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第350話:魔力供給します!俺じゃないケド

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「では、いきま~す」
 両手でプリンを持って顔の前に持ち上げたオーベが宣言する。
 あれ?って顔で首を傾げたオーベが、そのままフラリと後ろへ倒れた。
「最初は遠慮してたくせに~」
 どうやら魔力を吸っても怒られないと判った瞬間に、一気に吸われたようだ。

 オーベの手から、ジルドが卵を取り上げる。
「加減、間違うなよ」
 一度プリンを脅してから、目を閉じ魔力を注ぎ始める。
 カッと目を見開いたと思ったら「ユズコ!」と名前を呼ぶのと同時に、卵を放り投げていた。

「急にくるよね~」
 MP回復ポーションを自分で飲みながら、ジルドにも差し出しているオーベ。
「テラの時よりも下手だな」
 受け取ったポーションの封を開けながらジルドが答える。
彼奴あやつは魔力を吸い慣れておらんからの>
 ガルムが会話に参加している。
『アヤツ』とは、プリンの事かな?

 どうやら俺がログオフしている間、プリンはガルムからもほとんど魔力を吸わなかったらしい。
 ガルムの言う『殆ど』だから、俺なら魔力枯渇してそうなレベルだろうけど。
 テラを10とするなら、プリンは3ほどだったらしい。
 テラ、孵化率奇跡のドラゴン種ドラゴネットだったな。

 あ、ユズコが無言で後ろへ倒れた。
 バタンって感じで倒れたけど、頭大丈夫か?
 いや、ぶつけてないかって意味だからな。
 倒れたユズコは、卵を胸の所でしっかりと抱えている。
 落とさないようにしてくれたようだ。
 さすがユズコだな。

 そんなユズコから、凄く嫌な顔をしながら卵を持ち上げたのは咲樹だ。
「私は皆ほど優しくないの。やり過ぎたら地面に叩きつけるからな」
 後半はドスが効いている。高い女性の声のはずなのに、現実リアルの咲樹が脳裏に浮かんだ。
 あまりうちの子をいじめないでください。

 やはり咲樹の魔力は桁違いのようで、一人で10分近く魔力を流していた。
 倒れる事もなく、静かに横に座るレイに卵を渡す。
「やっとコツを掴んだのかしら?」
 ウフフと笑ってMP回復ポーションの封を開けているが、脅したからじゃないか?

「何してんの?面白い事?オレも入れてやってよ~」
 レイが魔力を流し始める前に、ミロが寄って来た。
「召喚獣はび出している間も魔力消費しますか?」
 ミロに卵を渡しながらレイが聞く。
「いや、1回喚んじゃったら魔力は要らないけど?何で?」
「それならば、多少魔力吸われても大丈夫ですね」
 レイが自分の横にミロを座らせた。

「それはフレースヴェルグの卵です。孵化させるのに魔力を供給しているので、協力してくださいね」
 ニッコリと笑って、ミロの肩を叩くレイ。
「あ、はい」
 思わずといった感じで返事をするミロ。
「はい、魔力流してください」
「え?」
「魔力です」
「あ、はい?」
 首を傾げながらも素直に魔力を流したミロは、その後すぐに卵を落とした。

 うええぇぇぇぇええ!?
 ちょ、ミロ!?本人も硬直しているし、色々大丈夫か?
 あ、卵は無事だった。
 予想していたのか、レイが下にクッションを置いていたよ。

 あれ?鳥兜と管狐と御狐様が揃って側に寄って来たぞ。
 あぁ、ミロを心配して……?通り過ぎたな。
 プリンをペタペタ触って、満足気に戻って行った。
 え?何だったのだろう。
「オレの心配はしないのかよ!相変わらず好奇心旺盛だな!」
 復活したミロが、去って行った召喚獣達をちょっと哀しい目で見ていた。



________________
あ、あれ?孵化しなかった(・_・;
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