417 / 506
フラグとは、回収する為にあるのだ……と知った
第417話:やっちまったなぁ!
しおりを挟む【ペットカフェ】で寛いでいたら、オーナーの一人であるテイマーの紫蘭に声を掛けられた。
俺達の食事がひと段落するまで待っていてくれる、とても礼儀正しい人だ。
ハイエルフの紫蘭は、男なのにとても美人で見つめられるとドキドキする。
話さなければ、だけどな。
女子のテンションの高さなので、話し始めると残念イケメンになるのだ。
「火蜥蜴は生きてるわよね?まだ孵化しないんだけど、大丈夫よね?」
紫蘭の視線がチラリと溶岩槽の方へ向く。
卵を鑑定すれば、生きているか死んでいるか判る……気がする。
いや、判らないか。
俺の場合は、常に卵を抱えて行動していたからなぁ。
溶岩の中にあるから、取り出して触る事も出来ないよな。
これは俺よりオーベでは?
「いやいやいや。そんな目で見られても解らないからね~。うちのピリリ、名付けから孵化まで異様に短かったからね~。どこかの誰かのお陰で」
あぁうちのリルの所為ですね。
火蜥蜴が『熱い』って言いながら生まれてきたからな。
しょうがないからここは従魔達に活躍してもらいましょう!
「とりあえず、溶岩から卵を取り出してもらおうか」
熱い卵を取り出すなら、同じ火蜥蜴のピリリか?
初っ端うちの従魔じゃないという。
いや、テラかムンドでも大丈夫なのか?
<了解したよ>
返事をして溶岩槽へ向かったのは、リルだった。
そうか。リルも溶岩程度の熱など全然平気だよな。
ついついモフモフだから、燃えそうな気がしてしまう。
自分の炎は大丈夫だけど~的な感じだ。
溶岩槽の中に手を入れたリルは、そのままスッパーンと卵を弾き出した。
はい!?
川で鮭を取る熊のような見事さだ。
だが、ここは【ペットカフェ】の店内で、弾き出されたのは灼熱の卵だ。
「リル!?」
何やってる!とか、危ないだろ!とか、馬鹿なの!?とか、言いたい事は沢山あるのだが、名前を呼ぶ事しか出来なかった。
放物線を描く火蜥蜴の卵を皆が呆然と見送っていた。
床が溶けるか、卵が割れるか。
床に落ちるならまだ良いけど、誰かに当たったら……街中だから、死なないか?
<オーライ、オーラ~イ>
フライを取る野球少年か、駐車場の誘導員のような声。
ムンドが飛んで来た卵を口でキャッチした。
思わず俺達だけでなく、店内のあちこちから拍手が起こる。
パキッ
<あっ>
ムンドの口の中で、卵が割れた音がした。
ムンドも感触があったのだろう。『あっ』って声出したし。
ヤバいって顔してるしな!!
もう、何してるの!?神話兄弟!
紫蘭は顔から表情消えちゃってますけど!?
<え?ちょっと!生まれた瞬間にヨルムンガンドの口の中ってどんなプレイ!?>
ムンドの口の中から、テンション高めの声がしてきて、ちょっと……いや、大分ホッとした。
そして口の中に居るのに、ヨルムンガンドって判るのか。
何にしろ、生きていて良かったです。はい。
211
お気に入りに追加
1,379
あなたにおすすめの小説
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。
Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。
政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。
しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。
「承知致しました」
夫は二つ返事で承諾した。
私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…!
貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。
私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――…
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる