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行きたい所へ行く!それが冒険。多分
第488話:何かを踏んだ
しおりを挟む目の前に積まれたのは、金の山。
子供の頃に流行った下品な替え歌が、勝手に頭の中で流れたのは現実逃避のせいか?
なぜか目の前に現物を積まれたのだ。
「商業ギルドに売っていただければ、これからもこれくらいのお金をご用意させていただきます!」
ギルド員と言うより、怪しい商人と言った感じの男がにこやかに話を始める。
どうやら冒険者ギルドではなく、商業ギルドにこれからも品物を売れって事らしい。
「食材ならそうしよう」
少し態度に引っ掛かりを感じたが、他の街ならともかく『美暴食街』ならばギルドが抱え込むとか貴族に優先的に流すとか無いだろう。
美味しく調理された珍しい食材は、俺も食べたいからな。
それに今居る職員はともかく、鑑定した人や食材を運んで行った職員達は感じが良かった。
貴族……嫌な事を思い出してしまった。
そうだった。
住人に身分制度が発生したのだった。
思い出したら、何となく身分制度関連のイベントを踏む気がしてくるから不思議。
高級食材を調達する為の契約を貴族に強要されるとか、異世界漫画の定番だよな。
金の山を前に考え込んでいたからか、ギルド側に誤解を与えたようだ。
今、ここで1番偉いであろう職員が、急に態度を変えた。
ソファにふんぞり返り、足まで組む。
「何ですか?うちの専属になりたいとか?」
全然違います。
俺の冷めた目に気付かないのか、職員は話を続ける。一緒に居る職員も止める気配が無い。
「これだけの大金を見たら、そりゃあねえ?解るよ、うん、解る」
いや、俺は解らないけどな。
色々面倒になった俺は、冒険者ギルドカードを差し出した。
「金はここに入金してくれ」
多少の現金は持ち歩いた方が良いとこの前身を持って知ったのだが、今は早くここから去りたい。
隣に居るジルドとレイが暴れ出さないか心配だしな。
こういう時に役立つオーべは、今日に限って噴水広場でタダムネと遊んでいる。
いや、テラとムンドとピリリも一緒だ。
他の従魔は全て影の中だ。
商業ギルドだからと気を使ったのが、仇になったな。
「取引の明細書もきちんと発行してくれ。数と金額にズレが有るとは思えないが、何せ大量だからな」
俺の言葉に、目の前の男が舌打ちをする。
威丈高な態度を隠そうともしない。
フラグ!フラグの予感がするな。
「気に食わないならば、取引を中止しよう。食材を返してくれ」
なぜか受け取られなかった冒険者ギルドのカードを、インベントリへと戻す。
まだ金は受け取っていないし、明細書も貰っていない。
俺のインベントリは時間停止な上に、容量無限大だからな。
別に死蔵品になっても、問題は無い。
席を立とうとした瞬間、応接室の扉が開かれた。
開かれたというか、壊れるのでは?という勢いで蹴破られた?
「馬鹿もんがー!!」
小山のような大男がソファにふんぞり返っていた男の首根っこを掴んで持ち上げた。
服ではなく、首を掴んでいる。
凄いな……。
大男はソファに座って顔面蒼白な職員を睨む。
「お前が付いていてこのザマか。言い訳は聞かん。この馬鹿息子と共に、ギルドから出て行け」
大男はそう言うと、馬鹿息子を廊下へ放り投げた。
……息子だよな?
廊下からドゴンと凄い音が聞こえた。
かなり広い廊下だったはずだが、おそらく馬鹿息子は向かいの壁に激突した。
「ヒイィィィ」
もう一人のギルド員も、転がるように部屋から出て行った。
…………これ、絶対に何か始まるよな?
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