上 下
505 / 506
行きたい所へ行く!それが冒険。多分

第505話:騙されるな!

しおりを挟む



 今回の目的である、死蔵品デスストックになっていた食材は処ぶんんん!ゲフンゲフン!整理整頓有効活用出来たし、美味しいものは食べたし、充実した旅でした!
 まだ街中を回るつもりではいるが、とりあえずはここで同盟等も解除して、冒険終了で良いだろう。
 非戦闘員も転移陣が使えるようになれば、一人になっても問題無いはずだ。

 盛り上がる店内を見ながら、ひとり悦に入っていた俺に、レイが身を寄せてくる。
 内緒話をする為だろうが、現実リアルだったらちょっと引く位の距離感。
 綺麗な顔が近付いて来て、息が掛かるほどの距離で微笑まれる。
 酔ってるな、コイツ。

「それで、『魔動物街』へはいつ行きますか?」
 女性達を腰砕けにしそうな熱い吐息で耳元で囁かれたのは、欲望に忠実な言葉だった。
「いや、勝手に行けよ」
 素直な返事を返したら、泣きそうな顔をされた。
 周りも固まっている。

 え?なぜ?
 別に非戦闘員ではないし、しかも一度行っているから転移陣使えるし、勝手に行けるだろう?

「今のは酷い」
 咲樹に素で言われた。
 普段あまりレイとは絡まない咲樹に言われるとは思わなかったな。
「レイはヴィンと一緒に~、もふもふを堪能したかったんじゃないの~?」
 残念なものを見る目を止めろ、オーべ。
 素面しらふな人間のツッコミが1番堪える。あ、人間ヒューマンじゃなくてエルフか。


<しょうがないから、我が一緒に行ってやろう>
 リルが子狼サイズになり、レイの膝に乗る。
 いや、他の街ならいざ知らず『魔動物街』は、従魔は従魔術師テイマーが一緒でないと入れないぞ。

「ありがとうございます」
 レイが膝上のリルを撫でながら、どこか淋しそうに笑う。
 騙されるな、皆。これは演技だ。
 この少し人の罪悪感をくすぐる表情は、レイが自分に有利に事を進めたい時に使う常套手段だ。

 しかし耐性の有る俺や悪友達はともかく、周りは簡単に騙されるわけで……。

「何で一緒に行かんへんの?」
 最初にコロリと転がされたのは、1番耐性の無いタコ焼き屋のお姉さんだった。
 態々わざわざ隣のテーブルから話し掛けてくる。

「むしろ、なぜ一緒に行く必要が?」
 俺の言葉に、お姉さんだけでなく相方の大柄な男性も残念なものを見る視線を向けてくる。
 俺の味方は店内ここには居ないのか!?


「はい!こちらフレースヴェ、いえ、鳥の唐揚げで……どうしました?」
 の唐揚げを持って来た店員が微妙な空気に首を傾げる。
 因みに料理名を言い直したのは、悪友達が体をビクリと震わせたからだ。
 当の本鳥であるプーリは、全然気にしていないようだがな。

「そういえば店員さんは、『魔動物街』には行った事あるら?」
 空気を変えようとしたのか、はれひめが店員へと話し掛けた。
「ありますよ。テイマーですからね、当然です!」
 まさかの、ここでテイマーとの遭遇とは。思わず紫蘭へと視線を向けると、相手もこちらを見ていた。

「な、何で当然なの?」
 紫蘭が席を立ち店員へと質問する。
「え?だって、従魔を買わないと、テイマーは成り立ちませんからね」
 えぇええ?
 あの「我が意に従え」の呪文?もどうかと思っていたが、まさか従魔を買うとは……。いや、ペットを店で買うのだから、全否定は出来ないか。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

いや、一応苦労してますけども。

GURA
ファンタジー
「ここどこ?」 仕事から帰って最近ハマってるオンラインゲームにログイン。 気がつくと見知らぬ草原にポツリ。 レベル上げとモンスター狩りが好きでレベル限界まで到達した、孤高のソロプレイヤー(とか言ってるただの人見知りぼっち)。 オンラインゲームが好きな25歳独身女がゲームの中に転生!? しかも男キャラって...。 何の説明もなしにゲームの中の世界に入り込んでしまうとどういう行動をとるのか? なんやかんやチートっぽいけど一応苦労してるんです。 お気に入りや感想など頂けると活力になりますので、よろしくお願いします。 ※あまり気にならないように製作しているつもりですが、TSなので苦手な方は注意して下さい。 ※誤字・脱字等見つければその都度修正しています。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

召喚されて異世界行ったら、全てが終わった後でした

仲村 嘉高
ファンタジー
ある日、足下に見た事もない文字で書かれた魔法陣が浮かび上がり、異世界へ召喚された。 しかし発動から召喚までタイムラグがあったようで、召喚先では全てが終わった後だった。 倒すべき魔王は既におらず、そもそも召喚を行った国自体が滅んでいた。 「とりあえずの衣食住は保証をお願いします」 今の国王が良い人で、何の責任も無いのに自立支援は約束してくれた。 ん〜。向こうの世界に大して未練は無いし、こっちでスローライフで良いかな。 R15は、戦闘等の為の保険です。 ※なろうでも公開中

処理中です...