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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う
第232話:遊歩道から観光地へ
しおりを挟むガルムの背中に乗り、鼻歌交じりで散歩をしている。
本来はもっと緊張感を持っていなければいけない地域なのだが、横を素のサイズに戻ったリルが歩いているので、心配のしようがない。小狼姿でも、充分に戦えるらしいから、ガルムより大きいこの姿なら、無敵だろう。
ヨミも俺の胸元に入って、一緒になって適当に歌っている。
警戒心がない証拠だ。
リルがいない頃は、ちゃんと周りを警戒しながら俺を護衛していたからな。
<お外、楽しいね~>
リルの頭の上にいるテラは、ドーロと一緒に仲良く座っている。
緩すぎないか?と思ったが、そもそもテラ自体がドラゴネットで、この辺の敵に負けるわけが無かった。
しかしドーロの危機管理能力がおかしくならないか不安だ。
お前は最弱生物だからな?
俺もだけど!
たどり着いたのは、前にガルムが遊歩道を作ったあの森。
途中までしか行かなかったから、最後まで行ってみようという事になったのだ。
さぁ行くぞ!と森の入口に立った。
あれ?観光地化してる?
冒険者だけでなく、一般人が普通に歩いていた。
「あの、すみません。なぜこれほど人が?」
一般人だが体格の良い男性に声を掛ける。
若いカップルや親子連れだと、ガルムとリルに怯えてしまうからだ。
まぁ、このおじさんも遠巻きに見ていたのを、俺の方から近付いたのだが。
「この道の先にある湖がとても綺麗でな。カップルはデートに、親子連れはハイキングに行くんだよ」
おじさんは答えながら、後ろに控えるガルムとリルをチラチラと見て気にしている。
一応、2メートル位離れているのだが……
「失礼だが貴方は?」
とてもデートとは思えないし、見た限り連れらしき妻子もいない。
「ああ、俺はトレントの枝を切りにな。伸び過ぎると通行人を傷付けるから、定期的に切るんだよ。切った枝は木工加工に使えるし、薪としても普通の木の何倍も長持ちするからな。職人ギルドで買い取って貰えるんだ」
なるほど。良い小遣い稼ぎなわけだ。
「前は危険な森に入らなければ手に入らなかったが、今はこの道からちょっと入るだけで良いから安全だ。買取価格単価は下がったが、安全で前より量が手に入るからな。この道を作ってくれたヤツには感謝しかないよ!」
がははと豪快に笑って、おじさんは森へ入って行った。
まだ見える範囲でトレントの枝を伐採している。
よく見ると道の脇のトレントも、軒並み成人男性の背の高さ程度までは枝が無かった。
「ひ、人の役に立ったなら、良いのか?」
予想外の出来事に、脳みそがついていかん。
とりあえず、ガルムに抱きついておく。
世の中何が起こるかわからないものだな。
冒険者にはおいしくない森だったのに、一般人にはおいしい森になったよ。
それにしても森の奥には綺麗な湖が在ったのか。
隠されていたって事は、実は妖精の湖とか、精霊の湖とか、聖獣の伝説のある湖とかだったりして?
<特に何の変哲もない普通の湖のようだね。どうする?人が多いようだが、行ってみるかい?>
あ、はい、そうですか。
「人が多いと落ち着かないから、違う所に行ってみるか」
予定変更で、まだ行った事のない地域へと散歩です。
――――――――――――――――
226~230閑話を5話追加しました。
今更なクリスマス話と、初っ端の誕生日の裏話です。
公開するタイミングを逃して、こちらでは未公開だったのですが、話数がズレてしまうので公開しました。
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