上 下
487 / 506
行きたい所へ行く!それが冒険。多分

第487話:『美暴食街』

しおりを挟む



 何事も無く、目的の『美暴食街』に着いた。
 他のメンバーがグッタリしているけど、気にしたら負けだ。
 通行証代わりにギルドカードを出して……衛兵の視線がさ迷っている。
「その……黒い魚?は……従魔、ですかね?」
 俺の斜め上をフヨフヨと浮いているバハムートは、まだ従魔契約が済んでいない。
 格好良い名前が決まるまで、保留なのだ。

「あぁ、従魔になる事は決めているらしいが、名前が決まらないらしい」
「は?」
 変な顔をされてしまった。
「従魔じゃないのに意思の疎通が出来てるのって変だからね~」
 オーべからツッコミが入った。
「従魔でも、一般的には変なんだからね!」
 リコンスから更にツッコミが入った。

「バハムートは外で待つしかないでしょうね」
 レイが言い切る。
 そうだけど、その通りだけど、モフモフじゃないからか冷たいな。
「名前は後からでも付けられるだろう?とりあえず従魔契約だけ結んだらどうだ?」
 ジルドがバハムートに話し掛ける。


 確かにヨミとかは、後から名前付けたよな。
 俺はどっちでも良いので、バハムートの希望に沿うようにしよう。
拙者せっしゃの名前は、忠宗タダムネと申す>
 いきなりバハムートが名乗りを上げた。
 そして俺とバハムートが光る。

 周りから「おぉ~!」と歓声と拍手が起こった。
 衛兵も他に並んでいた見ず知らずの人も、つられて拍手している。
 従魔契約成立テイムしたようです。はい。
 いや、その前にタダムネって誰?
 提案していた武将の名前に、タダムネなど無かったよな?

 バハムートを見ていた視線を、ジルドへと向ける。
 グルンと音が聞こえそうな勢いで目を逸らされた。
 ヲイ!



「伊達政宗の息子の名前だ」
 ジルドがタダムネの元ネタを教えてくれる。
 おい、こっちを向け。
 ジルドの視線は斜め下。
 今居るのは、商業ギルド内の待合室。
 冒険者ギルドにタダムネの登録に来たら、横の建物が商業ギルドだった。
 大量の食材を売るのならば、ギルドに相談するのが良いのでは?と来てみたのだ。

「……おい」
「いや、元ネタがすぐに判る政宗とかより、ちょっと捻りが有った方が良いだろう?」
 ウッ……確かに。
 だがここで騙されてはいけない。
 伊達政宗の他にも候補はあったのだ。

「それにして……」
「【仮名】のヴィン様~」
 ジルドを問い詰めようと思ったら、受付から呼ばれてしまった。
 ホッとした顔のジルドを一睨みしてから、受付へ向かう。

 お願いしたのはこちらだし、あまり文句を言うのも違う気がする。
 だが勝手に候補を増やしたのに、何もお咎め無しは駄目だよな。
 今日1日無視する程度にしよう。



「豚肉と牛肉と……フレースヴェルグ肉?クラーケン?」
 大量に売りたい食材が有ると告げると、応接室に案内された。
 机の上にトレーを置かれたので、とりあえず全種1個ずつ出してみた。
 それだけで机の上がいっぱいの罠。

「ちょ、よく見てくださいよ!牛肉がポーンブル歩兵雄牛だけじゃなくて、リッチブル成金雄牛もですよ!」
 そうですが何か?
「豚ー!豚肉ーー!金豚!!」
「フ、フレース、フレースヴェルグ」
「クラーケンは蛸の方ですか」

 いや、職員達が怖いです。
 興奮して、涎を垂らしそうな顔で叫ぶ人や、肉に頬擦りしそうな勢いの人。肉を掲げ持っている怪しい新興宗教のような行動をする人。
 鑑定して叫んでいる職員が普通に見えてくる。

「それで、買い取りして貰えるならば、在庫を出し……」
「買いますとも!」
 食い気味に答えられた。
 しかも答えたのは、ここにいるおそらく1番偉い人ではなく、食材を吟味している職員達デシタ……。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ の内容を一部変更し修正加筆したものになります。  宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。  そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。  ※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※  ※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。  ※男主人公バージョンはカクヨムにあります

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り

星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!? ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 注意事項 ※主人公リアルチート 暴力・流血表現 VRMMO 一応ファンタジー もふもふにご注意ください。

妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます

兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。

いや、一応苦労してますけども。

GURA
ファンタジー
「ここどこ?」 仕事から帰って最近ハマってるオンラインゲームにログイン。 気がつくと見知らぬ草原にポツリ。 レベル上げとモンスター狩りが好きでレベル限界まで到達した、孤高のソロプレイヤー(とか言ってるただの人見知りぼっち)。 オンラインゲームが好きな25歳独身女がゲームの中に転生!? しかも男キャラって...。 何の説明もなしにゲームの中の世界に入り込んでしまうとどういう行動をとるのか? なんやかんやチートっぽいけど一応苦労してるんです。 お気に入りや感想など頂けると活力になりますので、よろしくお願いします。 ※あまり気にならないように製作しているつもりですが、TSなので苦手な方は注意して下さい。 ※誤字・脱字等見つければその都度修正しています。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

処理中です...