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逃げたい……けど、誰も同意してくれそうもないのはなぜだろう
123:色々と理解不能
しおりを挟む<早く帰ろうか>
街道へ向けて歩いていたら、リルがいきなりそんな事を言い出した。
「いやいやいや、皆、リルに会う前にも戦闘してるからな!?」
ガルムの上に呑気に乗っているだけの俺と違い、皆は自力で歩いている。
しかも普通ならここに居るはずのないランクの魔物と戦った後だ。
その上、最後に出会ったフェンリルのせいで、精神的にも体力的にもかなり疲弊しているのに、何を言っちゃってるんだ?このフェンリルは。
「むしろ、そろそろ休憩しようかってタイミングだからな!?」
なぜか小型化のままガルムの背中にいるリル。楽してる上に我儘を言うとは、伝説の魔獣の名が泣くぞ。
<全く、しょうがないね。我にも乗せてあげようか。それなら文句はあるまい?>
えぇ~、文句しか出ないと思いますが。
「ガルム、どうする?」
確実に、ガルムももう一人は乗せないといけなくなるからな。
<儂は構わん。リルが三人乗せるなら、だがの>
ガルムが良いなら、俺も別に……
「ちょっと待った~!!フェンリルに乗るって、それほぼ拷問じゃん!?」
何で?フェンリルに触ったら燃えるとか凍るとかあるのか?でももう従魔だから、大丈夫だぞ。
「ヴィンの感覚がおかしい!」
ミロの訴えの意味が解らず首を傾げると、またクッ!の表情をされた。
「街までガルムとフェンリルが並んで走ってたら、注目される事間違いないわよ」
ココアは何を当たり前の事言ってるんだ?
「駄目だわ。もうそれが日常なのね、この子」
何かディスられてる。しかも子じゃねえし、俺。
「注目されるのが拷問なのか?だが、街に入る時には間違いなく注目されるぞ」
街の中でも、大名行列並みに道が開くしな。
「ヴィンは良いよ。【sechs(ゼクス)】のクラメンだし、強い護衛がいるから!オレとココアは【cinq(サンク)】と一緒にフェンリルに乗ってたら、後で何を言われるか怖すぎる~!」
注目される事だけが問題ではないのか。
あぁ、そういえば人気者なんだったな、悪友達。特に咲樹がおかしいんだっけ?
隣を歩いている咲樹と目が合う。
俺はガルムの上にいるから、咲樹が俺を見上げた形だ。
「言っておくけど、私だけじゃなくてレイのファンもかなりアレだからね」
「咲樹は意図的に祭り上げられているでしょう?僕は何も干渉してませんから」
どっちもどっちだ。と言うか、正直どっちでも良いかな。
「ふ~ん」
返事を返したら、二人がシュンとした。なぜだ。
話がまとまらず、黙々と歩く四人と一匹。
リルはまだ小さいままで、ガルムに乗ってる。お前も歩けよ!とは、言えない。俺もガルムの上だからな。
因みに、ヨミは服の中で寝てるし、テラはフードの中で寝てる。
まだ子供な二匹である。ちょっとほっこり。
「レイが獣化して、ミロとココアと一緒にリルに乗るのはどうだ?」
ふと、思いついて言ってみる。
人型のレイと乗ると嫉妬されるなら、銀狼なら良いのでは?
それに、俺がリルに乗る銀狼が見たい。
「それ、ヴィンが見たいだけですよね?」
あ、バレた。
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