ほんわりゲームしてます I

可愛いを独り占めするのは、心苦しく思います……ので

第383話：見学に行くぞ！

　


　お店の候補地を見学に行く事になった。
　先に上物うわものが出来ていて、それが入る広さの土地を探す事にしたそうだ。
　店舗自体は小さくして中の容量を変えるという方法もあるらしいのだが、ココア達オーナーの希望で見た目と容量は同じにして、店内が見える仕様にしたいらしい。
「可愛いものは見せびらかしたいでしょ？」
　と言われたが、俺は自分だけで堪能するタイプだ。
　男と女の違いかとも思ったが、咲樹は見せびらかすタイプだから、本人の資質かな。

　例の不動産屋の従業員が一緒に回ってくれるそうだ。この前の人ではないけどな。
　実際の上物を、土地に仮に置・い・て・お試ししてくれるらしい。
　確かに、土地を買った後で不満が見つかっても困るよね。


　１軒目は、土地はそれなりに広いが他に難があるらしい。
「広さは良いけど、隣が鍛冶屋なのがネックなの」
　鍛冶屋が隣なのは落ち着かない……かな？
　建物の中に入ってしまえば大丈夫だが、扉が開閉する度に鍛冶屋の音がするらしい。
　兎が居なければ問題無いが……本末転倒。

　２軒目は、建物と土地のサイズがほぼ同じらしい。
　現実リアルなら建坪率でアウトだな。
「商店街の中だし、集客率も良さそうだけど、隣と近過ぎてねぇ」
　確かに、人一人も通れない隙間しかない。
　店の中でしか活動しないとしても、これは確かに何か落ち着かないかな。

　３軒目は、土地も広く立地条件も良さそうだった。
　何が駄目なのか？と思っていたら、すぐに理由が判明した。
　隣の店から冒険者が飛び出して来て、出て来たばかりの店の中へ向かって怒鳴りつける。

「この詐欺師！運営に通報するからな！」
「やってみれば？私は頼まれた仕事はちゃんとやったもんね」
「性能が落ちるなんて言わなかっただろ！？」
「ふん。上がるとも言ってないけどね！」

　うわぁ、グレーゾーン？限りなく黒な灰色だ。
　思わず見入っていたら、ココアがコソッと耳打ちしてくる。
「果林って異界人プレイヤーで、要注意人物なの。前回見たのはもっと酷くて、先払いさせておいて仕事をしなくて、キャンセルしたらキャンセル料払わなければ預かった品物を返さないって……」
　それは詐欺黒だろ？


　隣の店は、装飾屋で【late-night】と言うらしい。
　既存の製品に装飾を施す事により、新たな属性や能力を付加する職業だ。
　一流の装飾屋は前線でも重宝されるほど凄いらしいが、どうやらこの店はそうでは無いらしい。
　製品の価値を下げるって、装飾する意味ないよな。

　そんな詐欺師まがいの事をやっていて、それでも店が潰れないのはここが『しきしま』だかららしい。
　詐欺にあった冒険者は、次の土地を目指す者が殆どだから、長く『しきしま』に留まらない。
『いつきしま』の冒険者が『しきしま』の装飾屋に戻って来てまで依頼する事はないから、悪評は『いつきしま』以降にしか広がらない。
　そして完全な詐欺では無いので、運営に通報してもアカウント削除までいかないのだろう。
　うぅん。こんな店の横は、確かに嫌だな。