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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
125:色々予想外
しおりを挟む「と、止まれ!!」
誰かが叫ぶ声が遠くから聞こえる。
何か凄い焦ってるけど、どこかの冒険者がガルムとリルを魔獣だと思ったのかな?
鑑定すれば『従魔』って出る……出るよな?あれ?どうだったか。
「止まれって言ってるだろう!」
ガルムに抱き着いて、モフモフを堪能している俺の邪魔をしないでください。
「止まってください!お願いします!」
そのあまりにも切羽詰まった声に、体を起こした。
「あれ?ガルム、リル、ストップ!」
俺の命令に、二匹がピタリと止まる。
周りを見回すと、俺の予想とは全然違う景色が広がっていた。
街道へ続く森の中の獣道を進んでいたはずだから、街道へと出て冒険者を驚かせたのかと思っていた。
だが、どう見てもここは街の前だ。
声を上げていたのは、衛兵達。
まだ街まで多少距離があるから、デカイ魔獣二匹を見付けて駆けて来たのだろう。人数が多いのは、見張り番が見付けてすぐに集められたのだろうか。
戦闘意欲が無いと示す為か、槍を持ってはいるが、こちらには向けずに両手を大きく上に上げている。
いや、槍を地面に置いちゃってる人もいるけど、衛兵として駄目じゃないか?
「何で街の前?早過ぎないか?」
改めて周りをキョロキョロ見回す。
街に入る審査待ちの人の列が……列じゃなくなって門の前に固まってるな。
ガルムだけの時は、怯えながらも列だった。
異界人はガルムの姿を知っていたし、レイや咲樹などの有名人が一緒に居たのも大きいだろう。
ん?銀狼はともかく、咲樹が妙に大人しいな。
「咲樹?」
振り返ると、心ここに在らずで茫然自失な咲樹がいた。
「咲樹?おい、なぜもう街にいる?」
無言。無反応。何か変な術にでも掛かってるのか?
「咲樹!」
強めに名前を呼ぶと、わかりやすくハッと気付く。
「現実逃避してたわ」
咲樹がパチンと指を鳴らすと、リルの上にいるミロとココアも一斉に何か話しだした。
現実逃避は比喩ではなく、本当に何かの術だったようだ。
衛兵達には悪いが、ちょっと状況整理をさせて貰う事にする。
リルから跳び降りたレイは、すぐに獣化を解いた。
ミロとココアもヒラリと降りる。さすが冒険者。
レイが近付くと、ガルムが伏せをするように体高を低くする。タイミングを合わせたように、レイが両腕を伸ばした。
周りは、レイが咲樹へと手を伸ばしているのだと期待したのだろう。
衛兵達がキラキラした視線を向けている。勿論、審査待ちの人々もだ。まるで舞台の王子様とお姫様を見ている観客のような視線だな。
だが残念。レイが降ろそうとしているのは俺だ。
いつもなら不本意ながらも降ろして貰うのだが、今日は服の中でヨミが寝てしまっている。下手に持ち上げられると、下から落ちてしまう恐れがあるのだ。
腹辺りで寝ているヨミを、服の上からそっと押さえる。うん、完全に寝てるな。
レイには悪いがスベリ台のように降りようと足をレイ側へ揃えると、後ろからガシリと掴まれて、持ち上げられた。
「はい、パス」
咲樹が俺の腋の下へ手を差し入れ、持ち上げている。
「ありがとうございます」
レイは俺の肋骨辺りを上手く掴んで受け取った。
皆、ガッカリするような、残念なものを見るような視線をしてるけど、俺のせいじゃないからな!!
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