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いろんな意味での初イベントに参加しますよ!

203:好きこそ物の……?

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 ジルドの手の上に落ちたカラフル兎(黄)を鑑定すると、所有権はジルドだけだった。
 兎の湧いたマグカップを持っているだけでは、捕獲とはみなされないようだな。
「次に生まれたら、俺にくれ!」
 ユズコが手を上げる。
「良いよ~」
「その代わり、また赤いのが生まれたらオーベにやろう!」
 サムズアップにキラーンと歯が光りそうな爽やか笑顔のユズコ。

「ああ、なるほど。では、私も(緑)が生まれたら、オーベに譲ろう」
 ジルドもオーベに提案する。
 しかし当のオーベは平坦な顔をしている。
 所謂いわゆる『スン』とした顔だ。
蜥蜴トカゲとか蛇なら大喜びなんだけどね~」
 忘れてたけど、オーベは爬虫類好きだったな。
 だからテラを1番構うのか。


 さてと。複数所有権のある兎は、基本色の子達は持っている数が1番少ない順にポチッていく。
 鑑定で出たウィンドウで自分の名前をポチると、所有権が確定する仕組みだ。
 要は、権利放棄しますのでどうぞ的なポチリなのだろう。
 通常の鑑定画面には触れられないので、イベント仕様のようだな。

 紫と橙は、幸い各三匹いたので所有権のある三人で仲良く分け合った。
 紫がレイとユズコと俺、橙がオーベとユズコと俺である。
 橙の一匹の所有権は、俺とオーベだけだったので、うちの(赤)とオーベの(黄)の子なのだろう。

「僕もヴィンとの子が欲しいので、この子だけは置いていきます」
 言い方!!
 レイが馬鹿な事を言って、(青)を一匹置いていった。
「じゃあ私も!」
 咲樹が(青)と(黄)を置いていく。
「じゃあ俺も!」
 ユズコまで(赤)を一匹俺の小屋へ戻す。
 お前達のカラフル兎だけで、紫も橙もできるけど!?

「緑は他と混じらないのか?」
 ジルドがポツリと呟く。
「いや、絶対に何かあると思いますよ。無駄な色をここの運営が用意するとは思えませんから」
「俺もそう思う~。そしてユズコ、手を出して~」
 オーベのマグカップの中に、また(黄)が湧いたようだ。
「ヴィンの部屋だと、従魔達が居るからか湧くのが早いね~」
 ユズコの手の中へ、コロンコロンと(黄)二匹が転がり出た。


「ヴィン、飼育係ですね」
 兎小屋を見ていた斗苫斗的が、笑いながらそんな事を言う。
「ここまで整った環境は、他の人には無理だもんね」
「特にこの特殊な水じゃな!」
 綺羅と爺さんも、斗苫斗的に同意を示すような事を言う。

「そもそも、こんなに大量のカラフル兎が居るだけで異常ですけどね」
「基本の5色以外に金とか銀とかいるなんて、誰も知らないと思う」
「所有権って何ぞや?と思っとったが、増殖するんじゃったのか」
「運営も焦っただろうね。1ヶ所にこんなにカラフル兎が飼育されるなんて、想定外だと思う」
「告知メッセージから焦りが感じられましたもんね」

 うるさいぞ、そこの三人。
「飼育係……」
 レイも、そこに反応するな。
「兎の持ち主と、世話した人に所有権の権利が発生するのか」
 あれ?ジルドまで何か言い出した。
「多分、パーティーやクラン単位でひとところに集めて飼育する予想だったんだろうね~」
「捕獲できなくても、一生懸命に世話すれば貰える的な感じかしら?」
「ジャイアニズム防止の『所有権は自分以外を選択』だな!」
 奥が深いな、イベントって。


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