が行きましょうって促せるほど、誰でも行って良い部屋じゃないのよ?
 むしろ本来貴女は遠慮すべき部屋よ。

 もしかして、この子も転生者?

 胸の前に不自然じゃない程度に手を組み、一度は仕舞った『甘王公式本』を表紙が相手に見えるようにして持つ。
 隣のミリフィールが小さく吹き出していたが、目の前のチョコアは無反応。

 え……この子、マジで素でこれなの?

 そっと隣のミリフィールを見ると、彼女が驚いた表情で私を見て小さく頷く。
 多分、私も同じ表情をしているだろう。


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